紙の箔押し職人 のしごと

2023.01.13 紹介します○○のしごと

株式会社マルアイの紙の箔押し職人、望月隼人さんの画像
好きなことを仕事にできて毎日が幸せだという望月隼人さん=マルアイ提供
株式会社マルアイの紙の箔押し職人、望月隼人さんの画像

望月隼人さん

株式会社マルアイ(山梨県市川三郷町)

ミリ単位で調整 紙に光る技

望月さんは、紙製品を製造、販売する会社「マルアイ」で、封筒やお年玉袋などの紙に文字や模様を箔(はく)押しする仕事をしています。

箔押しとは、金箔のように金属をうすくのばした箔を紙などに写し取る印刷加工のことです。文字や模様がはんこのように浮き出した金属の板を熱して箔の上にのせ、紙に押しつけると、写し取られた箔が紙にはり付きます。

箔押し自体は機械がやってくれますが、押すべき位置と押された位置がほんの少しだけずれることがあります。押すべき位置に押されるように金属の板の形を細かく調整するのは、すべて手作業です。

ずれてしまうのは、紙がその日の温度や湿度によってのびちぢみするためです。紙によって厚みや材質が異なることも原因です。そのため、人の手で数ミリ単位で板を調整する必要があるのです。「先輩のやり方を参考に見よう見まねで覚えましたが、調整は何年やっても難しいです」

箔の付き方にむらがあったり、へこみ具合がいびつだったりすることもあるため、製品はすべて目で見て、さわって確認します。

機械のメンテナンスも大切な仕事です。動き方や音に異常がないか、常に気を配っています。

株式会社マルアイの紙の箔押し職人、望月隼人さんのおしごとを紹介した漫画

あゆみ

小学生のころから細かい手作業が得意で、父親が買ってきてくれたプラモデルを少しでもかっこよく仕上げるのが楽しみでした。

就職活動で、現在勤務しているマルアイが印刷の工程を実際に見せてくれて、印刷の仕事をやってみたいと考えました。機械を通って出てきた紙にお菓子の箱の展開図がきれいに印刷されていて、とても感動したからです。入社後、箔押しの担当者が退職をむかえ、後継者になることを希望しました。プラモデル作りにも通じる数ミリ単位の細かい作業に充実感を覚え、一生続けたい仕事になりました。

1985年
山梨県生まれ
2001年
山梨県立中央高校に進学。アルバイトとプラモデル作り、バレーボール部の活動に熱中した
2004年
山梨県立産業技術短期大学校に進学。レーザー工学のゼミに所属し、早朝から夜中まで回路作りと実験に明け暮れた
2006年
マルアイに入社。入社1年後に箔押しの担当になる
やりがいや苦労

品質第一 完ぺきな商品を

一度、大変なミスをしたことがありました。文字の一部が箔押しされていないまま出荷してしまったお年玉袋が、店頭に並んだのです。40万枚のうちの10枚でしたが、お客さんにも会社にもめいわくをかける結果になってしまいました。「確認不足が原因です。いろいろな仕事を任されるようになって、いい気になっていたのかもしれません」

この失敗から、品質を一番に考え、お客さんに完ぺきな商品を届けることを誓いました。そんな思いで仕上げた商品が店頭に並び、その商品を買っている人を見かける時が何よりうれしいといいます。

クローズアップ
株式会社マルアイの紙の箔押し職人、望月隼人さんがしごとで使う道具の革手袋、カッターとハサミの画像
130度ぐらいの熱い金属の板を調整するときに使う革手袋(右)。左手は油で真っ黒です。箔押しの調整にカッターとハサミも欠かせません=マルアイ提供

2022.11.28付 朝日小学生新聞
構成・浴野朝香
イラスト・たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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