
タイプフェイスデザイナー
本やスマホの画面、看板など日常のあらゆる場所で使われている「フォント(書体=文字の形やデザインをデジタルデータ化したもの )」。タイプフェイスデザイナーは、読みやすさや雰囲気、伝えたい内容に合わせて、1つひとつのフォントをデザインする専門家だよ。写真は、作ったフォントをパソコンでチェックしているところ。一見ただの文字でも、細かい工夫がたくさんこめられているよ。(写真はいずれも東京都品川区大崎)
情報や雰囲気を伝える「フォント」を生み出すお仕事
フォントのアイデアは、「あったらいいな」と感じた文字の形や好きなデザイン、「こういうフォントが欲しい」というグラフィックデザイナーからの要望など、様々なことから生まれます。
スマホの文字のように「情報を届けたい」のか、お祭りのポスターのように「迫力や雰囲気を表現したい」のか、フォントの使い道や伝えたい雰囲気をチームで共有してプロジェクトを進めます。

テストフォントを作るときには筆で実際に書いてみることも。少しずつバランスを変えてイメージに合う文字を探っているところ
「テストフォント(試作品)」を作るときは、パソコンで形を作ることもあれば、筆で書いた字をパソコンに取り込んで形を整えることもあります。
そのあとデザインチームで、線の長さや太さ、角度、読みやすさなど、テストフォントをもとにすべての文字の形のバランスを考えながらデザインします。日本語フォントは文字数が多く、例えば、見出しや看板に使われる「ディスプレイ書体」は、ひらがな、カタカナ、漢字など合わせて約1万文字。フォントの使い道によって必要な文字数も異なります。
この段階のフォントはデザインしただけの「絵」の状態で、パソコンでは「文字」として認識されません。例えば新しい「あ」というフォントの場合、「この字は新しい『あ』です」という情報を与えることで、「文字」として使えるようになります。

フォントのイメージをチームで共有しプロジェクトを動かすのもタイプフェイスデザイナーの仕事
全てのデザインが終わったあとに、より安定して使えるように、エンジニアがチェックを入れ、情報の追加、アプリでの動作確認などを行ってから、ひとそろいのフォントを生成します。
フォントが世の中に出る前には、チームで協力してチェックをします。フォントが決められた枠からはみ出ていないか、ズレがないかなど、膨大な文字を1つずつ確認しなければならないので、とても大変な作業です。すべての確認を終えて、ようやくフォントが完成します。

西塚さんがデザインしたフォント「百千鳥(ももちどり)」で使える小鳥のイラスト。フォントの技術を活用した絵文字で、アニメーションのように動かすことができる
1つのフォントができるまでにかかる年月は、アイデア出しにかかる期間を除き、通常2年ほど。中には完成まで15年かかったフォントもあります。日本語は文字数が多く作るのは大変ですが、フォントが多彩な分、新しいデザインを考えるのはとても楽しいと言います。
フォントの世界は技術的に日々進歩しています。色のついた文字を作れる「カラーグリフ技術」や、複数の原型デザインからリアルタイムで文字の形を変えられる「バリアブルフォント」、さらにそれらを応用して作られた「アニメーションのように動く絵文字」など。まだ世の中にないフォントを作り、それが使われているのを見たときにやりがいを感じるそうです。
どうしたらタイプフェイスデザイナーになれるの?
まずは文字を観察してみましょう。身近にどういうフォントがあるのか、どうしてそのフォントが使われているのかを考えると興味が広がりやすくなります。美術系の大学や専門学校で学ぶこともできます。