小学5年生の国語で学ぶ単元に「新聞を読もう」があります。社会の出来事を知るための新聞についてより深く知ってもらおうと、朝日新聞社が武蔵野市立関前南小学校(東京都)で出張授業を行いました。

- 実践校
- 東京都武蔵野市立関前南小学校
- 学年
- 小学5年生(2022年度)全2クラス計67人
- 授業
- 国語
- 時間
- 2コマ(2022年9月20日)
- 使った教材
- 新聞紙、原稿用紙ほか
- ゲスト講師
- 朝日新聞社
新聞って、知っている?
「ニュース!」「マンガ」「天気」「テレビ欄!」。いろいろな声が上がる。「ほかにも写真や表やグラフなどもありますね。それらをまとめて『情報』と言います。じゃあ、情報ってなんだろう?」。難しいこの問いの答えを導くヒントに、ここである質問が投げかけられた。
「家族で旅行に行くことになりました。さて、泊まりたいホテルはどっちかな?」
① Aホテル ②Bホテル ③どちらとも決められない
③に一番多く手が挙がった後、ホテルについての情報が与えられた。「Aホテルは海辺にあり、美しいビーチとおいしいシーフードが自慢。Bホテルはさわやかな風が吹く高原にあり、ボリュームたっぷりの肉料理が自慢」。すると、挙手は①と②に分かれた。次に、さらなる情報として「Aホテルでは毎日5時間の水泳特訓があり、部屋にテレビはなく、トレーニングマシンがある。Bホテルでは訓練はなく、部屋にテレビがあり映画やゲームが楽しめる」ことが追加されると、ほとんどの児童が②のBホテルに手を挙げた。
人は情報を判断して行動する。天気予報で雨と聞けば傘を持って出かけ、友達から映画が面白かったと聞けばチケットを買う。どんな学校に進学し、将来どんな仕事に就くかも、情報が必要になる。「情報には正確さ、速さ、新しさに加えて、色々な種類があることが大事です。では、色々な情報が載っている新聞はどうやってできているか、見ていきましょう」


記者の仕事・新聞ができるまで
新聞記事は、記者が関係者や識者に話を聞き、資料を調べて書いたものがそのまま新聞に載るわけではない。記者が提出した原稿を、キャップやデスクと呼ばれるベテラン記者たちが順番に内容やデータを多角的にチェックしていく。同時に校閲と呼ばれる専門職でも1文字ずつ吟味し、過去の記事とも比べて内容を精査。そうしてチェックと修正を重ねた原稿は、最終的にその日の当番編集長が紙面全体を確認してからようやく記事として印刷に回される。「たくさんの人の手でチェックを受けることが信頼の元になっています。意見を交わしながら紙面を作るのでバランスが取れているとも言われているし、そうなる努力もしているのです」
政治家を取り囲んで話を聞く「囲み取材」の様子の写真や、ノート、カメラ、ICレコーダーといった「記者の七つ道具」などを紹介。記者の心構えとして、いつでもどこでも取材に駆けつけられるよう泊まり道具を常備していたり、取材メモは何年間も、場合によっては何十年も持ち続けていたりすることなどを伝えた。
また、新聞社には記者だけではなく、グラフや図版を制作するデザイナー、小型ジェットやヘリコプターを操縦するパイロットの社員などもいることを紹介すると、児童らは興味深そうに聴き入っていた。最後に、新聞ができるまでをわかりやすく紹介した動画を見て、1コマ目は終了した。


新聞の構成と読み方
休み時間を挟んで、次は新聞の読み方と、意見文の書き方を学ぶ。1日分の新聞に入っている文字数は約15万~16万字。文庫本1冊分だ。大人でもなかなか読み切れない量をどうやって読むか。
その手がかりとして遊佐さんは、記事の構成としての「見出しとリード文」に触れた。2018年サッカーW杯の日本対コロンビア戦の結果を伝える1面見出し「日本 金星発進」の例をもとに、見出しは何のニュースか一目でわかるものであり、リード文は文章全体の内容を短くまとめた要約であることを解説。「まずは新聞をめくって見出しをパラパラと見ていき、興味があればリード文を読む。もっと読みたいと思えば次の段落へと読み進めていく」という毎日の読み方のコツを伝えた。
ほかにも、「おしごと年鑑2022」の記事にもあるように紙面には「政治面」「社会面」「経済面」「科学面」「スポーツ面」などのページ立てがあること、1面の題字下には、「頭出し」というその日のトピックス紹介があることなどを説明した。

