しごとについての質問
「デザイナーってカッコよさそう。どんなことをしているの?」(16歳・男子)
中山治美(なかやまはるみ)さん
総合芸術である映画にも、多数のデザイナーが携わっています
『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』
監督:ローナ・タッカー
出演:ヴィヴィアン・ウエストウッド、アンドレアス・クロンターラー
発売元 ・販売元:株式会社KADOKAWA
価格:DVD 4700円(税別)
『ブレードランナー ファイナル・カット』
監督:リドリー・スコット
出演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング
販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
価格:日本語吹替音声追加収録版Blu-ray(3枚組) 5990円(税別)、DVD 1429円(税別)
TM & ©2017 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.
“デザイナー”と付く職種はたくさんあります。恐らく、質問者はファッション・デザイナーを思い浮かべているのかな? と思い、まずはこの方を紹介します。79歳にして現役バリバリの英国のファッションデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドです。2018年には彼女の半生を描いたドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』が制作されました。
今もアヴァンギャルドなファッションに身を包み、ロンドンの街をさっそうと自転車で駆け巡れば、環境問題や人権保護問題の活動家としても活躍中。“年相応”なんて言葉を軽く無視し、アグレッシブに生きる姿は、文句なしにカッコイイ〜!
彼女は単に洋服をデザインしていただけではありません。洋服を使って、時代を変えたのです。それは、今も私たちの身近にあるパンク・ファッションです。
1970年代、当時彼女が経営していた店に出入りしていた若者たちで結成されたバンド「セックス・ピストルズ」は社会への怒りや鬱憤(うっぷん)を歌にしました。彼らがまとっていたのはヴィヴィアンがデザインした、鋲(びょう)を打った革ジャンに、わざと生地を引き裂いたTシャツやジーンズ。さらにチェーンや安全ピンをアクセサリーに使い、髪は逆立てたツンツンヘアーなど……。従来のファッションをぶち壊して、ルックスそのもので堅苦しい世の中への抵抗を表現したのです。これが音楽の力もあって世界的なムーブメントとなりました。
当時の服は、芸術とデザイン分野に特化した英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に収蔵されているほどです。劇中で彼女は語ります。「私の作る服には多くの意味がある。いつも自己表現と深く結びついているの」と。まさにアーティストですね。
もう一人、米国のシド・ミード(1933-2019)を紹介します。彼は自動車などのデザインを手がける工業デザイナーだったのですが、その才能が見込まれてSF映画の金字塔と称されるリドリー・スコット監督『ブレードランナー』の空飛ぶ車から未来都市まで創り上げて注目を浴びました。
このような映画全体の美術を統括する人をプロダクション・デザイナーと称します。彼の場合は、仕事内容が従来の映画界がとらえる美術の範疇(はんちゅう)から大きくはみ出していたため、作品によって職名がバラバラなのはご愛嬌(あいきょう)。しかしその後制作されたSF映画に大きな影響を与え、彼自身も『M:i:III』(ミッション:インポッシブル:3)の変身マスクから、日本のアニメ『∀ガンダム』(ターンエーガンダム)のモビルスーツのデザインまで手がけていて、今の世界にないものを映画の中で作り上げたことから、自身はビジュアル・フューチャリスト、もしくは“フューチャリスト・デザイナー”と名乗っていました。
ところで映画はエンディングロールまで鑑賞しますか? 映画はよく総合芸術と言われ、プロダクション・デザイナー以外にもサウンド・デザインに衣装デザインなど、「デザイン」や「デザイナー」と記された人が多数参加していることが分かります。そこから気になる職名があったら調べてみると、意外な発見があるかもしれませんよ。