しごとについての質問
「テストが苦手。公務員になるために試験は避けられないの?」(15歳・男子)
児玉ひろ美(こだま ひろみ)さん
*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団
試験は“その仕事に向いている人を見つけるためのもの”
『キリン解剖記』
著者:郡司芽久
出版社:ナツメ社
価格:1200円(税別)
あなたがイメージしている公務員とは、市役所や区役所の窓口で働く人? それとも警察官や消防士、自衛官? それとも特定の分野で働く専門職?
そう、ひとくくりに公務員といっても実はその職種は多種多様です。皆さんの身近な公立学校の先生も公務員ですし、国会議員も、裁判官も公務員です。でも、先生は大学で資格を取得したのち教員採用試験、国会議員は選挙、裁判官は司法試験、技術系や専門職にはその分野の試験というように公務員になるには様々なルートがあります。では、なぜ公務員試験ってあるのでしょう? それは、こんなふうに考えてみたらいかがでしょう。試験はその仕事に就きたい人を落とすためのものではなく、“その仕事に向いている人を見つけるためにある”。
『キリン解剖記』の作者、郡司さんは幼い頃からのキリンへの愛着を一途に貫き、解剖学者になった理系女子。キリンの解剖を日本で一番数多くしていると明言しています。でも、冬のさなかに動物園で死に、運び込まれたキリンの死体を相手に解剖刀とメスを手に格闘する作業は過酷です。それでも夢中になって取り組んでいる努力はやがて大発見へ……。とはいえ、決して平たんではない特殊な仕事で、前例もありませんでした。道なき道にレールを敷いた郡司さんの体験記には、科学や動物に興味のある人だけではなく、将来を考えている学生からも感想が寄せられているとのこと。
公務の仕事にも、民間企業では決してやらない、前例のない仕事がたくさんあります。道なき道にレールを敷くための基礎知識が必要なのです。その知力があるかどうかの測定が、まさに公務員試験なのかもしれませんね。
世の中には、いろんな人がいるから
『アベコベさん』
著者:フランセスカ・サイモン
訳:青山 南
絵:ケレン・ラドロー
出版社:文化出版局
価格:1400円(税別)
『アベコベさん』の家では、いつも起きるのは真夜中。キッチンで目覚めてパジャマに着替え、2階のベッドルームで夕ご飯。「フォークでものを食べるのはよしなさい」。テレビは家族そろって逆立ちで。なんでも逆さまなのです。
ある日、お隣のプラムさんが外出する姿を見て、息子のブッスは聞きます。「プラムさんはどうして、外に出かけるのにパジャマを着ないの?」。おかあさんは「しーっ。いろんなひとがいるのよ」といいました。本当に世の中には、常識はずれのいろんな人がいます。ね、公務員試験がある理由、なんとなくわかってきたでしょう?