誰かのための仕事、自分の好きな仕事、どちらも仕事なの?

2020.07.28 おしごとBOOK

しごとについての質問

「誰かのためになる仕事と、自分が好きだからやる仕事があると思う。それはどちらも仕事なの?」(12歳・女子)

清水克衛(しみずかつよし)さん

書店「読書のすすめ」代表、逆のものさし講主宰、NPO法人読書普及協会顧問。1995年に東京都江戸川区篠崎町で書店「読書のすすめ」を開業。著書に、『非常識な読書のすすめ』(現代書林)、『逆のものさし思考』(エイチエス)など多数。

自分が好きで始めた仕事がうまくいかなかった主人公


『ヤッさん2 神楽坂のマリエ』

著者:原 宏一

出版社:双葉社

価格:文庫657円(税別)

まずは考えてみよう。「自分」とは本当に存在しているのだろうか?「自分が好きだからやる仕事」の「自分」とはなんだろう? あなたがもしオオカミに育てられたら、間違いなくオオカミ少女になっている。あなたがもしアメリカに生まれていたら、今ごろ英語をしゃべっている。あなたがもし無人島にいるとしたら、あなたの名前はいらなくなる。このようにいろいろと考えていくと「自分」という漢字は存在するけど、本当の自分なんてないんじゃないだろうか。


この小説『ヤッさんⅡ 神楽坂のマリエ』の主人公は22歳にして、カフェを開店させたがんばり屋のマリエちゃん。そのお店は「おしゃれで居心地がいい空間で、あたしもお客さんもリラックスしておいしいご飯が楽しめるカフェ」を目指してオープンするけど、あっという間につぶれてしまいました。自分が好きで始めた仕事なのに、どうしてうまくいかなかったのでしょう? しかし、あることに気付いてマリエちゃんは復活します。さて「あること」とは何でしょう。それは読んでのお楽しみ♪

自分にとって都合のいいことも悪いことも起こるのが仕事


『「福」に憑かれた男』

著者:喜多川 泰

出版社:総合法令出版

価格:1300円(税別)

『「福」に憑かれた男』の主人公は、突然他界した父親に代わり、実家の本屋さんを継いだがんばり屋の秀三さん。店を大きくすることを夢見てはりきっていたのに、訪れたのはピンチに次ぐピンチ。しかし、彼には「福の神」が取り憑いていたのです。


福の神が人間に取り憑くには、3つの条件がありました。それは、1.人知れずいいことを繰り返すことができる人。2.他人の成功を心から応援、祝福することができる人。3.すべての人を愛することができる人。秀三さんはこの3つの条件を満たしていたので、福の神に取り憑かれていたのですが、なぜか次々に起こるピンチ。実はそのピンチは福の神の仕業だったのです。でもなぜ、いいことを起こす福の神が、取り憑いた人間にピンチを与えるのでしょう? それは読んでのお楽しみですが、そもそも「いいこと」と「悪いこと」の違いとはなんでしょうか。それは、「自分」の都合のいいことと悪いこととに分けているだけのことなのです。さて? 自分とは何だろうか?