しごとについての質問
「売り手市場とか買い手市場とか、僕が就職する頃はどうなっているか心配。どうしたら不安を吹き飛ばせる?」(15歳・男子)
中山治美(なかやま はるみ)さん
開き直り、自分の好きなことに没頭してみてはいかがでしょう
『遠い空の向こうに』
監督:ジョー・ジョンストン
出演:ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格:Blu-ray: 2075円(税込) DVD: 1572円(税込)
『音楽』
監督:岩井澤健治
声:坂本慎太郎、駒井蓮、前野朋哉、芹澤興人
デジタル配信中/Blu-ray&DVD発売中
発売・販売元:ポニーキャニオン
©大橋裕之 ロックンロール・マウンテン Tip Top
売り手市場とか買い手市場とかいう以前に、コロナ禍になって、今を乗り越えるのが精いっぱいという人たちばかり。大人があたふたしている姿を見ると、子どもたちもいっそう将来が不安になっちゃいますよね。でも生きていると、本人の意思にかかわらずどうしようもできない壁にぶち当たることがあります。災害だったり、今回のようなパンデミックがその代表です。
ここはひとつ‟足掻(あが)いたって仕方ないのだ”と良い意味で開き直り、自分の好きなことに没頭してみてはいかがでしょう? そこでご紹介するのがアメリカ映画『遠い空の向こうに』。ロケット作りへの情熱が高じて、のちにNASA(アメリカ航空宇宙局)の技術者になったホーマー・H・ヒッカムの自叙伝を元にした青春ドラマです。
時は1957年。アメリカの片田舎に暮らす高校生ホーマーは、旧ソ連の人工衛星打ち上げに触発され、ロケット作りに熱中し、いつしか宇宙開発事業に携わる夢を抱きます。しかし彼が住むのは炭鉱町で、この町の子どもは将来炭鉱で働くのが当たり前。ホーマーの両親も町の人も、彼の夢を鼻で笑います。しかし理解あるライリー先生の応援もあって、ホーマーは仲間たちとロケット開発の研究成果を携えて全米科学コンテストに出場し、大学進学、そして将来の夢を自分で切り開いていきます。そして実際にNASA勤務となるのだから、ことわざで言えば‟好きこそものの上手なれ”であり‟芸は身を助く”とも言えますね。
本作は20年以上前の映画ですが、今の状況とリンクしているように思えます。当時炭鉱は斜陽産業で、閉山もうわさされており、町の大人たちは不安な日々を過ごしていました。そんな町の人にとってホーマーの夢は、いつしか皆の希望となって町を照らすようになるのです。社会や家族が緊急事態に直面した際、自分の無力さを痛感する子どもたちも多いかと思います。実際、邪険に扱う大人もいるでしょう。でも、皆さんも社会の大切な一員なのだということを知っていてほしいなと思います。
もう一つ、好きなことをコツコツと続けていた結果、大きな実を結んだ方をご紹介します。アニメーション映画『音楽』の岩井澤健治監督です。原作は漫画家・大橋裕之の同名漫画で、思いつきでバンドを結成した不良高校生たちが、音楽の魅力に目覚めていくまでをとぼけた味わいで描いた青春物語です。原作に引かれた岩井澤監督は、4万枚を超える作画を手描きし、アルバイトをしながら約7年の歳月をかけて本作を自主制作しました。すると、どうでしょう! 公開されるや映画は大ヒット。さらに、世界4大アニメーション映画祭の一つである、カナダ・オタワ国際アニメーション映画祭でグランプリを獲得したのを皮切りに、国内外の映画祭で受賞を重ね、第24回文化庁メディア芸術祭ではエンターテインメント部門の大賞に輝いたのです。
両作から言えるのは、不況うんぬんにかかわらず、やはり専門知識や専門技術を身につけた人は強し! なのでインドでは、映画『きっと、うまくいく』でも描かれているように、世界のIT企業に優秀な人材を輩出し続けているインド工科大学への進学が非常に人気で、親も熱望するといいます。
あなたが就職するまでにはまだ時間があると思いますので、ぜひ今のうちに不況に左右されないような‟武器”を身につけてみては? なんなら就職市場に振り回されず、自分で起業しちゃってもよろしくってよ。