プロの囲碁棋士 のしごと

2022.03.01 紹介します○○のしごと

プロの囲碁棋士、宮崎龍太郎さん
「囲碁は先を読むゲームで、とても奥深いです」と話す宮崎龍太郎さん=東京都千代田区の日本棋院
プロの囲碁棋士、宮崎龍太郎さん

宮崎龍太郎さん

日本棋院(東京都千代田区)常務理事 七段

先を読み、最良の手を考える

囲碁は簡単に言うと「陣取りゲーム」です。縦と横19本ずつ線が引かれた碁盤上の、縦の線と横の線が交わる場所に、白と黒の碁石を交互に並べていきます。自分の碁石で相手の碁石を囲むと、自分の陣地になります。最終的に相手よりも多くの陣地を取った方の勝ちです。

日本の囲碁を代表する団体、日本棋院でプロになる基本的な条件は、まず14歳までにプロ棋士養成機関に合格する必要があります。この機関で研修を積み、上位の人だけがプロ試験を受けられます。プロ試験は18歳までの合格が求められます。日本棋院に所属するプロ棋士は約350人です。

プロになってからも厳しい実力の世界が待っています。三大タイトルの棋聖戦や名人戦、本因坊戦といった対局などで収入を得ますが、対局だけで生活できる人は全体の上位1割程度といいます。

プロの対局での一人の持ち時間は、3時間以上が多いです。長時間にわたるため、集中力や記憶力、体力が求められます。相手の手を予想し、最良の手を考えるという先を読む力も大切です。

多くのプロ棋士は対局以外に囲碁教室の先生やテレビの解説、イベント出演などをして収入を得ています。

研究や対局などプロの囲碁棋士の主な仕事を描いた4コマ漫画

あゆみ

囲碁を始めたのは5歳の時です。「プロの囲碁棋士になってほしい」。そう願う父親がルールなどを教えてくれました。ただ、父親の指導はかなり厳しく、泣きながら練習した日もあったそうです。小学生から囲碁教室に通い始め、囲碁の奥深さを感じるようになりました。小学5年生の時に少年少女囲碁大会で優勝。決勝戦で解説をしていた趙治勲棋聖(当時)がほめてくれたことがきっかけで、プロ棋士を目指す養成機関に入りました。土日も囲碁の練習に打ちこみ、16歳でプロ棋士になりました。

1972年
福島県生まれ
1983年
小学5年生でプロの囲碁棋士を育てる院生に入る
1988年
東京都杉並区立東原中学校卒業
1990年
二段に昇段。以後順調に昇段を重ねる
2014年
七段に昇段
2016年
通算300勝達成
2018年
日本棋院常務理事に就任
やりがいや苦労

正解がなく、道を切り開ける喜び

対局で勝つためには、日ごろの練習が欠かせません。段位が高い棋士たちが打った手を再現したり、打った碁石の形を問う問題を解いたりして、勉強します。

対局すると団体などから対局料がもらえます。段が上位の人の方が対局数が多くなり、収入が高くなります。「がんばれば上位を目指せるのがやりがいですが、勝敗で収入が決まる不安定な世界です」

それでも、囲碁には「無限の魅力」があります。「打つ手が同じになることは一度もなく正解もありません。最善の手を追い求め、道を切り開き続けることが喜びです」

クローズアップ
プロの囲碁棋士、宮崎龍太郎さんが小学5年生の時に少年少女囲碁大会で優勝したときの提供写真
小学5年生の時、少年少女囲碁大会で優勝しました。右が宮崎龍太郎さん=本人提供

2021.8.9付 朝日小学生新聞
構成:浴野朝香
イラスト:たなかさゆり

毎週月曜連載中の「紹介します 〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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