工房とか職人に憧れます。どんな働き方をしてるの?

2023.04.28 みんなの質問

しごとについての質問

「工房とか職人に憧れます。どんなふうに働いているんでしょうか?」(11歳・女子)

嵯峨景子 (さが けいこ)さん

ライター・書評家。1979年札幌生まれ。出版メディア関連やポピュラーカルチャーを中心に取材や執筆を手がける。著書に『氷室冴子とその時代』(小鳥遊書房)や『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)、編著に『大人だって読みたい! 少女小説ガイド』(時事通信出版局)など。明治学院大学非常勤講師、また朝日カルチャーセンターでも講座を担当するなど講師業にも従事。

手間ひまかけて和菓子を作り出す職人のマンガを紹介しましょう


『であいもん』(既刊14巻)

著者:浅野りん

出版社:KADOKAWA

価格: 638円(税込)

電子書籍あり

職人とは、身につけた技術で物を作る仕事をしている人のことを指します。技術を高めて成長しようとする姿勢と、ものづくりにかける熱い情熱は、さまざまな人間ドラマを生み出します。和菓子職人と花火職人がモチーフの作品で、その世界をのぞいてみましょう。


『であいもん』の舞台は、京都にある和菓子屋・緑松。ミュージシャンを夢みて上京した青年・和(なごむ)が、実家の和菓子屋を継ぐために10年ぶりに京都に戻ったところ、店には跡継ぎ候補の小学生・一果(いつか)が居候し、看板娘として働いていたのでした。一果は10歳ながら自分の仕事に誇りをもち、家を飛び出して和菓子作りから逃げ出した和に冷たい態度を取り続けます。そんな二人が少しずつ絆を深め、親子のような関係性を築くさまと、和菓子づくりに情熱を注ぐ職人たちの姿を描く、心あたたまる物語です。


職人たちが手間ひまかけて作り出す繊細で美しい和菓子の数々と、それを買い求めるお客さんたちの幸せそうな笑顔に、思わず和菓子屋さんへ出かけたくなります。

「玉貼り三年、星掛け五年」花火職人の修業がわかる作品があります


『ギンカムロ』

著者:美奈川護

出版社:集英社

価格:660円(税込)

電子書籍あり

続いて紹介する『ギンカムロ』は、花火という美しくもはかない一瞬の輝きに心血を注ぐ、職人たちの物語です。


主人公は、花火工場の爆発事故で両親を亡くした青年・昇一。花火工場を営む祖父から電話を受けて、工場の四代目を継ぐことを望まれている昇一と、女性ながら花火職人を目指して祖父に弟子入りした絢(あや)を中心に物語は進みます。

作中でも紹介されているように、花火師の世界には「玉貼り三年、星掛け五年」という言葉があるそうです。仕込みを終えた花火玉にクラフト紙を貼る仕事(花火が均一に広がるように)を身につけるのに3年、そして花火玉のメインである星(光や色彩を出す火薬)の扱いを覚えるのに5年。夜空を彩る華やかな花火の世界は、厳しくて地味な修業に支えられているのです。


花火づくりは職人の手しごとと科学が共存する不思議な世界です。一瞬で消えるか、永遠に残るか、その二つしかないとされる花火づくりに魅了された人々の仕事ぶりには、静かながらも強い覚悟が込められています。