投稿欄に意見文を書いてみよう!
そして、いよいよ「意見文を書く」時間になった。朝日新聞の読者の声を集めたオピニオン面の「声」欄から出されたテーマは「電話」。今やコミュニケーションの形は大きく変わり、仕事でも友人同士でも相手の都合を邪魔しないメールやSNSのほうが電話よりいいという風潮があることに、2021年8月11日掲載の「どう思いますか 電話 時代遅れ?」に対する投稿では、さまざまな世代からの意見が寄せられていた。
16歳の高校生Aさんの「急に電話をかけるのは失礼だし、互いに時間の無駄になるから電話は不要」という意見と、50代の主婦Bさんの「SNSも便利だけど、電話は声を聴くと安心できるので、場合によって使い分ける」という意見。このAとBどちらかの立場に立って意見文を書く。まとめるコツとして「自分の立場(賛成か反対)を支える複数の理由や具体例を考えよう」と、次の骨組みが示された。
① 意見(40字)私は「○○さんの意見に 賛成/反対です。」
② 理由(40字)なぜならば、○○だからです。
③ 経験(80字)私も○○な経験をしたことがあります。
④ 結論(40字)だから私は、○○さんの意見に 賛成/反対です。
(※文字数は参考)
与えられた時間は10分。すぐにスラスラと書き始める子もいれば、友達と相談したり、途中で悩んで手が止まったりする子もいる。時間になり、「書き終わった子はいるかな?」との問いに手を挙げた女子と男子1人ずつに、書いた意見文を読み上げてもらった。
女子は、「Bさんの意見に賛成」の立場。直接、声を聴いて相手の気持ちが理解できてよかったという経験から、電話とメールなどを使い分けるのがいい、と発表した。男子は、「電話は時代遅れではない」と断言。電話は発音なども加わることで相手の気持ちがわかるし、声を聴くことで誰が話しているか、本当に本人かが判断できる。普段は電話を積極的に使い、時間がないときなどはメールなどを使いたい、と発表した。
「こんな風に、いろいろな意見があると思います。面白いテーマがあれば、ぜひ意見文を書いてみましょう」。書いた文章に見出しをつけると、より一層伝えたいことが際立つとして、「見出しは本文に書いてある言葉で、言い換えてもいいけど10文字から16文字程度がいいですね」とアドバイスして終わった。「ぜひ、書けた意見文を朝日新聞に送ってください。もしかしたら、皆さんの意見が新聞に載るかもしれませんよ」

出張授業後の
先生からのコメント
-
事前に朝日小学生新聞の記事を読み、要約する学習を行いました。このときは読むのに時間がかかり、子どもたちはリード文=要約ということに気づいていなかったので、今回、新聞の構成を学んで読む技術が上がるといいなと考えています。意見文は時間内に書き切れない子もいたので、事後に取り組みました。各自が書けているところまでを机に置いて、みんなで見て回り、それを参考にして書き方を変えたり、練り直しをしたりして仕上げました。「わたしは○○さんの~という意見に賛成です」といった書き出し方や、「自分も~といった経験があったので」という具体的な部分で、作文の材料集めや肉付けが具体的になり、学びになったと思います。(5年2組担任:渡邊佳祐先生)
ゲスト講師から

遊佐美恵子さん
朝日新聞社 CSR推進部
小中高校向けにNIE(Newspaper in Education)教育関連の講座を担当。
授業では、毎回子どもたちにとって成果物など『やった感』があるよう工夫しています。インタビューのワークショップなども行いますが、今回のような意見文の作文は、立場を決めれば書きやすく、実際に仕上がったものを新聞に投稿することもできるのでオススメです。テーマは、子どもたちが『自分ごと』として考えられるものがベスト。今回の『電話』については、発表してもらったどちらの子も、メールやSNSだけでなく電話に肯定的だったのが印象深かったですね。