広大な海で生活するクジラの数はどうやって数えているのか、また数えてからどうなるのかや、そこから何がわかるのかを、日本鯨類研究所に教えてもらったよ。
- クジラに関わる仕事
- 地球環境を守る仕事
- データサイエンティストの仕事
広い海の中にクジラはどれくらいいるか、クジラの数を算出する(資源量推定と言います)ことで、クジラ資源を守れます。
クジラはどうやって数えているの?
クジラたちは、とても広い海で生活しています。クジラたちが増えているのか減っているのかを知ることは、大切な課題です。そんなクジラたちの数は、さまざまなデータからこんな風に算出されています。
調査員が双眼鏡を使って、自分の目でクジラを探しているんだな。
調査範囲へ調査船で出かけ、調査員が自分の目で確認する
まず、さまざまなクジラが生息する海域の中から、調査する調査海域Aを選びます。そして、事前に決めた航路を調査船で移動しながら、調査員が船の上から双眼鏡を使って自分の目でクジラを探し、さまざまな情報を集めていきます。
調査員が発見した数をもとに生息数を推定する
下の例題で見てみるよ!
▲航路の左右の、調査員から見えた距離
まず、航路から調査員が見えた所までの距離を計測し、航路の長さと掛けて実際に調査できた範囲B を出します。
▲実際に調査できた範囲B
Aの面積をBで割って、Bが全体の何%にあたるかを割り出します。
1と2で見た例題では、Bは調査海域全体の20%の範囲で、そこには100頭のクジラがいたことになります。そうすると、100%の範囲にあたるAには何頭いるでしょう?
クジラの生息海域は広範囲なので、調査は数年にわたり何度も行われます。その数年分の調査結果を合計すれば、地球全体のクジラの数がわかります!
なぜクジラを数えるの?
クジラを数え、海の中に何頭いるか知る(資源量推定)ことは、クジラを利用する私たち日本人にとって、とても重要です。クジラは繁殖し、数を増やしていく生き物です。増える数より捕る数が少なければ、クジラ全体の数に影響はありません。クジラ全体の数(クジラの資源量)を守りながら利用していくことが、これからの捕鯨に求められています。 また、クジラは海の食物連鎖の高位にいます。クジラが増えすぎたり私たちが捕りすぎたりして数が不安定になれば、クジラのエサとなる魚やその他の生物の数も不安定となり、海の生態系はバランスを崩すかもしれません。
クジラの数を調べることやクジラの体を調査することは、クジラをずっと利用するために必要なだけでなく、海の生態系のバランスを見守るためにも重要なことなのです。
クジラは食物連鎖の高位にいる!
クジラの数とその変動を調べる仕事です
一般財団法人 日本鯨類研究所 研究者 袴田高志さん
私の仕事は、クジラの生息数を推定し、クジラの数が年々どう変動しているかの予測に使っています。道具として、ある年の数と翌年の数の関係式(資源動態モデルといいます)を使います。こうしたモデルによる予測結果は、クジラ資源を保護すべきか、持続的に捕鯨できるかなどのクジラ資源の管理の判断材料にも使えます。
将来こうした仕事をするには、モデルを作るための数学や統計学の知識と、クジラについての知識があると良いです。学生のうちに勉強するのが望ましいですが、仕事をしながら勉強することも可能です。モデルを完成させるには現実に近づけるためにいろいろと試行錯誤があり、根気強さが必要ですが、完成時は充実感があり大変やりがいがある仕事です。
小学校の算数で習う簡単な計算式で、いろんなことがわかるようになります。
このように式を使って物事を考えることを「数学」と言うんだよ。