しごとについての質問
「就職で大手の会社に入れなかったら、一生安い給料で働くことになるの?」(15歳・男子)
中山治美(なかやま はるみ)さん
一度つまずいてしまったら人生終わりだ!なんて考えていませんか?
『ザ・エージェント 』
監督:キャメロン・クロウ
出演:トム・クルーズ
デジタル配信中
価格:Blu-ray 2619円(税込)/DVD 1551円(税込)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
※PG12(12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要です)
『きっと、うまくいく』
監督:ラージクマール・ヒラニ
出演:アーミル・カーン
価格:Blu-ray 5720円(税込)
発売元:ハピネットファントム・スタジオ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©Vidhu Vinod Chopra Production 2009.All rights reserved
憧れますよね。高収入を得て、一生安泰の生活。
しかし残念ながら、人生にそんな楽な道はないことを、私たちはこのコロナ禍で学びました。
倒産に、業務縮小や人員削減、減俸を余儀なくされた企業も多く、大手も例外ではありません。大打撃を受けた大手航空会社社員が、給与やボーナスを大幅カットされたニュースを耳にしたかと思います。
そもそも大手=高収入という認識も、幻想に過ぎません。社内でも職種によって賃金格差もありますし、勤務態度が悪かったら減俸もあり得ます。それに中小企業やフリーランスでも大手以上の高額所得者は多数います。でなければ、起業する人なんていないでしょ?
『ザ・エージェント』(1996)のジェリー(トム・クルーズ)の例を見てみましょう。スポーツビジネス大国と言われるアメリカで、ジェリーはプロスポーツ選手の契約交渉を行うスポーツ・エージェント(代理人)を務めています。大手の会社に所属していましたが、選手を“商品”としかみていない会社に疑問を抱いて提案書を提出したところ、解雇となってしまいました。ジェリーは担当していた選手を引き連れて独立を画策しますが、ついてきたのはアメフト選手としてはまだ芽が出ないロッドと、元同僚のドロシーだけ。そんな彼らの奮闘劇です。
劇中でお金の話が出てきますが、一昔前の作品なので補足までに。アメリカの雑誌「Forbes」が発表している2021年のスポーツ選手長者番付によると、アメリカン・フットボール・リーグ(NFL)のトップはダラス・カウボーイズに所属するダック・プレスコット選手で、1億750万ドル(約118.25億円。1ドル=110円換算・2020年時点)。マネージメント料は契約にもよりますが、1割だとしても約11.8億円ということになります。“アメリカン・ドリーム”健在ですね。
ところで、質問を読んでちょっと心配に思うことがありました。もしかしたら就職だけでなく、受験や部活動などで一度つまずいてしまったら人生終わりだ!なんてことを考えていませんか?
そんなあなたにオススメしたい作品があります。
インド映画『きっと、うまくいく』(2009)です。カースト制度の残るインドでは、子どもを身分に関係なく出世の道が切り開けるエンジニアにするのが親の夢。というわけで工科大学が人気です。本作は受験戦争に勝ち抜いて、念願の工科大学に進学した若者たちが主人公です。
大学に入っても、そこは日本以上の競争社会。学長をはじめ講師陣は、生徒たちのお尻を叩き続けます。それに異を唱えて何かと反発するのがランチョー(アーミル・カーン)です。問題児として学長の目の敵となりますが、成績優秀というのがニクいところ。そんな彼をライバル視する堅物なお坊ちゃん・チャトルは社会で成功を収めるのは自分の方に違いないという自負から、10年後の再会をランチョーに仕掛けます。実際、チャトルは大企業の副社長に。対してランチョーは人里離れた場所で暮らしていることが判明するのですが……。果たして人生の成功者はどちらか?という問いを我々に投げかけてくれます。
はっきり言ってランチョーの人生も、前述したジェリーの人生も波乱万丈。でも何が起こるかわからないのも楽しいかも? 今を生きるに必要な前向きなパワーを与えてくれる2作です。