ランドセル職人 のしごと

2022.04.06 紹介します○○のしごと

ランドセル職人の塚原奈保さん
「お気に入りのランドセルで、毎日楽しく通ってほしい」と話す塚原奈保さん=2021年8月31日、東京都足立区
土屋鞄製造所のランドセル職人、塚原奈保さん

塚原奈保さん

株式会社土屋鞄製造所(東京都足立区)

6年間形くずれしない強さに

塚原さんは、かばんメーカー「土屋鞄製造所」の工房でランドセルを作っています。丈夫さやシンプルなデザインが人気を集めているランドセルです。職人が150以上のパーツを300をこえる手作業で、約1か月かけて仕上げています。

工房の職人は約80人。一人で全部作るのではなく、手分けして製作します。塚原さんは、ランドセルのふたを手がける「カブセ班」です。他にも、教科書やノートを入れる箱の部分を担当する「前胴班」、肩ベルトを作る「連尺班」などがあります。

ランドセル作りはまず、革をパーツの形にカットするところから始まります。それを各班が受け取り、革の裏側に樹脂でできたかたい芯をはります。芯をたくさん使って丈夫に作り、「小学生が6年間、力いっぱい使っても形くずれしない強さにしています」と塚原さん。

芯をのりづけした上から、革専用ミシンでぬったら、パーツの完成です。ランドセルの形に組み立て、分厚い革をまとめてぬって仕上げます。きびしい検品に合格したランドセルだけが、全国へ届けられます。

「街で、実際に背負ってくれている小学生を見かけると、とてもうれしいです」

土屋鞄製造所のランドセル制作の流れ

あゆみ

小学校のころは絵をかくのが好きで、ファッション誌に出てくるおしゃれな洋服をかいて遊んでいました。高校で進路を考えた時、あこがれのアパレル業界で働きたいと思い、短期大学を出てアパレル会社に就職しました。しかし、販売の仕事で新商品を手にとる度に、「やっぱり作る仕事がしたい」と思うようになりました。自分は何を作りたいんだろうと考えていたころ、革靴を買ったことがきっかけで、時とともに変化する革の魅力にみせられるようになりました。革製品を作る職人を目指しました。

1991年
東京都生まれ
2007年
都内の私立高校に進学
2010年
青山学院女子短期大学家政学科に進学
2012年
短期大学を卒業後、アパレル会社で販売の仕事を1年経験する
2013年
文化服装学院ファッション工芸専門課程ファッショングッズ基礎科(当時)へ進学
2016年
土屋鞄製造所に入社
やりがいや苦労

0.5ミリの差に気を付けて作業

塚原さんが担当する「カブセ」は、ランドセル作りの始まりとなる重要なパーツです。「ほんの少しのずれが、ランドセル全体の形のゆがみにつながってしまうこともあるため、0・5ミリの差に気を付けて作業しています」

技術を日々みがいて、できることが増えていくのはとても楽しいです。職人にもそれぞれ得意と不得意があるので、苦手なことは得意な職人に作業のコツを教えてもらい、スピードアップも考えます。ベテラン職人の仕事を見て「次はああいう仕事ができるようになりたいな」と目標を立てています。

クローズアップ
土屋鞄製造所のランドセル職人、塚原奈保さんがランドセルのふたを美しく仕上げるために使う道具。定規、へら、目打ち、はさみ、失敗を書き留めるノート
カブセを美しく仕上げるのに欠かせない道具。左から定規、へら、目打ち、はさみ。失敗を書きとめるノートはよく見返します

2021.9.27付 朝日小学生新聞
構成:戸井田紗耶香
イラスト:たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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