大人に聞きたい!仕事が嫌になるのはどんな時?

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

ママはいっつも仕事している。『仕事が好き』って言うけれど、嫌な時ってどんな時?(11歳・男子)

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

母だったり女性だったりという理由で「嫌」にぶつかるときがあるかも


『マイ・インターン』
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
価格:DVD  1429円(税別)/Blu-ray 2381円(税別)
(C) 2015 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『大統領の料理人』
発売元:ギャガ
販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD 3800円(税別)/Blu-ray 4700円(税別)
Les Saveurs du Palais (C)2012 -Armada Films- Vendome Production -Wild Bunch- France 2 Cinema

「仕事が好き」と公言しているとは、働き者のステキなお母さんなのでしょうね。でも確かに、社会で働くお母さんの姿はなかなか想像できないものです。そこで『マイ・インターン』を見てみましょう。

アン・ハサウェイ演じるジュールズは、ファッション通販会社のCEO(最高経営責任者)です。起業してわずか1年半で、社員25人から220人を抱えるトップ企業へと育てたやり手です。でも急成長すぎて仕事量やトラブルも増え、ジュールズも社員も、日々の仕事をこなすだけで精いっぱい。そこで出資者から新たなCEOを迎えて経営はそちらに任せ、ジュールズは企画に専念したほうがいいのでは? と提案されます。

日本でも今、“働き方改革”という取り組みが政府を中心に行われていますが、やはりいくら仕事が好きでも生活とのバランスが崩れてくると体調や精神に影響をもたらすものです。一児の母でもあるジュールズも家族と過ごす時間すらままならず、スタッフや彼女の健康を気遣う母親の言動にもイライラしがち。するとささいなミスをしたり、人に優しくなれなかったり。さらに追い打ちをかけるように、“専業主夫”となって自分を支えてくれていたはずの夫の裏切りも発覚。こうなると心に余裕のなかった自分のせいでは? と、自己嫌悪に陥るんですよねぇ。映画では、そんな時にやってきた70歳のシニア・インストラクターのボブの存在が、彼女に人生を見つめ直すきっかけを与えてくれます。「働くこと」に性別や年齢は関係ないということも描いた秀作です。

また先ごろ東京医科大の入試選考で女子合格者数を減らしていた事実が発覚しましたが、女性の社会進出を阻むかのような偏見や差別は、残念ながらいまだに存在します。映画『大統領の料理人』を見ると、先進国でもあるフランスでも!

同作は、1980年代にフランス大統領フランソワ・ミッテランのプレイベート・シェフを任されたダニエル・デルプシュ(オルタンス)の実話を描いたものです。大統領官邸(エリゼ宮殿)の厨房に入った初めての女性シェフとあって、官邸のしきたりと称した周囲の横槍や、やっかみは半端ではありません。中でも辛らつなのが、彼女につけられた“デュ・バリー夫人”というあだ名。意味は2つあります。1つは、彼女はフォアグラやトリュフなどを使った料理を好むことから、パリにある高級食材店「コンテス・デュ・バリー」から名付けられたもの。2つめは、18世紀のフランス国王ルイ15世の寵愛を受けていた女性の名前から。つまり料理の腕ではなく、大統領と性的関係を結んで雇われたのだろうという根拠のない蔑視です。それでもオルタンスは自分に与えられた任務を全うしようと戦いますが、言葉の暴力に傷つかない人はいません。

おそらく、あなたのお母さんも多かれ少なかれ「嫌」という苦虫を噛みつぶしながら仕事に邁進(まいしん)していると思います。もしかしたら頑張り屋さんで、あまり弱音を吐くタイプではないのでは? でももし、ふと疲れた表情をしていたら、「お疲れさま」とか「いつもありがとう」とか、優しい言葉をかけてあげてください。家族の温かい言葉は、お母さんにとって何よりの栄養剤になりますよ。