日常も特別な日も。一人ひとりの日々を彩る、街のお花屋さんの仕事
おしごと発見!
花屋
花や観葉植物などの植物を販売(はんばい)するのが花屋の仕事です。お店での接客、花の仕入れや手入れ、ブーケづくり、配送業務なども行います。最近ではインターネット販売など、花屋のサービスもさまざま。毎日の生活から特別な記念日まで、ひとびとの暮らしを色あざやかに彩(いろど)る仕事です。[取材:青山フラワーマーケット南青山本店 店長 二宮俊さん]
お客様が求める花をイメージして仕入れる
色とりどりのお花が並ぶ、街のお花屋さん。お客様の要望に合わせて花を選び、販売する専門家です。花屋には、接客・販売以外にもたくさんの仕事があります。入荷した花をきれいに整える水あげ、売り場に花をならべる作業 、ブーケづくりなど。そのなかでも、店長を務める二宮さんの大切な仕事が、花の仕入れです。「朝、出勤しながらケータイで天気予報を見て、今週は寒くなるなと思ったら、冬を感じる凛(りん)としたユーカリだったり、あえて春のあたたかさを感じるようなやさしい雰囲気(ふんいき)のスイートピーだったり、どんなお花をそろえるのがよいか考えます」。
仕入れは、個人で経営する花屋では、市場へ行って直接仕入れて自分で運んでくるのが一般的(いっぱんてき)です。全国に110以上のお店がある青山フラワーマーケットでは、基本的にそれぞれの店舗(てんぽ)が市場の担当者と話をして決めたり、インターネットで発注を行い、物流業者が各店舗(かくてんぽ)へ運んできます。
二宮さんが店長を務める南青山本店は、おしゃれなブランドショップやカフェがならぶ、東京・表参道にあるお店。「表参道は花束のオーダーが多いですね。プレゼントとしてお花を買う方が多くいらっしゃいます。反対に、住宅が多いエリアではお部屋にかざれる小さなお花が人気です」。気候や街の雰囲気に合わせて、お客様が求める花をイメージして、仕入れることが大切だと教えてくれました。
花は、小さな生き物
インターネットの仕入れでは、実物の花を見ることができないので、市場や生産者からの情報収集、そして知識が大切だと二宮さんは言います。「花は生き物です。同じ産地の同じ種類の花を買っても、いつも同じ美しさが約束されているわけではありません。花によっては、夏はすずしい東北から仕入れたり、寒い時期はあたたかい南の方から仕入れたり、気候とタイミングに合わせて産地を使い分けて、より良い品質のものを仕入れる工夫が必要です」。
そう話す二宮さんも、昔は仕入れで失敗したこともあったとふりかえります。「たとえば、バラは12月25日のクリスマスだと高く売れますが、26日になるともう半額になってしまいます。なので、生産者さんもがんばって25日に間に合うように、ビニールハウスの温度を上げて、成長を早めます。一般的にバラは茎(くき)が長いとお花も大きいので、インターネットで見て『茎が70センチもあって長いから、お花も大きいだろう』と思って発注したところ、届いたバラの花は思っていたより小さかった。早く成長させたので、茎は長くてもお花は小さかったんですね」。
それ以来、花市場の担当者や生産者と花の状況について直接やりとりするようになったとのこと。「お花は季節によって価格も変わります。店長としてお店の経営を考える上でも、いろいろな視点で考えて仕入れることが大切です」。仕入れひとつをとっても、奥が深い仕事であることが伝わってきます。二宮さんが花屋の仕事でいちばん好きな瞬間(しゅんかん)は、仕入れたお花と顔を会わせたときだそうです。「届いた箱を開けたとき、パッと花の色と香りが広がる。イメージ以上のものが届いたときは、言葉にできないうれしさがあります。お客様よりも一足早く花を楽しめる、花屋だけの特権ですね」。
目の前のお客様に100%で向き合う
仕入れのほかにも、店頭でお客様にお花をおすすめしたり、ブーケをつくったりすることもあります。ブーケづくりについて聞くと、東日本大震災(ひがしにほんだいしんさい)のお供(そな)えの花束をつくったときのことを話してくれました。「お客様から『感謝』や『団結』という花言葉をもつお花を入れて明るくつくりたい、というご依頼(いらい)をいただきました。お供えとしてもふさわしいことも考えながら、「ガーベラ(感謝・希望)」「イキシア(団結)」などを用意して、お客さまと相談しながら、白をベースにした明るくやさしいイメージの花束をつくりました」。
また、自分の考えや知識をほかのスタッフに伝えて、お店づくりをするのも店長の大切な役割です。「接客ではお客様の立場になって、むずかしい要望にも『No』ではなく、最善(さいぜん)の策を考えることを指導しています。ブーケづくりについては、色合わせや花合わせはもちろんですが、花の向きを特にしっかり教えます。花がいちばんかわいい面が見えているか、どの花もその花の良さが出せているかなどを指導します」。
お花屋さんになるには?
花屋で仕事をするために、必要な資格はありません。冠婚葬祭(かんこんそうさい)の装花専門店など、特別な知識を必要とする場合には「フラワー装飾技能士(そうしょくぎのうし)」という国家資格があります。イベント用の装花専門の会社もあり、お店ごとにあつかう花の種類や仕事内容はさまざまです。
実家が農業を営んでいて、小さなころから身近に植物があるなかで育った二宮さんにアドバイスをもらいました。「どんな場所にも植物はあります。もし花屋の仕事に興味があるのでしたら、野にさく花や木の枝ぶりなど、自然にあるものがどうさいて、どう生えているのかをよく観察してみてください。ひとつひとつちがって面白い。植物を見る目を養うことが、きっと役に立つと思いますし、センスがみがかれていくと思います。お花を通じてお客様を笑顔にしたい、そんなひとが向いていると思いますよ」。
※2021年3月現在
※取材・撮影は感染対策をほどこした上で、マスクを外した状態で行っています。
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