みなさんにニュースを届けるため、新聞を日々作る新聞社。でも新聞作り以外の仕事もしています。140年以上続く朝日新聞社に聞きました。
- 新聞社の仕事
- 取材する仕事
- 情報を扱う仕事
新聞作りだけじゃなく、いろんなことに挑戦しているよ。
「ともに考え、ともにつくるメディアへ」が、朝日新聞社の目標です。 いろんな考えを共有しながら、社会課題の解決策を探るため、ウェブサイトやイベント運営を通して、議論や交流の場を作ることに力を入れています。
新聞発行
必要なニュースを、どうわかりやすく伝えるか——。知恵を出し合いながら新聞の紙面を作っている編集局フロア。新型コロナ対策で、人員を絞って仕事をしています。
*新聞がおうちに届くまでの流れについては、「朝日新聞サービスアンカー」をご覧ください。
ウェブメディア
ニュースサイト「朝日新聞デジタル」のほかに、テーマごとにウェブサイトを運営しています。犬や猫が幸せに暮らすための情報を届けるサイト「sippo(シッポ)」や、教育サイト「EduA(エデュア)」などがあります。
展覧会・オンラインイベント
全国の博物館や美術館で展覧会の企画・開催もしています。一つのテーマについて記者が当事者や専門家と語り合う「記者サロン」など、オンラインイベントの配信にも力を入れています。
高校野球、吹奏楽、将棋などの大会運営
スポーツや文化の振興にも取り組んでいます。「夏の甲子園」で知られる全国高校野球選手権大会は100年以上前から開催しています。そのほか、吹奏楽や合唱のコンクール、囲碁・将棋のタイトル戦である「名人戦」、マンガ文化に大きな足跡を残した手塚治虫の業績を記念する「手塚治虫文化賞」などを主催しています。
AI開発
▲ みつけーた
▲ おーとりぃ
経済とスポーツ記事の一部を、人工知能を使った「AI記者」が書いています。「みつけーた」は発表資料を読み込み、商品紹介記事を書くなどします。「おーとりぃ」は高校野球の試合記録から経過や勝敗の短い記事を書きます。
新規事業の開発
新しいビジネスを始めるための部署「メディアラボ」は、主に社員から集めたアイデアをもとに、放課後の遊びに使える「放課後たのしーと」や、クラウドファンディングサイト「A-port」などの新しい事業を立ち上げています。
写真や動画の活用
朝日新聞には、戦前からの取材で撮った貴重な写真がたくさんあります。「朝日新聞フォトアーカイブ」では、所蔵写真から最新のニュース写真・動画まで購入でき、教科書やテレビでも写真や動画が使われています。
いろんな仕事があって、驚いたケモ!
中山由美記者の
南極取材記
朝日新聞社の記者は、取材のために国内外のいろんな所に行きます。東京社会部の中山由美記者は、南極や北極で取材を重ねてきた「極地記者」。3回目の南極観測隊参加を終えて帰国後、取材記を寄せてくれました(写真も)。
「帰れない」15カ月 コロナなき昭和基地
「新型コロナウイルスのない地球上唯一の大陸」、私たち61次観測隊が越冬していた南極はそういわれていました。出発は2019年11月、世界中にコロナが広がったのはその後です。昭和基地は日本から1万4千キロ、観測隊は年に1往復する観測船で昭和基地へ行きます。冬は海氷が厚くて近寄れず、空港もなく、帰ることも来ることもできません。21年2月に帰国して初めてコロナのある世界に入り、驚きの毎日でした。
▲1カ月半続いた極夜は7月半ばに終わり、太陽がかえってきた。8月1日は日の出が午前10時、日没は午後3時。太陽は北の空の低い位置で水平線を転がるように動いた(30分おきに撮影した写真を合成)=2020年8月1日、南極・昭和基地
太古閉じ込めたマイナス60度の世界
南極観測は朝日新聞が研究者に呼びかけたのをきっかけに始まりました。1957年から気象、オーロラ、大気、雪や氷、生物、地学などさまざまな観測を続け、オゾンホールも発見しました。大陸の内陸では深さ約3千メートル、72万年前までの氷を掘り出し、当時から現在までに温度や二酸化炭素がどう変化したかを調べました。
私が初めて同行したのは45次越冬隊で、氷を掘る現場・ドームふじ基地へ行きました。昭和基地から千キロ、雪上車で1カ月かかります。気温マイナス60度、撮影する指が動かなくなるほどの寒さです。51次隊ではセールロンダーネ山地で1カ月半のテント生活をし、隕石を探しながら取材。61次越冬隊でも大陸内陸へ遠征しました。長期に基地を離れる時は、原稿や写真はアンテナをたてて衛星通信で送ります。昭和基地ではインターネットが使えるのでツイッターや、日本と衛星回線でつないだ生中継、テレビ番組でも報道しました。
▲ 夏はアデリーペンギンの子育てシーズン。親鳥のおなかの下で2羽のひなが寄り添っていた=2021年1月5日、南極・日の出岬
生活のため記者以外の役割も仲間の大切さ実感
越冬隊は約30人、研究者だけでなく電気やエンジン、車、通信、調理などのプロもいます。除雪や荷物運び、ゴミ処理、掃除……生活のために皆でやらなくてはいけない仕事はいっぱいです。私も取材だけしているわけにいかないのは、普通の現場と大きく違います。事故やけがは迷惑をかけることになるので、車や機械を使う時は気をつけます。雪や氷の世界でペンギンやアザラシ、南極の自然はいくら撮影しても足りないほど魅力的です。でも吹雪になれば危険、氷の上もどこに割れ目がひそんでいるかわかりません。安全で健康でいてこそ仕事ができます。皆で力を合わせる中で観測隊のチームワークも生まれます。厳しい環境の中で互いを思いやり、助けてもらったり助けたり、信頼できる楽しい仲間であることが何よりも大切だと実感しました。
▲ 中山由美記者。「南極での貴重な体験を多くの人に届けるのが、私たちの役目だと思っています」
▲ みずほ基地へ向けての遠征中、雪上車の上に広がった大きなオーロラ=2020年10月8日午前0時34分、南極大陸・内陸