お札や宝くじなど、模様に見えるような部分を拡大してみると実は文字になっている。こうした細かい印刷の技術が発達して、今はどんなものに応用されているのかTOPPANホールディングスに聞いてみました。
- 印刷の仕事
- エレクトロニクスの仕事
- 博物館の仕事
本当。お札や株券などの偽造(ぎぞう)防止のために誕生した技術が、最新のエレクトロニクスに活用されているんだ。
明治時代、微細(びさい)印刷によって新紙幣が誕生!
日本は明治新政府の発足とともに、国家の近代化をはかるために新しい紙幣を発行しました。全国で共通の紙幣が使用できるようにするために、偽造されずにたくさん印刷できる技術が必要となり、西洋から技術を学んだよ。
▲1881(明治14)年に発行された「改造紙幣 1円」。現在の紙幣デザインのもととなる横型で、偽造防止には肖像(しょうぞう)が有効であるとの判断から、日本で最初の肖像が入った紙幣となりました
お雇い外国人による技術指導
イタリアで銅版画家として活躍していたキヨッソーネが、文明開化の日本で紙幣の印刷を指導するため、お雇い外国人として来日。
偽造防止、大量印刷ができるエルへート凸版
凹版の原版から電鋳法(でんちゅうほう ※)を利用して、精巧な地紋用の凸版をつくることで、同じ印刷版を大量に作成できる印刷技術。とても細かな模様を作れるので、高品質かつ偽造防止効果が高い印刷が可能。お札のほか株券や切手などに使用された。
※型の表面に電気化学反応で金属イオンを付着させ、形を複製する技術のこと
▲エルヘート凸版(実用版)
微細加工技術、120年の進化の歴史
~紙からエレクトロニクスへ拡大
1900年
お札や株券
キヨッソーネの弟子たちを中心に
凸版印刷合資会社が設立
1959年
ラジオの回路
メサ型トランジスタ用マスクの製造に成功!
半導体の大量生産へ
微細加工技術を応用し、
半導体用フォトマスクの量産体制を整える
半導体はスマートフォンやパソコン、テレビや電化製品などに使われているんじゃ!
半導体製造に欠かせないフォトマスクとは?
私たちの日常生活になくてはならないスマートフォンなどの電子機器には、半導体と呼ばれるチップが組み込まれています。半導体の働きによって、通信やメール、動画の撮影や視聴ができるのです。フォトマスクは、半導体の製造工程で使用される、集積回路の原版です。純度の高いガラス板の表面に回路パターンが電子ビームで描かれています(下の写真)。半導体工場では、レーザー光を使って、フォトマスク上のパターンをシリコンウェハに縮小転写します。
微細加工技術が詰まった「世界一小さい印刷本」
超微細な製版加工技術を用いて作られた、縦横0.75ミリのマイクロブック『四季の草花』。2013年にギネス世界記録™に認定された「世界で最も小さい印刷本」は、印刷博物館に展示されているよ。
印刷博物館で印刷の歴史にふれよう
微細加工技術の原点である銅版印刷など、さまざまな印刷の方法・歴史にふれることができます。
目にも見えない小さな世界で社会を支える
TOPPANホールディングス株式会社 広報本部
印刷博物館 学芸員 石橋圭一さん
日ごろ目にすることが多い半面、お札を印刷物と意識することは少ないかもしれません。お札の年間製造枚数は、なんと30億枚ともいわれます。本や新聞以上に、お札は多くの人に使われている印刷物なのです。
ルーペなどを使って、お札の細かな表現を観察してみましょう。そこには偽札防止の工夫が施されています。こうした細かな文字や図を描く技術はやがて、肉眼では見えないほど細く、正確な線を引くことを可能にしていきました。
半導体製造に使われるフォトマスクは、回路をどれだけ細かく正確に描画できるかが重要です。微細化が進むことで、高性能の半導体のサイズをより小さくできるからです。印刷は目を凝らしても見えない世界を突き詰めていくことで、社会を支えているのです。
1枚のお札に隠された文字をいくつ見つけられるかな?