ヘッドコーチと外国人選手の間に立って話をしているあのひと、何してる?

2023.06.30 あのひと何してる?

スポーツ通訳者(スポーツつうやくしゃ)

スポーツの世界では、実績のある選手の海外移籍が増える中で、日本で活躍する外国人選手もたくさんいるね。そこで必要とされるのがスポーツ通訳者だ。試合や練習中に監督から出る指示を説明したり、選手同士のコミュニケーションの橋渡しをするんだって。写真は、ベスト電器スタジアム(福岡市)でブラジル人選手をサポートするサッカーの通訳者だ。(写真提供/アビスパ福岡)

言葉を訳すだけじゃない。家族の日常生活もサポート


スポーツ通訳者は、外国人選手のために、監督、コーチ、日本人選手との間に立ち、試合や練習中などに通訳をするのが仕事です。試合前後のインタビューや記者会見の通訳、試合相手の情報の分析、必要な書類や新聞・雑誌記事の翻訳などもしています。

ヒーローインタビューでは、選手から専門用語が出ることも。たとえば「くさびのパスがうまく入った」と選手が話したら、「相手のディフェンダー同士の間にうまくパスが入った」などと言い換え、観客に分かりやすく伝える

それだけではありません。選手と家族は、慣れない日本での生活に不便な思いをしたり不安を抱えています。その気持ちに寄り添い、買い物をする店、病院、子どもの学校などの場所やシステムを彼らに教え、クレジットカードの申し込み書類を書くことも。安心して生活し、仕事に集中できる環境を整えることも重要な仕事です。


また、スポーツはチームプレーなので、選手同士が直接コミュニケーションを深めて信頼関係を築くことが求められます。通訳は、選手の間に入って会話が始まったらサッと引いたり、「カンサード(ポルトガル語で「疲れたね」という意味)」といった簡単な共感ワードを日本人選手に教え、選手自ら会話のきっかけを作れるように導いています。選手にはベッタリせず、かといって遠すぎず絶妙な距離感を保つことが大切なのです。


チームの1勝に賭ける監督の熱い思いを知る通訳者は、常に「勝利」につながるサポートが求められています。そのため、通訳はただ言われままを訳すだけでなく、「ディフェンスに行け」という監督の指示ひとつにも、「突っ込む勢いで」もしくは「慎重に」といったニュアンスや意図まで読み取って伝えています。指示を伝えた選手が理解をして最高のパフォーマンスで活躍している姿を見ると、一緒にプレーしているような臨場感と大きな高揚感に包まれます。

どうしたらスポーツ通訳者になれるの?


「もう少し走ってがんばろう」「この調子で続けよう」など、監督の指示に自分の言葉をプラスして、より相手の心に響く工夫をする。その積み重ねが、確かな信頼関係に

主にスポーツチームの求人に応募します。またスポーツ大会での通訳者は、通訳の派遣会社が募集をすることもあります。いずれも必要とされる言語を習得し、スポーツの知識も勉強しておきましょう。

協力/アビスパ福岡

取材・文/内藤綾子