さし絵画家 のしごと

2022.06.08 紹介します○○のしごと

さし絵画家の佐竹美保さん
画材や資料などに囲まれた仕事部屋で働く佐竹美保さん=2021年10月、東京都目黒区
さし絵画家の佐竹美保さん

佐竹美保さん

フリーランス

物語を2倍楽しめる絵を

佐竹さんは、「魔女の宅急便」や「新装版ハリー・ポッター」(どちらもシリーズ)などファンタジー作品のさし絵で特に知られています。朝日小学生新聞では、2022年1月~3月に連載小説「竜が呼んだ娘 語り部の壺」のさし絵を手がけました。

仕事は出版社などの編集者にたのまれます。絵をかく場所は自宅の一室。自然光で絵を見たいというこだわりから電気はつけず、朝9時から日が暮れるまで絵をかいています。画材は絵の具やマーカー、インク、ボールペンなどさまざまです。

物語に絵をつける時、原稿を3回は読みます。「最初は読者として、次は『どこに絵を入れようか』と考えて読む。絵にしてから、設定とちがわないか確かめるためにまた読みます」

さし絵は「読書を助ける役割がある」と考えます。絵にする場面を選ぶ際、もり上がったり感動したりする場面はあえてさけます。「本は読者のもの。読者の想像する楽しみをうばいたくないのです」

「語り部の壺」では竜がたくさん登場します。竜の絵で参考にするのは、トカゲや恐竜などの骨格です。自宅には動物の骨格の図鑑を多くそろえるほか、恐竜などにかんする特別展が博物館であれば足を運びます。

さし絵画家の佐竹美保さん

あゆみ

小学生のころに熱中していたのは、化石ほり。近所の山で貝の化石を探し、空き缶に集めていました。

中学、高校時代はイギリスのロック音楽のとりこに。絵に興味を持つ最初のきっかけは、ファンタジー風の絵があしらわれたレコードのジャケット(表紙)でした。また、アメリカのSF小説『10月はたそがれの国』の細かくかきこまれたさし絵を見て、「本につける絵をかく仕事がしたい」と考えました。

高校を卒業した翌年に東京へ。ファンタジーやSF作品のさし絵画家となりました。

1957年
富山県生まれ
1975年
県立高岡工芸高校デザイン科(当時)を卒業。翌年、東京に出る
2000年
「魔女の宅急便」シリーズのさし絵をかき始める
2001年
「守り人」シリーズ(「旅人」シリーズ)のさし絵を手がける
2012年
朝小の連載小説「竜が呼んだ娘」のさし絵を担当。以降、シリーズの絵を手がける
やりがいや苦労

「枠」の中で自分の世界を表現

20代から30代のころは、出版社に絵を持ちこみ、仕事を得ていました。忘れられない仕事の一つが、今から25年ほど前に出版された「メニム一家の物語」シリーズ。生きている人形の一家の物語です。「ボタンでできた目で、悲しんでいる顔や喜んでいる顔がかけたんです」。自信につながる作品となりました。

さし絵をかく楽しさは「本の寸法など、出てはいけない『枠』の中でいかに自分の世界を表現できるかにある」と感じています。これからも、「絵で物語を2倍楽しんでもらえるよう、コツコツとかき続けていきます」。

クローズアップ
創作が大好きなさし絵画家の佐竹美保さんは、「コロナ禍の楽しみに」と、家であまった衣服やアクセサリーで竜をつくりました
創作が大好きな佐竹さんは、「コロナ禍の楽しみに」と、家であまった衣服やアクセサリーで竜をつくりました

2022.1.17付 朝日小学生新聞
構成:中塚慧
イラスト:たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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