しごとについての質問
「ミュージシャンってかっこいい。でも、そのスタッフってどんな仕事をしているの?」(16歳・男子)
中山治美(なかやま はるみ)さん
音楽の方向性を決めるプロデューサー、コンサートなら企画や運営、照明、音響技術など、仕事はいろいろあります
『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢』
監督:ニーシャ・ガナトラ
出演:ダコタ・ジョンソン、トレイシー・エリス・ロス
価格:Blu-ray 2075 円 (税込) / DVD 1572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
『愛しのフリーダ』
監督:ライアン・ホワイト
出演:フリーダ・ケリー、ジョージ・ハリソン
価格:Blu-ray 4180円(税込)
発売・販売元:KADOKAWA
もうすぐ夏の大型野外フェスティバルのシーズン。さまざまな国籍やバックボーンを持つ何万人もの観衆を音楽で一体化させて、熱狂の渦に巻き込んでしまうミュージシャンは、世界平和の立役者なのではないかとすら思ってしまいます。うん、かっこいい!!
その音楽を制作する上で、方向性を決めたり、どんな作詞家や作曲家に依頼するかetc……先頭に立って活動するのが、プロデューサーです。映画『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢』の主人公マギーは、ラジオDJの父親の影響もあって、プロデューサーになるのが夢です。そのために大御所歌手グレースのアシスタントになったものの、雑用ばかり。そんなある日、路上ライブを行っていたデヴィッドと出会います。歌声は素晴らしい。でも、もっと素晴らしい環境で演奏させられたら……。プロデューサー心がムクムクと沸き起こってきたマギーは、身分を偽って彼をメジャーデビューさせるべく奮闘します。“身分を偽って”というのはよろしくない行為ではありますが、強硬手段に出てまでもデヴィッドの才能にほれ込んでしまったのだとご理解ください。
ちなみにグレース役のトレイシー・エリス・ロスの母親は、伝説的な歌手のダイアナ・ロスです。しかし彼女自身は俳優として活動しており、本作で初めてカメラの前で歌を披露しました。血は争えないと思えるほどの歌唱力で、グレース役に彼女を抜テキした本作のプロデューサーの腕もなかなか。アーティストの才能をどのように開花させるか? 音楽・映画にかかわらず、それがプロデューサーの第一の仕事だと思います。
音楽制作以外でもミュージシャンを支えているスタッフは多数います。ドキュメンタリー映画『愛しのフリーダ』(2013)の主人公フリーダ・ケリーの例を見てみましょう。
英国リバプール出身のフリーダは16歳の時、友人に誘われて入ったクラブでお気に入りのバンドを見つけます。それが、のちに20世紀を代表するロックバンドになる「ザ・ビートルズ」です。バンドはあっという間に人気バンドへと成長し、メンバーと親しかった彼女は、マネージメント会社の社長秘書にスカウトされ、1970年にバンドが解散するまでの11年間、「ザ・ビートルズ」に人生を捧げることになります。
秘書と同時に彼女が託されたのは、ファンクラブの代表です。メンバーの近況や家族のインタビューなどを会報誌に掲載し、全世界のファンに届ける。今でいうミュージシャンとファンをつなげるSNS担当みたいな感じでしょうか? しかし当時はインターネットはありません。世界中のファンに1通1通切手を貼って郵送するという手間のかかる仕事です。
世界中から届くファンレターに対応するのも彼女の担当だったそうです。その内容は「メンバーの髪の毛を送って」などのムチャぶりも相当あった様子。それでもフリーダはファンの心情をくみ取って、真摯(しんし)に対応していたそうです。「ザ・ビートルズ」にはいまだ熱狂的なファンが存在するのですが、彼女の存在あってこそなのだと実感するでしょう。
そのほか、ミュージシャンがコンサートを開く際の企画や運営をしたり、セットの設営や当日の照明や音響を担当する技術スタッフなど、たとえ自分が歌や楽器演奏に自信がなくとも、音楽に関わる仕事は意外にあります。基本はマギーやフリーダのように「音楽が好き」という気持ちが大切のように思います。