引き出しに道具をズラリと並べているあのひと、何してる?

2020.10.29 あのひと何してる?

時計の修理技能士(とけいのしゅうりぎのうし)

腕時計や置き時計は時間を管理するだけでなく、ファッションやインテリアとして社会生活をサポートしてくれる欠かせないアイテムだ。そんな時計が正確に時を刻むよう補修するのが修理技能士だよ。腕時計の中身は、顕微鏡が必要なほど極小の世界。チリやほこりが時計に付かないよう、写真のように防塵服(ぼうじんふく)に身を包み、作業するんだって。(写真提供/セイコーウオッチ株式会社)

約300個の極小部品が並ぶ“精密機械”。100分の1mm単位で調整


時計は、ゼンマイや歯車など、さまざまな極小部品でできている繊細な“精密機械”です。電池で動く“クオーツ式”と、ゼンマイの力で動く“機械式”と大きく分けて2つの種類があり、一般的な機械式腕時計には、200~300個程度の部品が使用されています。修理技能士は、機械時計の構造やメカニズムだけでなく、時計の歴史やデザインなどにも精通し、幅広い知識と技術を持った時計のスペシャリストです。

清潔が徹底されたスタジオ。部品を落としてなくしたりすることがないように細心の注意を払う

動かない、遅れる、ベルトが切れた、傷がついたといったトラブルで、修理技能士の元には日々、修理依頼が舞い込みます。まずは、汚れや部品の傷み具合などを観察し、時刻を合わせるためのりゅうずを回したり、ボタンを押したりしながら故障原因を推測し、ピンセットや精密ドライバーで分解。作業は、100分の1mm、100分の1mg単位のミクロな世界。直径0.7mmといった極小部品は市販のピンセットではつかめないため、先端を自身で加工・調整した数種類のピンセットを使用します。


機械式腕時計の場合、分解した部品を洗浄し、傷んだ部品は交換します。あとは、13種類の潤滑油を使い分けて、再び決まった場所へひとつひとつ部品を戻します。組み立て終わったら、精度を調整して修理が完了です。一連の作業を平均して2時間程度で行いますが、複雑な構造の時計になればなるほど作業時間は長くなり、中には6時間以上の時間を要する時計もあります。

修理品に、皮脂や汚れがつかないように指サックを着用。手指はケガをしないように注意している

スマートフォンで時間管理ができる昨今でも、一生ものの高価な腕時計の人気は高まっていて、長く大切に使いたい、子どもや孫へ受け継ぎたいなど、時計には使う人それぞれの思いがこもっています。修理することは、時計に詰まった思いを守ることでもあるのです。

どうしたら時計の修理技能士になれるの?


時計店やメーカーに入社してから技能を身につける人と、時計修理の専門学校を卒業してから入社する人がいます。国家資格「時計修理技能士1~3級」があり、必要年数の実務経験があれば受験資格が得られるため、入社後に資格を取得することも珍しくありません。

協力/セイコーウオッチ株式会社

取材・文/内藤綾子