病気で苦しむひとの心と体をケアする医療のスペシャリスト、医師の仕事

2021.05.14 おしごと発見!

おしごと発見!

医師(脳神経外科医)

医師は、病気にかかったひとを診察(しんさつ)して治療(ちりょう)や手術(しゅじゅつ)を行い、ひとびとの健康を支え、ときに命を救(すく)う仕事です。そのなかでも脳神経外科医は、脳(のう)や神経(しんけい)に関する病気をあつかう専門医(せんもんい)で、より高度な技術が求められます。手術だけでなく、その後のケアやリハビリテーションで、患者(かんじゃ)さんをケアします。[取材:東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科 渡邉健太郎さん]

体の重要な器官(きかん)をあつかう、手術のスペシャリスト


カゼをひいたときや、ケガをしてしまったとき、みなさんも一度は病院へ行ったことがあると思います。そこで、診察や治療をしてくれるのが医師です。わたしたちの健康を支えてくれる医師は、生活になくてはならない存在です。医師には、大きくふたつの種類(しゅるい)があります。ひとつは、患者さんを診察して病気の治療を行う「臨床医(りんしょうい)」。もうひとつは、病気の原因を研究(けんきゅう)してあたらしい薬や治療方法を開発する「研究医」です。

今回取材した渡邉先生は、臨床医として1年間に100件近い手術をこなす脳神経外科の医師。病院へ来た具合のわるいひとや、入院中の患者さんと向き合い、病気で苦しむひとたちを支え、助けています。


ひとくちに医師といっても、子どもたちを診療する小児科、虫歯を治す歯科などさまざまな専門分野(せんもんぶんや)があります。そのなかで、渡邉先生が脳神経外科の道を選んだきっかけを聞くと、「一人前の医師になる前の研修医(けんしゅうい)のころ、手術に立ち会って患者さんの脳を見たときに、『なんて神秘的(しんぴてき)なんだろう!』と思ったんです。人体の神秘に本当に感動しました」と語ります。

脳神経外科は、ひとが手や足を動かすための重要な器官である脳にメスを入れるため、より高度な技術や判断力(はんだんりょく)が求められます。ほかの専門医と比べて、手術を多く手がけるスペシャリストです。

命の現場で、ベストを尽くすために

手術は時間とのたたかいです。入院患者の手術のほかにも、交通事故などで脳にケガを負った患者さんが救急車で病院へ運ばれてきたときは、救命救急チームに加わって、手術を行うこともあります。「手術では、ていねいにやって時間をかけ過ぎるよりも、すべきことをテキパキと、リズムよく進めることが大事です。そして、特に重要な部分に時間をかけて、治療を行います」と渡邉先生は話します。

また、手術をするときの気持ちについても聞きました。「僕は、緊張感(きんちょうかん)はもちつつも、気持ちはあかるく、余裕(よゆう)をもって手術することを心がけています。肩(かた)に力が入っているよりも、リラックスできている方が、僕もスタッフも集中できるし、コミュニケーションもとりやすいんです」。

手術中は空気がピンと張りつめていて…と思いきや、渡邉先生とスタッフのみなさんは、思いのほかリラックスしている様子です。手術の合間には、なごやかな会話も。渡邉先生のお話のとおり、スタッフ全員が肩の力を抜いて、手術に集中しているのがわかります。

そして、渡邉先生の足元を見ると、なんと裸足(はだし)!「自分の自然な体のリズムで手術するためです」と、あとで教えてくれました。


3時間ほどで手術は無事に終わり、ホッと息をつく渡邉先生にお話を聞きました。「医師ひとりで、手術のすべてをやれるわけではありません。スタッフの助けが必要です。ですから、スタッフに『ありがとう』という感謝(かんしゃ)の気持ちをもって、みんなの力で手術を成功させる。医師によって現場の雰囲気(ふんいき)はそれぞれですが、僕はチームワークを発揮(はっき)するために、『楽しく、真剣(しんけん)に仕事ができた』とスタッフに感じてもらえる雰囲気づくりを心がけています」。

手術でベストを尽くすために、現場のリーダーとして雰囲気をつくることも、医師の大切な役割であることが伝わってくる、そんな命の現場を目の当たりにしました。

患者さんといっしょに病気と向き合うパートナーとして

医師は、ひとの生死に関わる、責任の大きな仕事です。ときには、完治がむずかしい患者さんとその家族に向き合わなければならないこともあります。「全員が絶対によくなるわけではありません。だからこそ、前向きにいまの状態を受けとめてほしいという思いをもって、言葉をかけます」。

