絵本が好きで関わりたい。職業にするためにはどうすればいいですか?

2022.05.30 おしごとBOOK

しごとについての質問

「絵本が好きで関わりたいです。職業にするためにはどうすればいいですか?」(17歳・女子)

児玉ひろ美(こだま ひろみ)さん

公立図書館司書とJPIC*読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本 選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)等があり、雑誌やWEB等でも連載中。

*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団

絵本の仕事を志すには、まず絵本と子どもの関係を知ることが必要です


『えほんのせかい こどものせかい』

著者:松岡享子

出版社:文春文庫

価格:748円(税込)

「絵本に関わりたい」と思われるからには、きっとすてきな絵本体験をお持ちなのですね。本と子どもに関わる職業にある者として、うれしく拝見しました。近年の絵本はその対象者を赤ちゃんから大人にまで広げています。それに伴い、絵本に関わる職業も多岐にわたり増えつつあります。それでもやはり、絵本の基礎は子どもにあると私は考えます。


絵本の仕事を志すには、まず絵本と子どもの関係を知ることが必要です。さまざまな人に幼い頃の絵本体験について伺うと、ほとんどが「幸せな記憶」と感じていることに気づきます。絵本は「読んでもらう」ものであり、体験には必ず読んでくれる大人が介在します。決して一人では成立しない記憶だからこそ「幸せな記憶」として印象付けられているのでしょう。


『えほんのせかい こどものせかい』は、子どもに絵本を与える(読む)大人=保護者にむけて書かれた「子どもを本の世界に招きいれるため」には、大人はどんなことをするべきなのかが書かれたものです。子どもに本を読むことの大切さ、子どもに本を選ぶポイントなどが、語り掛けるような優しい文章でつづられ、後半はお薦めの絵本34冊が紹介されています。


原著(日本エディタースクール)の出版は1987年。以来現在の本(文春文庫)まで、35年近いロングセラーに絵本の仕事を探す芯となるものが見つかることでしょう。

絵本の可能性を深く考えるきっかけになるような本があります


『はじまりは、まっしろな紙 日系アメリカ人絵本作家 ギョウ・フジカワがえがいた願い』

著者:キョウ・マクレア

訳:八木恭子

絵:ジュリー・モースタッド

出版社:フレーベル館

価格:1650円(税込)

実は、絵本は社会につながる扉でもあるのです。こんなふうに言われたら、首をかしげてしまうかもしれませんね。子どもにとって絵本を読むことは、その世界を体験するに等しいことと言われています。そんな絵本だからこそ、仕事として関わるためにはご自分が絵本を介して何ができる(何を伝えたい)のかを考えてみましょう。


肌の色で人を区別する法律があった1960年代初めのアメリカ。日系人絵本作家ギョウ・フジカワは「世界じゅうのあかちゃんをかきましょう。あらゆる国ぐにのあかちゃんを。町のなかでも絵本のなかでも、はだの色で人をわけてはいけません。そんなルールなくさなくては」と、肌の色の違う赤ちゃんたちを、初めて一緒に絵本のなかに登場させました。その背景には日系人であるギョウのつらい体験があったことは、想像に難くありません。


ギョウの描く絵本では、ページのあらゆるところに世界中の子どもたちがいて、楽しいこと、うれしいこと、つらいこと、悲しいこと、すべてを皆で分け合い「世界がもっとひろびろとしたすばらしい場所」になるのを今でも願っているのです。そして、彼女の絵本を読んだ子どもたちもまた、同じ気持ちになって、平和で平等な世界への扉を開くことでしょう。絵本にはそんな力があるのです。


絵本に関心を寄せ、職業として関わりたいと願うあなたにとって、ギョウの仕事を知ることは、絵本の可能性を深く考えるきっかけになることでしょう。巻末には写真入りの「ギョウ・フジカワの一生」も掲載されています。