

廣瀬享平さん
東京都スポーツ文化事業団デフリンピック準備運営本部みんなが一緒に楽しめる大会に
2025年11月、東京都などで、耳がきこえない・きこえにくい選手たちによるデフスポーツの国際大会「東京2025デフリンピック」が開かれます。廣瀬さんは、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)にできる予定の「デフリンピックスクエア」の準備をしています。大会の運営拠点や、世界から訪れる選手の滞在場所などに使われる施設です。
デフリンピックスクエアの特徴は、選手たちだけではなく「だれでも楽しめる場」になることです。手話言語やデフスポーツについて知るイベントなどを、大会期間中に開きます。音声を文字に変えるディスプレーなど、耳がきこえない人(ろう者)にも使いやすいコミュニケーション技術も体験できます。
学生時代からバスケットボールや社交ダンスに打ちこみ、スポーツや体を動かすことが大好きだという廣瀬さん。「選手の思いや、どんな情報があればプレーしやすいかを考えるとき、自分が競技をした経験が役立っています」といいます。
デフリンピックでは、選手や関係者と手話言語でコミュニケーションをとることも。社交ダンスで知り合った、耳のきこえない友人に、手話言語を教えてもらうこともあります。
- 1989年
- 東京都立川市生まれ
- 小学校時代
- 外で遊ぶのが大好きな子どもでした。まんが「スラムダンク」をきっかけにバスケットボールを始め、高校生まで続けました
- 中学校時代
- 地元の公立中学に進学。バスケットボールに加え、祖母が教えていた社交ダンスも始めました
- 高校時代
- 都立高校に進学。バスケットボール部でキャプテンを務めました。チームで一丸となって、大きな目標に向かう楽しさややりがいを知りました
- 現在
- 公務員試験を受け、生まれ育った東京都の役に立ちたいと東京都庁に入りました。税金をあつかう部署やデジタルサービス局などを担当。2018年からは東京オリンピックの組織委員会に出向(他の会社や組織で一時的に働くこと)しました。24年から、デフリンピックに向けて東京都スポーツ文化事業団に出向。仕事以外では社交ダンスを続け、全国大会にも出ています

ろう者の表現・文化知って
デフリンピックでは、世界共通の「国際手話」を使う場面もあります。去年、各国の選手団に大会会場の案内をしたとき、手話言語通訳はいましたが、自分でも国際手話を練習しました。「伝えたい言葉が通じたときは、とてもうれしかったです」
「きこえる、きこえないにかかわらず、みんなが一緒に楽しめる大会を目指しています。不自由がないようにするだけではなく、きこえる人にとっては、ろう者の方の表現や文化を知るきっかけになってほしい。そして、選手たちが最高のパフォーマンスを出せるよう、支えていきたいです」
向いている人は?
人と話すことが好きで、みんなで力を合わせて目標を達成することにやりがいを感じる人。大きな大会には、さまざまな立場から、たくさんの人たちが関わります。意見をかわしながら、準備を進めていく必要があります。
高校生まで続けたバスケットボールでのチームプレーや、現在も続けている社交ダンスの社会人団体で世代や職業がちがう人たちとも親しくなる経験が、仕事にも生きていると感じます。
必要な道具は?
手話言語はろう者の方から教わるだけでなく、本も使い覚えています。あいさつや自己紹介など身近な手話言語を、イラストに加えて、2次元コードからアクセスする動画で学べて分かりやすいです。〈画像は、「動画とイラストでよくわかる!ユーキャンのはじめて手話会話(米内山明宏・小松加代/監修、自由国民社)」〉

もっと知るには?
「アイ・コンタクト もう1つのなでしこジャパン ろう者女子サッカー」(2010年)
2009年に台湾で開かれたデフリンピックに初出場した、ろう者女子サッカーの日本代表チームを追ったスポーツドキュメンタリー映画です。Amazon Prime Videoで配信中です。 ©2010「アイ・コンタクト」製作委員会

2025.3.3付 朝日小学生新聞
構成・奥苑貴世
毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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