これまでたくさんの患者さんと向き合ってきた渡邉先生は、「相手の顔は、自分の顔」と話します。「たとえば、手術前の患者さんが不安な顔をしているときは、こちらの不安が伝わっている証拠(しょうこ)です。そういうときは、たくさん話をして、おたがいに理解を深めていきます」。

実際に、手術の説明に1時間以上話しこむことも。医療の知識や技術はもちろん必要ですが、病気といっしょに向き合うパートナーとして、患者さんの心に寄りそう役目も医師にはあります。

医師になるには?

まずは大学の医学部に入学する必要があります。そして医学部で6年間学び、医師国家試験に合格することで医師免許を取得します。次に、2年間の初期研修(しょきけんしゅう)です。研修医として、さまざまな診療科で臨床の経験を積み、修了後に自分が何科の医師になるのかを選びます。その後も、専門医をめざして現場での研修がつづきます。

渡邉先生は研修を終えて、一人前の医師として経験を積んだあと、さらに手術の腕(うで)をみがき、知識を深めるために、海外へ留学(りゅうがく)。そこで解剖(かいぼう)の経験を積み、いま日本で活躍(かつやく)しています。

ひとつの病院に勤めつづけるのではなく、自分が追求(ついきゅう)したい医療を学び、スペシャリストをめざして、海外へ行く。そうした選択(せんたく)をすることも、これから医師をめざすみなさんがすすむ道のひとつになると言えるでしょう。

高校1年生のときに「医師になろう」と決めて、大学の医学部へ進んだという渡邉先生は、大学時代をこうふりかえります。「医学部は勉強だけではなく、文武両道(ぶんぶりょうどう)を掲(かか)げているところが多いです。僕自身、医療の勉強をしながら、アイスホッケーをやっていました。スポーツをやったことで心を鍛(きた)えられましたし、そこでの経験はいまの現場のチームワークにも活きています」。最後に、医師のやりがいを聞くと、「患者さんがよくなって、『ありがとう』と言われたときのよろこびは、何ものにも代えがたいです」と笑顔で答えてくれました。


※2021年3月現在

※取材・撮影は感染対策をほどこした上で、マスクを外した状態で行っています。

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オリンパスミュージアム

オリンパス技術開発センター石川(東京都八王子市)内にありますオリンパスミュージアムは、オリンパスが世に送り出した創業時から現在にいたるまでの製品を通して、実際に観て触って実感できる、体験・体感型のミュージアムです。八王子市が推進している体験楽習施設の一翼も担っています。

〒1928507 東京都八王子市石川町2951技術開発センター 石川内
TEL:042-642-3086

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中冨記念くすり博物館

~ 2021年4月1日 リニューアルオープン ~ 佐賀県鳥栖市田代から基山町にわたる一帯は、慶長4(1599)年に対馬藩田代領となり江戸時代中期に「田代売薬」が起こったところです。「田代売薬」の発展は、この地区に社会面及び経済面で大きな蓄積を残し、今日では製薬業は佐賀県の産業の一翼を担うまでに成長しました。 館内にはくすりの製造・販売に関わってきた伝統的な道具や文書類、19世紀のイギリスにあった薬局などを展示。屋外には約350種類の植物が四季折々で楽しめる薬木薬草園も併設しています。 ※1995年3月28日開館。2010年より公益財団法人として運営。

〒8410004 佐賀県鳥栖市神辺町288-1
TEL:0942-84-3334

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内藤記念くすり博物館

日本の薬と医療の専門博物館。医薬の歴史、健康科学に関する正しい知識の普及のために博物館と、薬用植物園の管理と一般公開している。主な展示物は魔よけの白沢像・生薬・製薬道具・薬箱や江戸時代から明治にかけてのくすりの広告、看板、明治時代の薬屋の復元展示。解体新書、日本最初のペニシリンなどが見られる。体験コーナーでは、カロリー計算、骨密度、脳年齢などの測定ができる。歴史的な医薬関係資料65,000点と、図書62,000点を収蔵。附属薬用植物園も敷地内に併設しており約700種類の薬草の見学ができる。

〒5016195 岐阜県各務原市川島竹早町1
TEL:0586-89-2101

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