粘土で車の実物大モデルを作っているあのひと、何してる?

2021.11.30 あのひと何してる?

クレイモデラー

クレイモデルとは、車のデザインを決めるためにクレイ(粘土)で作る立体模型のこと。これを作っているのがクレイモデラーだ。車のデザインはデジタル画像で簡単に作れそうだけど、実は複雑な工程があり、クレイモデラーの存在が欠かせないんだ。写真は、スクレイパーという工具で粘土を成形しているところだよ。数㎜削るだけで、車の表情がガラリと変わるんだって。(写真提供/マツダ株式会社)

車のデザインスケッチを、粘土で本物そっくりの立体モデルに


デザイナーが描いた車のデザインスケッチを見ながら、粘土を使い、本物そっくりの立体モデルを作るのがクレイモデラーの仕事です。


まずはモデルの骨格に粘土を盛り付けて大まかな形を作り、工具を使って粘土を削ったり、盛ったりしてスケッチの形になるように造形。さまざまな形や厚みの鉄板などで粘土の表面を整え、外観を完成させます。内装には革や木などの素材にそっくりなフィルムを貼り、インテリアも含めて本物の車に見える立体モデルにします。

クレイモデルの上から貼り付けるフィルム。車のボディーのカラーや質感などを再現できる

立体モデルを用いて、デザインの基本的な考え方に沿っているかをデザイナーと確認。ときには、デザイナーの望む形が、立体にすると成立しない場合もあります。クレイモデラーの立場から別の造形を提案しながら、いかにイメージに合う形に近づけるかがこの仕事の難しさです。デザイナーと白熱した議論を交わしながら、修正したい部分は粘土を盛り直して、最後の0.1mmを形として残すか削り取るかを真剣に考え、「これしかない」という理想的な形に仕上げていきます。


デザインが決まったら、モデルを測定し、デジタルモデラー(コンピューターを使い、デジタルデータを作成する人)が車のすみずみまで正確に作りこみ、デジタル画像に置き換えて、設計者なども含めて検証します。これを繰り返して、最終的な商品としての形になるのです。


車1台につき、1/4スケールのモデルを3~5台、実物大モデルを1~2台作ります。実物大モデルは3人ほどのチームで20日ほどかかり、手間のかかる作業です。とはいえ、デジタルによる3D画像だけに頼らず立体モデルを作ることは、車づくりに不可欠な工程。直接触って心地よい形を感覚的に作り出すことができ、デザイン性や操作性など、さまざまな要素を検討する目安になるからです。

他のクレイモデラーやデザイナーなどと、チームでつくりあげる。コミュニケーション力は欠かせない

日本だけでなく、世界中でクレイモデラーの携わった車が走っています。ドライバーが楽しそうに運転している風景を見かける瞬間、心から仕事が誇らしく思えます。

どうしたらクレイモデラーになれるの?


デザイン科のある高校、専門学校や美術大学などでデザインの基礎を学びます。卒業後、自動車企業の採用試験を受けるのが一般的です。

協力/マツダ株式会社

取材・文/内藤綾子