配送業って大変そう。やりがいはどんなこと?

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

配送業は大変そうに見えるけど、どんなやりがいがありますか?(15歳・男子)

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

映画に登場する、ドライバーのカッコよさに注目してみましょう


『十五才 学校Ⅳ』
発売・販売元:松竹株式会社
価格:DVD 3800円(税別)
©2000松竹株式会社/日本テレビ放送網株式会社/住友商事株式会社/株式会社角川書店/株式会社博報堂

『トランスポーター』
発売元:アスミック・エース
販売元:KADOKAWA
価格:DVD 1500円(税別) / Blu-ray 2500円(税別)
© 2002 EuropaCorp - TF1 Films Production. ALL RIGHTS RESERVED.

私たちの生活はネット通販を活用することが増え、街で配送業者を見かけることが増えました。汗水垂らして荷物を運んでいる姿を見ると「お疲れさまです」と一声かけずにはいられません。おまけに人手不足が叫ばれており、業界全体で改善に向けての試行錯誤が始まっています。

一方で都心では、大きなバッグを背負ってバイクや自転車でレストランの料理を配達するフード・デリバリーサービスが大人気。今後ますます成長が見込まれる業界でもあります。その配送業の代表といえば、国内の物流を支えていると言っても過言ではない大型トラック運転手でしょう。

山田洋次監督『十五才 学校Ⅳ』では、この運転手の方々が大活躍します。主人公は不登校生活をしている中学3年生・大介(金井勇太)。彼はある日思い立って、冒険の旅に出ます。目指すは樹齢7000年とも言われる鹿児島県・屋久島の縄文杉に触れること。飛行機ならひとっ飛びですが、東京からヒッチハイクをしての大冒険です。その彼に温かい手を差し伸べるのが大型トラックの運転手たち。彼らは大介に対して余計な詮索もしなければ、自分のこともあまり多くは語りません。彼らはどんな事情で今の仕事に就いたのか。巨匠・山田監督は、セリフなどでそれぞれの人生ドラマをにじませていきます。

例えば大型トラック運転手のすみれ(麻実れい)。彼女は母親と子ども2人を育てていることが分かります。しかも長男は引きこもりであることから、大介に親近感を抱いたようです。女性が周囲に気兼ねなく働け、大型免許などの資格があれば性の差別なく収入を得ることができ、愛する家族を支えていける。すみれにとっての“やりがい”が見えてきます。

確かに長時間の運転は体への負担もあり、腰痛が職業病です。でも全国津々浦々旅をしていれば、本作のようなステキな出会いもある! 特に大介が出会う運転手は皆、魅力的で、人生経験の豊かさを感じます。

また純粋に運転好き・車好きが高じて配送業に就く人も多いようです。ジェイソン・ステイサム演じる映画『トランスポーター』のフランクも、その一人です。

常にピカピカの車に懸ける愛情と、ほれぼれするようなドライビング・テクニックに、好きなことを生業(なりわい)にする喜びが伝わってきます。しかも彼はプロ中のプロです。フリーの“運び屋”をするにあたって3つのルールを設けています。
・契約順守
・依頼者の名前は聞かない
・依頼品を開けない

中でも配送業者にとって“約束の時間までに届ける”などの契約順守は一番大事。本作ではフランクが思わぬ災難に次々と巻き込まれていくワケですが、多少むちゃなことをしてでも仕事を全うしようと必死になる姿に胸が熱くなります。

ただしわかってはいるかと思いますが、前述した大介のように冒険という名の家出もダメなら、フランクのように法を犯すのもNG。まっ、フランクをまねしようとしてもムリですけどね。映画のマジックをお楽しみください。