じっくり真剣に働いている人に憧れます。どんな気持ちで仕事をしているんでしょうか?

2023.06.30 みんなの質問

しごとについての質問

「自分と正反対なので、じっくり真剣に働いている人に憧れます。どんな気持ちで仕事をしているんでしょうか?」(15歳・女子)

嵯峨景子 (さが けいこ)さん

ライター・書評家。1979年札幌生まれ。出版メディア関連やポピュラーカルチャーを中心に取材や執筆を手がける。著書に『氷室冴子とその時代』(小鳥遊書房)や『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)、編著に『大人だって読みたい! 少女小説ガイド』(時事通信出版局)など。明治学院大学非常勤講師、また朝日カルチャーセンターでも講座を担当するなど講師業にも従事。

長い時間をかけて成果を出す辞書づくりに関わる人たちを描いた小説があります


『舟を編む』(光文社文庫)

著者:三浦しをん

出版社:光文社

価格:682 円(税込)

電子書籍あり

世の中にはさまざまな仕事がありますが、「じっくり」という言葉からは、長い時間をかけて成果を出す職業を思い浮かべました。「じっくり」の代表格として、辞書づくりに打ち込む人々の姿を描いた『舟を編む』をご紹介します。


玄武書房という出版社に勤め、もうすぐ定年を迎える荒木公平は、30年以上にわたる編集者人生のすべてを辞書づくりに捧げてきました。会社を去らなければいけない荒木の心残りは、新たに立ち上げた国語辞典『大渡海』の企画でした。彼はこの仕事を託せる社員を探し、営業部にいた27歳の馬締光也を引き抜きます。言葉に対して鋭いセンスをもつけれど、どこかトンチンカンな馬締が加わった辞書編集部の、『大渡海』出版に向けた長い長い旅が始まりました――。


辞書とは言葉の海を渡る舟であり、海を渡るにふさわしい舟を編むという思いを込めて名付けられた『大渡海』。地道かつ気長な辞書づくりという仕事を通じて浮かび上がる、さまざまな人たちの熱い思いに心を揺さぶられます。ぜひこの作品を通じて、辞書の世界に、そして深くて広い言葉の海に触れてほしいです。

看護の仕事を確立したナイチンゲールの生涯と信念を紹介しましょう


『ナイチンゲール 「看護」はここから始まった』

著者:村岡花子

絵:丹地陽子

出版社:講談社 青い鳥文庫

価格:814円(税込)

電子書籍あり

続いて、「真剣」の方もみていきましょう。この言葉からは、近代的な看護の基礎を作り上げたフローレンス・ナイチンゲール(1820―1910)を思い浮かべました。イギリスの裕福な上流家庭に生まれ、何不自由なく育ったナイチンゲール。ところが彼女は恵まれた境遇にもかかわらず幸福ではなく、自分の進むべき道を見つけられずに苦しみ続けました。やがて、病気の人のお世話をする看護師という使命を見いだすのです。


上流階級の価値観に染まった母親は、結婚もせずに看護師として働こうとするナイチンゲールのことが理解できませんでした。それでも彼女は自分の信念を貫き、過酷なクリミア戦争の戦地に赴いて傷病兵の命を救いました。さらにこの経験をいかし、看護師を育てる看護師養成学校も作り上げるのです。『ナイチンゲール 「看護」はここから始まった』は、家族の反対や無理解な社会と戦いながら、看護の仕事を確立したナイチンゲールの生涯と信念を紹介する良書です。ぜひ手にとってみてください。