

ムン・キュウシクさん
日産自動車 グローバルデザイン本部アシスタントエクステリアデザインマネージャー
自由な発想で「よりよい車」を
車の外装や内装をデザインするのが、カーデザイナーの仕事です。だれにどのような車を買ってもらいたいかを決めたら、機能や安全性も考えながらアイデアをデザインに反映します。
ムンさんは外装のデザインを担当しています。「トイレの中、電車での移動中、友だちと話している時。何を見ても車のデザインにつなげられないかと考えています」
自由な発想はさまざまなものから生まれます。世の中に出ている車から浮かぶこともあれば、車以外の製品の形や素材からヒントを得ることもあります。近年は、電気自動車(EV)など環境に優しい車に注目が集まっています。ムンさんも空気抵抗をなるべく減らすなど、環境に配慮したデザインを提案しています。
デザインを紙にスケッチしたら、3Dデータやクレイ(粘土)で立体にします。どんなにかっこいいデザインを提案しても、安全基準や生産しやすさなどの条件を満たさなければ、選ばれません。
こうしたやりとりを経てパーツが作られ、試作車が完成します。安全性のチェックなどすべてをクリアしたら、お披露目です。構想から完成まで平均で約4年かかります。
- 1986年
- 韓国生まれ
- 小学校時代
- 絵を描くのが大好きだった。社会の授業の宿題で描いた韓国の地図を先生にほめられ、自信につながった
- 中学・高校時代
- 絵を描くことを仕事にしようと、慶州デザイン高校に入学。大学進学のためにとても熱心に勉強した
- 大学時代
- 韓国の中央大学・工業デザイン学科で、プロダクトデザインや空間デザインなどはば広く勉強。美術と工学が結びついた自動車デザインに魅力を感じ、カーデザイナーをめざす。自動車を専門に学ぶ学科ではなかったため、サークル活動で自動車デザインを学ぶ
- 2014年
- 日産自動車に入社。グローバルデザイン本部(神奈川県厚木市)に配属される。ヨーロッパやアメリカ、中国などでも売られている電気自動車(EV)「アリア」の内装などを担当する
- 2019年
- 外装をデザインする部署に異動。EV新型「リーフ」の外装を担当
手がけたデザインが街を走る喜び
自分がデザインに関わった車が実際に街を走っているのを見た時に大きなやりがいとほこりを感じます」とムンさん。内装を担当したEV「アリア」を初めて道路で見かけたときの感動は今でも忘れられないといいます。
量産モデルとして初めて外装を担当したEV「リーフ」が今年10月、国内で発売されました。「この車を街で見かける日がとても待ち遠しくて、ワクワクしています。新しい時代に合わせて絶えず成長し続けるデザイナーでいられるように、新しい自動車の形を提案していきたいです」
思い出のしごと
EV「アリア」のインテリアデザインを担当しました。日本の伝統工芸からヒントを得た木工細工のような幾何学模様が使われています。心が落ち着く和の空間に仕上げた自信作です。
初めてデザインリーダーを務めたコンセプトカーも印象に残っています。自動車メーカーが今後の技術やデザインの方向性を示すために展示用に作る車ですが、2台の車がモビリティショーで発表され、好評でした。
なるためには?
美術や工学系の大学や専門学校で、デザインやデッサンの基礎を学ぶ人が多いようです。「カーデザイン学科」や「カーデザインコース」が設置されている学校もあります。
スケッチの技術も大切ですが、それ以上に観察力と想像力が重要だと思います。ひらめきやアイデアは突然生まれるわけではないので、ふだんからさまざまなものをよく見る習慣を持つとよいと思います。
必要な道具は?
一番大切なのはシンプルですが、ペンと紙です。ここからデザインが始まります。何枚も描くのであっという間にインクと紙がなくなります。タブレット端末や3Dソフトウェアも必要です。

2025.11.3付 朝日小学生新聞
構成・浴野朝香
毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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