学校の先生になりたいけど、向き不向きってある?

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

学校の先生になりたいと思っていますが、性格によって向き、不向きがありますか?

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

あり得ない人物が、教師になっていく姿はとてもドラマティック


『あの子を探して』
発売・販売元:株式会社ハピネット(DVD)
価格:スペシャルプライス
©1999 COLUMBIA PICTURES FILM PRODUCTION ASIA LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『スクール・オブ・ロック』
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格:Blu-ray 2381円(税別) / DVD 1429円(税別)
TM & COPYRIGHT© 2003 BY PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.TM, (R) & Copyright ©2012 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

たぶん、向き不向きはあるのでしょうね。ただ、その基準はとてもあいまいです。ですので、情熱を持つ人が、向いてないと思い込んで教師になるのを諦めてもいいのか?と思いますし、逆に、意外な人が教師になってみたら思わぬ才覚を発揮する例もあるのでは? 次の2作を見ると、そう確信します。

巨匠チャン・イーモウ監督『あの子を探して』は、1990年代後半の、中国の農村地方における劣悪な教育事情を描いた作品です。なにせ、親の病で1カ月間、休職することになった先生の代わりに、わずか13歳の少女ミンジが代用教員を務めるというのですから。お金目的で渋々連れて来られたミンジは、はなから教えるのは無理と諦めモードです。

そんな彼女にやる気スイッチが入ったのは、クラス一番のやんちゃ坊主ホエクーが、親の借金返済のために街に出稼ぎへ行ってしまってから。給金を満額もらう条件は、「先生が戻ってくる間に生徒が一人も辞めなかったら」と言われているミンジは、ホエクーを連れ戻すために街へ向かう決意をします。ただ手持ちのお金がないため、バス代がいくらあれば街へ行けるか? どうすればその軍資金を得られるか? を生徒たちに投げかけます。このシーンが傑作で、ミンジはいつの間にか算数の授業をやってのけてしまうのです。ミンジも生徒たちもそのことに気付いていないけど、なんと実用的で身になる授業だこと!

そうして苦労して街にたどり着いたミンジですが、ホエクーは駅で迷子になり、行方不明となっていました。ミンジはホエクーを探します。その頃はもう、よこしまな気持ちはありません。ひとえにホエクーが心配なだけ。頼りなかったミンジが、なんだかりりしく見えてくることでしょう。

『スクール・オブ・ロック』の主人公デューイは、さらにあり得ない状況で先生になります。私立学校から居候先の友人ネッド宛てに臨時教師の依頼があった時、たまたま電話を受けたデューイ。給料欲しさに友達に代わってちゃっかり先生になりすまします。そこでロック好きのデューイは生徒たちの音楽の才能に着目。うそ八百を並べ立ててロックバンドを結成して、バンドバトル出場を画策します。

全てがデューイの欲望を満たすための言動という、とんでもない“事件”です。でもデューイは、生徒をその気にさせたり、隠れた才能を見いだして伸ばすことにたけていました。その証拠に生徒の腕前もメキメキと上達します。こんな先生と出会っていたら人生が変わっていたかも? と、うらやましく思ってしまうレベルです。

一般的に見れば2人は教師に向いていないどころか、教員免許すら持っていません。ひょんなことから教壇に立ったワケですが、次第に先生然となっていくから不思議です。先生だっていきなりプロになれるわけでなし、RPG(ロール・プレイング・ゲーム)のキャラクターがステージをクリアしてレベルアップしていくのと同じで、経験や責務が糧になっているのですね。

生徒と共に成長できる―。そんな人が先生に向いているように思います。