記録係
写真は将棋の名人戦七番勝負の第一局。名人(写真左)と挑戦者(写真右)が勝負を繰り広げている。その後ろに、3人の男の人が座っているね。左側にいるのは対局の観戦記を書く記者、真ん中の和服の人は時間を測り「棋譜」を書く記録係、右側が立会人だよ。( 写真提供/日本将棋連盟 )
「棋譜」、「持ち時間の確認」、「封じ手の準備」など責任の重いポジション
「記録係」は「棋譜」をつけ、持ち時間を管理する係。「棋譜」とは、将棋の対局で、どの駒が、どのマス目に移動したかという「指し手」を書き記したもののことをいいます。
また、将棋の対局には持ち時間があり、記録係は一手に何分かかったかをストップウオッチなどで測り、棋譜用紙に指し手とともに書き込んでいきます。最近では、タブレット端末で棋譜入力をして、手書きの記録と併用するケースも多くなっているのだそうです。
タイトル戦などで対局が翌日にまたぐとき、「記録係」は指し手番の棋士がその日最後の一手を矢印を使って書き入れるため、そのときの盤面を書いた図面を用意します。持ち時間を公正にするため、この「封じ手」の準備も大切な仕事。封じ手を入れた封書は2通作られ、1通は立会人が保管し、もう1通は主催者が金庫などに保管します。
このように、対局の間とても重要な役割を担う記録係。トイレなどで席を離れないために、できるだけ水分を取らないようにしているのだそうです。
記録係はどんな人がやっているのかな?
将棋の世界は「奨励会」に入会し、原則的に6級からスタートして、昇段・昇級を目指して戦い、四段まで昇段するとプロ棋士として認められます。このプロを目指す6級~三段の人は「奨励会員」と呼ばれますが、記録係を務めるのはこの奨励会員。つまり、プロ棋士の卵たちです。
ちなみに、「奨励会員」は21歳までに初段、26歳までに四段に昇段しないと奨励会を退会しなければなりません。入会した奨励会員のうち、プロ棋士になることができるのは全体の約2割だそうです。
なお、将棋はルールが確立しているので、審判がつくことはありません。でも、大きな大会、例えば名人戦になると立会人(写真右)がつくことも。立会人は高位のプロの棋士が務め、対局の勝ち負けが決まらない千日手(※1)や持将棋(※2)になったときなどに、指し直しなどの判断をします。
※1 千日手:駒の配置、両対局者の持ち駒と手順がすべて同じという局面を繰り返し、いつまでも局面が進展しない状態。4回現れた時点で無勝負となる。
※2 持将棋:互いに玉(王)が敵陣に入ることで、詰ませる見込みがなくなり、互いに規定の駒数を得て勝負がつかなくなった状態