作業着で全身を覆い、巨大な機械を操作するあのひと、何してる?

2022.10.13 あのひと何してる?

薬の生産技術者(くすりのせいさんぎじゅつしゃ)

薬は、写真のような製薬会社の工場で作られている。薬の生産技術者は、研究開発部門がつくった医薬品のもとを、効率的に量産できるように、「有効成分を配合して飲みやすい形にする『製剤技術』グループ」「検品する『試験技術』グループ」「包装する『包装技術』グループ」に大きく分かれてるんだって。それぞれ役割の違う3つのグループが、一体となって薬の生産を支えているよ。今回は、「製剤技術」の仕事をのぞいてみよう。(写真提供/住友ファーマ株式会社)

いのちを支える薬。安定して生産できる製造法を決める


薬には、錠剤、注射剤、カプセル剤、散剤(粉薬)、坐剤(座剤)などの種類があります。たとえば、飲み薬の錠剤を作る工程は次の通りです。


1 有効成分を作る
2 1錠に入れる有効成分や添加物の量を測る
3 原料を機械で混ぜて均一にする
4 均一にした原料を型に入れてプレス機で固め、1粒の錠剤にする
5 錠剤に文字を印刷する。割れていないか、ゴミが付いていないかなどを検査する
6 検査に合格したものを包装し、最終検査をして出来上がり


製剤技術者は薬の製造方法を決めるのが仕事で、主に3~5を担当します。具体的には、原料を均一にするために何分間混ぜればよいか、スムーズに混ぜるためにどのサイズの容器を使用するか、プレス機の圧力をどれくらいにするかといった生産ラインに関する細部のことを決めています。

生産途中で機械が止まる、適切な量の有効成分が含まれていないといったトラブルにも対応し、安定した生産を心がける

製造方法は、実験を重ねながら検討します。1回の実験でなるべく多くのデータをとり、2回以上は実験を繰り返して、半年くらいで製造方法を決めるのが一般的です。作業者が替わっても同じ品質の薬が作れるか、作業ミスが起きやすい部分はないかなどを考えることがポイントです。


薬の製造工場は、ゴミや虫などの異物が入らないように厳重に管理されています。空調設備は、1マイクロメートル(ミクロン、1000分の1ミリ)以下の微粒子でも除去できるフィルターを通して、キレイな空気が入るように設定。服装は、クリーンウエア、手袋、ゴーグル、マスクを着けて体のすべてを覆い、皮膚が出ないように徹底しています。


このように、薬の生産に妥協はありません。安心・安全な薬を、社会に安定して届ける「3つの安」が使命です。


薬は、研究→開発→生産という道をたどるまでに10年以上を費やします。その最後の「生産」工程に関わる生産技術者は、大きな責任感を持って人々の健康と命を支えているのです。

どうしたら薬の生産技術者になれるの?


製薬企業に就職します。薬学や化学的な知識だけでなく、新設備や生産ラインの設計にも携わることがあるため、機械・電気など工学系の専門性も生かすことができます。

協力/住友ファーマ株式会社

取材・文/内藤綾子