しごとについての質問
「自分の遊ぶ時間も欲しい。仕事が早く終わる働き方ってありますか?」 (13歳・男子)
児玉ひろ美(こだまひろみ)さん
*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団
働くことの「やりがい」も一緒に考えていきましょう
『古くてあたらしい仕事』
著者:島田潤一郎
出版社:新潮社
価格:1800円(税別)
現在の日本には、正社員・契約社員・派遣社員・アルバイトやパートなど、様々な形態の働き方があり、それぞれに仕事の役割や、報酬などに違いがあります。これらを考えたうえで、13歳の君に伝えたいのは、「自分の時間のみを優先させてできる仕事には、やりがいを感じにくいのではないか」ということです。仕事とは一日、あるいは生涯の多くの時間を費やしてこそモノになるのが常ですが、その域を知らずして、「やりがいがない」と感じてしまう人生は、あまりにもつらいと思いませんか?
『古くてあたらしい仕事』著者の島田潤一郎さんは、東京・吉祥寺で出版社の夏葉社を一人で経営しています。島田さんの仕事の基本はシンプルで、「嘘をつかない。裏切らない。具体的な誰かを思い、一人の誰かに手紙を書くように本を作る」。
一人ですから大手出版社のように、たくさんの本を出版して大きな利益を追求するということはせず、理想形は『アンネの日記』。「彼女のような小さな声を拾い、時代を超えて届けられることが、本の元来の役割だと思う」と述べ、「何十年先も残る」ことを意識して、装丁の美しさも大切にしています。そんな島田さんも、今は子育てを優先して労働時間を5時間にしているとのこと。
働くこと、暮らすこと、人と関わることなどを島田さんご自身の生き方をもとに、静かに飾り気なくつづった本書は、13歳の君が仕事について考える、新しいきっかけになると思います。
では、人はなぜ働くのでしょう?
『モモ』
著者:ミヒャエㇽ・エンデ
訳:大島かおり
出版社:岩波書店
価格:岩波少年文庫800円(税別)
『モモ』の主人公は、大都会のはずれにある円形劇場跡に住む不思議な女の子です。町に奇妙な灰色の男たちが紛れ込み、人間の時間を盗み始めると、人々は「良い暮らし」をもとめてせかせかと生きるようになり、人々の心も街も砂漠化し始めます。
効率化を優先する現代社会への痛烈なメッセージを持つこの不思議な物語を、今ビジネスマンや多くの大人が読み、WEB上にコメントしています。どうしてなのでしょう? その意味を考えたとき、人はなぜ働くのか、時間は誰のためにあるのかを考える、大きなヒントが見つかるのではないかと思います。