空に小さな機械を飛ばしているあのひと、何してる?

2025.09.29 あのひと何してる?

ドローンパイロットがドローンを飛ばしている画像

ドローンパイロット

遠くから無線で操作できる、小型の飛行機型などの機械「ドローン」。ドローンパイロットは、コントローラーのモニターを見ながらドローンを操縦して、空中から写真や映像を撮影するよ。観光地のPRや映像制作、イベント撮影など、さまざまな場所で活躍しているんだ。CMやインターネットで何げなく目にしている写真や映像も、ドローンで撮影したものかもしれないね。(写真提供/株式会社ORSO 撮影地は佐賀県太良町)

安全に機体を飛行させ、見る人の心を動かす映像を撮影する


ドローンパイロットの仕事は、依頼主と撮影の目的や希望を話し合い、撮影する写真や映像の内容を決めるところから始まります。その後、現地で下見を行い、障害物の有無や安全に飛ばせる場所を確認します。

ドローンパイロットと補助者の画像

ドローンを飛ばすには、天候や風、障害物などの環境確認が欠かせない。飛行中は、操縦者と補助者がチームで安全を見守る(撮影地=神奈川県横浜市)

ドローンを飛ばすときは、「航空法」などの飛行に関するルールを守ることが重要です。例えば、航空法で決められた特別な場所(人が多い街の上空、空港の近く、150m以上の高い空など)や、特別な方法(夜間での飛行など)でドローンを飛ばす場合は、国土交通省への申請や届け出が必要です。飛行の計画書を作り、ルールに沿って準備を進める必要があり、ドローンパイロットの仕事の大半を占めるほど大変な工程です。専門的な知識が求められるため、この手続きができることが、プロとアマチュアの違いでもあります。


撮影当日は、ドローンやコントローラー、バッテリーなどの機材を点検し、天候や風の強さを見て、安全に飛ばせるかを判断します。そして、通行人が近づかないよう注意を払いながら、ドローンを離陸させます。撮影が終わってからも、データの整理・納品、飛行記録の作成など、仕事はたくさんあります。

ドローンの画像

撮影に使うドローンは高性能カメラ付き。広角・望遠などレンズを切り替えて、美しい構図を狙う(撮影地=栃木県那須塩原市)

飛行中は、ドローンから送られてくる写真や映像をコントローラーのモニターを見ながら操縦しますが、画面には映る範囲はごく一部です。そのため、パイロットは、画面の外にある障害物や地形をイメージしながら、ドローンの位置や高さ、進む方向を常に把握して操作します。


また、パイロットの横では補助者が機体を目視し、周囲の状況を伝えるなど、連携を図りながら飛行します。風が強い日やGPS(人工衛星の信号を使って位置を知るためのシステム)が届きにくい場所では機体が不安定になるため、より高度な操作が求められます。そうした環境でも安全に、かつ見る人の心を動かす映像が撮れるように、チームで連携して飛行します。


ドローンには風景全体を高画質で撮るのに適した機種や、スピード感ある映像を得意とする機種、狭い場所で活躍する小型の機体などいくつか種類があります。場所や内容に合わせて機体を選ぶことも、パイロットに必要な技術です。

飛行中のドローンの画像

上空から撮ることで、ふだん気づかない魅力が見えてくる。「絶景(ぜっけい)×ドローン」は、地域のPRにぴったりの組み合わせ(撮影地=千葉県銚子市「犬吠埼灯台」)

この仕事のやりがいは、見たことのない角度から地域の魅力を発信できること。撮影した写真や映像は、CMやSNS、動画配信など、さまざまな方法で多くの人に届けられます。例えば、打ち上げ花火をドローンで撮影すると、「丸(円)」ではなく「球体」に広がる様子が分かります。「自分の町にこんな景色があったなんて知らなかった」と映像を見て驚く人もいるそうです。観光地や都市部だけでなく、自然の中や小さな町での撮影も多く、ドローンによって新たな発見が生まれます。


最近では、ドローンは映像撮影以外にも活躍の場を広げています。例えば、農薬の散布や山間部への荷物の運搬などがあり、農作業の負担軽減や人手が足りない地域での物流支援などに役立っています。

どうやったらドローンパイロットになれるの?


「無人航空機操縦者技能証明」という国家資格もありますが、許可や届け出が求められなければ、必ずしも必要ではありません。まずは100g未満の小型ドローンを使って、空中で止まる「ホバリング」などの練習を重ねるのがおすすめです。位置を安定させる機能がない機体で練習することで、操作の基礎が身につきます。レースゲームなどキャラクターの視点で遊べるテレビゲームなどで、空間を立体的にイメージする力を育てるのも訓練になります。


ただし、ドローンを飛ばす周囲にぶつかりそうな人や障害物がないかなど、安全確認は必ず行ってください。公園などの広い場所であっても、ドローンの飛行が禁止されているところもあります。万が一、墜落したらほかの人に当たるかもしれない、そのことは意識しておいてください。

取材協力/株式会社ORSO・一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)

取材・文/かたおか由衣