ダムの貯水池でボートに乗っているあのひと、何してる?

2021.03.30 あのひと何してる?

ダム管理技士(ダムかんりぎし)

自然豊かな地域にそびえ立ち、圧倒的な存在感を放つ巨大なコンクリート施設。ダムは川の上流にある、高さ15m以上の“水の貯蔵庫”だ。貯水池をボートに乗って、ダム本体や貯水池を監視しているのがダム管理技士だよ。春には桜、秋には紅葉が楽しめ、野生動物を見かけることもあるけれど、のどかな風景は、大雨が降ると一変するんだって。(写真提供/株式会社建設マネジメント四国)

ダムの設備を点検し放流量を調節して、下流地域の生活を守る


ダムには、次のような働きがあります。


・水を貯める……水道水、農業・工業用水用に水を貯めて、必要量を安定供給します。


・川の水を調節する……川の水が少ないと水質が悪くなり魚などが死ぬことも。適切に水を放流して川の良好な環境を保ちます。


・水害を防ぐ……洪水の一部をダムに貯め、放流量を減らして川から水があふれ田畑や建物に浸水する被害を防ぎます。


・電気をつくる……ダムから取水した水の力で水力発電を興します。ダムでつくる電気は、二酸化炭素を出さない環境にやさしいエネルギーです。


ダム管理技士は、ダムのゲートや機器の点検、気温の変化で実は伸び縮みしているダム本体の状態監視、貯水池周辺の巡視を行うのが仕事です。


降っている雨の量、ダムへ流れ込む水の量、下流の川の水位・流れている水の量を毎日計測。気象予報会社から送られてくる雨の降る予測を確認し、貯水池の水があふれないように水の量を調節してダムから放流しています。

ダムコントロールシステムをはじめ、多くの制御・観測機器などが設置される操作室

ダム本体の内部の通路で、 水がしみこんだ本体や土砂からの圧力(揚圧力)を計測中

近年、人気のインフラツーリズム。放流の様子やダム内の通路などを一般の人に見学してもらい、ダムの役割などを解説

大雨が降ると下流の川の水かさが急増することがあるので、住民にサイレン、スピーカー、回転灯、警報車で危険予測を知らせることもダム管理技士の仕事です。震度4以上の地震が発生したときは、休日や夜間でもただちにダムへ集合し、 ダム本体や監視制御する装置・設備が壊れていないかを点検します。


休日でも、気象情報で雷雨の予報がないかなどを必ず確認しています。夜の睡眠中、外で強い雨の音がすると目覚めてしまうことも。急な呼び出しにも対応できるように、携帯電話はつねに離しません。集中豪雨などがあっても大きな水害を出さずに乗り切ったときは、何よりもほっとします。慎重できめ細かいダム管理技士の働きは、私たちの“いつもの日常”を支えているのです。

どうしたらダム管理技士になれるの?


ダム管理技士の資格を取得します。受験資格は、大学・短期大学・高等専門学校の土木工学課程を修めて卒業後、2年以上の実務経験者など。

協力/株式会社建設マネジメント四国

取材・文/内藤綾子