は虫類のお医者さん のしごと

2025.02.10 紹介します○○のしごと

は虫類のお医者さんであるレプタイルクリニックの小家山仁院長
小家山さんとヘルマンリクガメ=2024年11月、東京都文京区のレプタイルクリニック
は虫類のお医者さんであるレプタイルクリニックの小家山仁院長

小家山(こいえやま)仁さん

レプタイルクリニック(東京都文京区)院長

飼育環境の大切さ伝え、「みる」

2025年の干支はヘビ。小家山さんはヘビやカメ、トカゲなどは虫類専門の、全国でもめずらしい動物病院を開いています。

は虫類と犬やネコなどは、病気になる理由も大きくちがうと小家山さんは考えます。

犬やネコは人間と同じ、自分で体温を保とうとする恒温動物で、世界のあらゆる気候に体をあわせます。一方、は虫類はくらす地域ごとの気候にあわせて進化してきた生き物。外部の温度に影響を受けて体温が変わる外温動物です。「種にあった環境で飼えばほとんど病気になりませんが、外れると病気になってしまうのです」

そこで小家山さんが大切にするのが飼育環境の指導です。

患畜(病気やけがのは虫類)がきたら、まず飼い主にケージや水槽の広さや温度、えさの頻度などを聞き、その後病状を話してもらいます。必要があれば検査をして、原因を見つけたら、治療とあわせて飼育のアドバイスをします。たくさん話をするので、初めての治療には30分ほどかけます。

開院したころは、は虫類の医学書は少なく、インターネットもありませんでした。たくさん論文を読み、人やほかの生き物の治療法も参考にして、は虫類のみかたをあみ出しました。

あゆみ

1971年
東京都生まれ
小学校時代
当時から動物が好きで、家では常に鳥、犬など生き物を飼っていました。将来は博物館に勤めるか、動物園の飼育員になりたいと思っていました
中学校時代
勉強をまったくせず、成績は学年で下から2~3番目でした。このころからカメが好きになり飼い始めました
高校時代
駒場学園高校装蹄畜産科(現在は廃止)に進学。実験動物の育て方や管理が学べるめずらしい学科でした。一般教科は苦手だったけれど、動物の授業は楽しく、熱心に取り組んでいると獣医学科に進む推薦をもらえました
大学時代
日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)獣医学科に進学。カメの病気をみてくれる病院がないと気づき、は虫類の獣医師をめざすと決めました
現在
獣医師になり、動物病院の勤務医をへて、1998年に「レプタイルクリニック」を開院しました
やりがいや苦労

ペットから広がる世界がある

話せない生き物の病状を知るのは簡単ではありません。ふれた時の反応や目力などから情報を集めます。「どんなにおこっている子でも、目を見ると助けてやらなきゃと思いますね」

小家山さんは、は虫類たちをきっかけに世界を広げてほしいといいます。野生ではどこにくらし何を食べるのか、さらに調べると現地の環境問題などを知るかもしれません。ペットは繁殖をしない限りそこで命がとだえます。「でもいろいろ学べればその子が生きていたあかしになり、命がつなげると思う。は虫類という『窓』からできるだけ広い景色を見てほしい」

なるためには?

獣医師になるには、獣医師国家試験に合格することが必要です。受験をするためには6年制の獣医学系の大学に進学します。

日本でペットとして飼われるは虫類は数百種。小家山さんのようには虫類を治療し、野生でのくらしをふまえた飼育アドバイスをするにはたくさんの知識が必要です。「そこまでできて初めて良い治療ができ、その子にある程度幸せなくらしをさせてあげられると思っています」

必要な道具は?

診察はほとんど素手で行います。相手は小さく、犬やネコほどいろいろな検査もできません。「さわった時の抵抗感、力強さなど情報を少しでも多く得たいのです」

は虫類のお医者さんであるレプタイルクリニックの小家山仁院長が、診察で大切だという手

思い出のしごと

鼻をケージにこすり続けてきずができてしまったヘビが来て、原因がわからず病院で預かりました。そのヘビは野生では高地にくらすので、種にあった温度にしました。するとその夜から何事もなかったかのように落ち着きました。もとのケージ内の設定温度が高すぎたのです。温度一つでも、まちがうとけがにつながります。薬をぬり続けてもこのけがは治らなかったでしょう。そのくらい、は虫類にとって飼育環境は大事なのです。

2025.1.6付 朝日小学生新聞
構成・小貫友里

毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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