知る人ぞ知る、マイナーだけど魅力的な仕事を教えて!

2019.08.28 おしごと映画

しごとについての質問

世の中には知らない仕事がいっぱいあると思う。どうやったら知ることができますか?(16歳・女子)

<答えてくれる人>中山治美(なかやまはるみ)さん

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

実は、あなたはすでにたくさんの仕事と出会っています


『THE有頂天ホテル』
発売元:フジテレビ/東宝
販売元:東宝
価格:DVD 3800円(税別)

『人生、いろどり』
発売元・販売元:アミューズソフト
価格:DVD 3800円(税別)
©2012「人生、いろどり」製作委員会

はい、そういう時こそ映画の出番ですね。一例として高級ホテルを舞台にしたコメディー『THE有頂天ホテル』を見てみましょう。ときは年越しをホテルで過ごそうという人たちでにぎわう大みそか。ホテルでは年越しパーティーも控えておりただでさえ忙しいのに、トラブル続きでてんやわんやというストーリーです。

対応に追われているのが、主演の役所広司さんが演じるホテル全体を統括している副支配人。その副支配人にぴったり寄り添い、各部署に指示を出しているのが戸田恵子さん演じるアシスタントマネージャーです。彼らのもとで働く人たちとして、宿泊客を玄関で迎えるベルボーイに、客室の清掃などを行う客室係、その客室のシーツやタオルを管理しているリネン係。珍しいところでは、ホテルの入り口でよく見かける「歓迎・○○様御一行」などの文字を書き写す担当として筆耕(ひっこう)係が登場します。筆者も本作を見て筆耕という職種を知り、文字が美しいという特技が仕事になるのか!と明るい希望すら抱きました。

ほか、年越しパーティーを盛り上げる歌手や芸人、ダンサーもスタンバイしており、ホテルという一つの建物の中で、実に多くの職業の人たちが、お客様一人一人に心地良い時間を過ごしてもらおうと尽力していることがわかります。

一方、お客様の方も多種多様です。問題を起こして部屋にこもっている政治家、その政治家を追いかけてやってきた記者やカメラマンの姿が見えます。事情は人それぞれですが、なんの因果か職種や国籍の異なる人たちが同じ空間でひとときを過ごす。本作にはそんなホテルの魅力が詰まっています。

同様に、多くの人が集う駅や病院に目を向けても、様々な仕事の人と遭遇しそうです。そう、実はあなたはすでにたくさんの仕事と出会っています。

食卓をよーく見てください。お刺し身を食べるときに、魚の隣にちょこんと添えられている葉っぱ類や枝花がありますよね? それは料理を引き立てる“つまもの”と称されるのですが、この栽培を専門に行っている人がいます。

映画『人生、いろどり』の主人公たちがそう。過疎化や高齢化が進んでいた徳島県上勝町の女性たちが、つまものビジネスで地方活性化に成功した実話がもとになっています。同町はミカンの栽培で有名だったのですが冷害被害に遭い、財政難にあえいでいました。そんな時に“つまもの”という隙間産業に目を向け、ピンチから脱したのです。

この映画を見ると、普段は料理の彩りとしてしか感じていなかった“つまもの”一つとっても、愛情をかけて育てている人、それを徳島から大切に運んできた運転手、料理に生かした調理人など、あなたの元に届けられるまでに多くの人が携わっていることに気づくでしょう。日頃目にしている光景から、ちょっと想像を巡らせてみると……。思わぬ職業を発見するかもしれませんよ。