テレビの報道局 のしごと

2025.05.31 紹介します○○のしごと
TBSテレビ報道局の山﨑直史さん
「視聴者にとって大事なニュースは何かや、事実かどうかを見定めて放送する」ことを心がけていると話す山﨑直史さん=2025年2月、東京都港区(右下の画像は、「巨大蛇行剣と謎の4世紀」に登場する蛇行剣。作品は全国6都市で開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2025」で上映されました©TBS)
TBSテレビ報道局の山﨑直史さん

山﨑直史さん

TBSテレビ(東京都港区) 報道局

世の中の「今」 映像で伝える

世の中で起こっていることや社会の問題などを取材し、映像でわかりやすく伝えるのがテレビの報道局で働く人の仕事です。山﨑さんはTBSテレビの報道局に所属。事件や災害現場を取材する記者を10年ほど経験した後、「Nスタ」や「news23」内のVTRをつくるディレクターになりました。番組で取り上げるニュースを決める編集長なども務めてきました。

2022年からは「報道特集」のディレクターとして、好きな歴史の特集をつくるように。22年に奈良市の富雄丸山古墳で見つかった、刃がうねるように曲がった蛇行剣もその一つです。古代東アジアで最長の237センチと巨大で、史料が少ない4世紀につくられたとされています。山﨑さんは、研究者がかつての姿に近づけていく過程を1年以上、取材しました。

取材をしても何も発見がない日もありましたが、「砂を一つぶずつていねいに取るなどの地道な作業をへて、歴史的な発見は生まれる」と感じたそう。2025年3月には、未公開映像などを加えたドキュメンタリー映画「巨大蛇行剣と謎の4世紀」も公開しました。「国宝になるかもしれない蛇行剣を長期間撮影した映像もまた、文化的に貴重なものになるのでは」と期待します。

あゆみ

1979年
神奈川県横浜市生まれ
小学校時代
歴史が好きで、3年生のころからNHKの大河ドラマを見ていました。家族旅行では歴史にゆかりのある場所へ連れていってもらっていました
中学・高校時代
司馬遼太郎さんや池波正太郎さんの歴史小説を読んだり、歴史にまつわるドキュメンタリーや映画を見たりするのが好きでした
大学時代
早稲田大学法学部へ進学。塾のアルバイトで歴史を教える日々を送る中で、「歴史的な瞬間に立ち会えるような仕事をしたい」と思い、報道の仕事につきたいと考えるようになりました
2004年~現在
TBSテレビに入社。警視庁捜査1課や東京地方検察庁特別捜査部などを取材する「事件記者」を10年ほど担当。2011年の東日本大震災など災害現場も取材しました。報道番組のディレクターやプロデューサーなどをへて、いまは世界のニュースを伝える報道局外信部に所属しています
やりがいや苦労

他のメディアがやらないことを

担当した番組や特集について視聴者の反応をSNSでチェックし、はげみにしている山﨑さん。民間放送で文化財や歴史に関する企画が減ってきていると感じる中、「蛇行剣の特集は見てもらえるのか?」と不安もありましたが、報道特集で放送した動画はユーチューブで850万回以上再生されるなど反響がありました。「考古学への理解が広がったり、歴史が好きになったりするきっかけになれたらうれしい」といいます。

「多くのメディアにうもれないためにも、他がやっていないようなことに挑戦する。そんな独自性を追求し続けたいです」

必要な道具は?

取材のスケジュールやメモなどを書きこむ手帳です。「モレスキン」というブランドの1日1ページの手帳を、毎年買いかえて、使っています。

TBSテレビ報道局の山﨑直史さんが仕事で「必要な道具」だという手帳

思い出のしごと

選挙の開票日に放送する特別番組「選挙の日2021」で、チーフプロデューサーを務めたことです。全国のTBS系列のテレビ局員と連絡をとり合ったり、次々に入ってくる情報を処理する技術者や、グラフィックをつくる人たちの力も借りたりして、たくさんの仲間と一緒に番組をつくる喜びを感じました。少しでも自分たちが伝える情報を見てもらえるよう、「みんなで考えよう」という雰囲気を取り入れ、知恵をしぼりました。

似ているしごと

会社によってもちがうかもしれませんが、簡単にいうと、ディレクターは実際に取材をしたりVTRをつくったりと、番組の「中身」をつくる人。プロデューサーは番組の立ち上げや、制作スケジュール、スタッフ・出演者の調整などをする「まとめ役」です。プロデューサーといってもいろいろなパターンがあります。ディレクターを補佐する人もいれば、中身をつくるところから一線引いて、調整役に徹するような人もいます。

2025.3.24付 朝日小学生新聞
構成・佐藤美咲

毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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