安全安心な運行と乗客への思いやりで、ひとびとの生活を支えるバス運転士の仕事

2021.05.14 おしごと発見!

おしごと発見!

バス運転士

公共交通サービスとして電車と同じく重要な役割を担う路線バス。決められたルートを時間通りに、かつ安全安心に運行するのがバス運転士の仕事です。乗客の命をあずかる責任のある仕事のため、大型二種免許が必要とされます。街に住むひとたちの生活の足として活躍する、地域とのつながりも大切な仕事です。[取材:東急バス株式会社 運転士 工藤元彦さん]

乗客も車も、すべてを思いやる気持ちで運転する


バスの運転士は普段目にすることも多く、身近に感じられる仕事です。大きな車体をあやつり、細い道も安全に走る高い運転技術はもちろん必要ですが、運転士に大切なのは「心」と工藤さんは話します。「安全安心が最優先ですが、そのためには技術だけではなく、まわりをどれだけ思いやれるかが大事です。歩くひと、一般車を運転しているひと、そして乗客、それから地域で暮らすひとも。一人ひとりの立場にたって相手の気持ちを考えることが、安全安心に走るための基本です」。

たとえば工藤さんは、前を走る車のナンバーをいつも見ているそうです。もし他の地域のナンバーだったときは、常に注意を心がけています。このあたりの道路に詳しくないので道がわからず、急ブレーキを踏んだり、急に車線変更をするかもしれないからです。路線ルートの中にある、特に注意が必要なスポットを他の運転士と共有して、事前に知っておくことも欠かしません。

バス運転歴30年以上という大ベテランの工藤さん、「どれだけ車の技術や運行管理システムが進化しても、安全安心はひとが守るもの。『私たちの運転が一般車のお手本であるべき』という気持ちをもって日々運転しています」。冷静を常に心がけ、時には深呼吸で気分を落ち着かせる。どんなときも初心を忘れずにハンドルを握っています

お客さまを乗せる運転士にあこがれて


小さい頃から車が大好きだったという工藤さん。運転する仕事にあこがれ、最初は運送会社に入社し、トラックの運転手をしていたと言います。「荷物を運ぶ仕事をしていたら、お客さまを乗せる、お客さまと会話する仕事に興味がどんどんわいてきて。大型二種免許を取得できるタイミングで、バス運転士に転職しました」。

教習コースで練習を重ねる研修期間や現場での見習い期間を経て、初めてひとりでバスを運転したときは、とても緊張したそうです。「手に汗をかいてしまって大変でした(笑)。それでもお客さまから『ありがとう』と声をかけられたときは本当にうれしかった」。それからバス運転士一筋30年以上。現在は教育・育成の担当もしながら、現役の運転士として活躍しています。

バス運転士は勤務時間が一定ではなく、早朝始発からの勤務もあれば、夕方から最終までということもあります。その中でも、工藤さんは始発からのシフトがいちばんお気に入りだそう。「朝の澄んだ空気の中、暗いうちから走りだして、だんだんと街が明るくなっていく景色がとても好きです。それに朝は挨拶が活発で、お客さまと『おはようございます』と気持ちのよいやりとりがたくさんできますから」。始発は早朝6時頃。バス運転士ならではの朝のすがすがしい乗務風景が目に浮かびます。

命をあずかる仕事を支えるのは、プロ同士のつながり


「バス運転士の仕事はチームワークが大切。運行管理をする事務所スタッフ、そして整備士さんとの連携で日々の運行が成り立っています」と工藤さん。たとえば、路線付近にある学校で今日はイベントがある、工事で道路が渋滞しているなど、混雑状況や道路状況を常に無線でやりとり。何十台と同時に走るバスのスムーズな運行管理を担う事務所スタッフとは、いつもつながっています。そして整備士さんが厳しい安全基準をクリアし、確かな仕事をしてくれているという安心感は、お客さまを乗せる運転士にとっては欠かせないものです。

加えてもうひとつ、運転士同士の横のつながりも大事なものと工藤さんは話します。「東急バスでは運転士はチーム制で、いつもチーム内で情報を共有して、お互いの安全意識を高めあっています。無事故という事実を讃(たた)えあい、すごいね、よかったね、と同じ目標を持つ者同士が声を掛けあう。昔はなかった制度ですが、これは本当に必要なものだと感じています」。運転席ではひとりでも、気持ちは皆と一緒。同じ想いで働く仲間がいることが、安全安心を継続する支えになっているそうです。

バス運転士になるには?


大型二種免許が必要です。普通免許など取得後3年以上、21歳以上で取得できます。東急バスでは、入社後に大型二種免許を取得することもでき、教育センターでのトレーニングを経て現場に配属されます。工藤さんと同じように車が好き、運転が好きというひとが多く、小さい頃からバスの運転士にあこがれて夢をかなえたというひとも。

一般車とのちがいを尋ねると、「大型バスならではの大きなタイヤや計器類、ミラーなんて11個もあります。何十人とお客さまが乗っているときのブレーキの感覚や車体の重量感など、一般車では味わえないものです」。その分、運転技術も必要です。「高いレベルの安全を実現する技術や知識の習得、心構えが厳しく徹底されていることもこの仕事の特徴です」。たとえば、乗車するまでに3回のアルコールチェックがあり、もしも検知された場合、その日の乗務はできません。また、どれだけ勤続年数の長いベテランでも、定期的な研修や訓練が必須です。

そして運転士にはサービス業としての側面も。「車イスのお客さまの対応や障がいをお持ちの方のサポート、小さなお子さま連れ、お年寄りへの配慮など、乗務中もさまざまな気遣いやサービス提供が必要となります」。バスを必要とするひと、なくてはならないひとたちの力になり、生活を支える。その想いがあってこそ、勤められる仕事といえるでしょう。

※2020年11月現在
※取材・撮影は感染対策を施した上で、マスクを外した状態で行っています。

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