皇宮護衛官(こうぐうごえいかん)
写真は、皇居正門前の警備(儀仗)を交代している様子。皇居の象徴ともいえる場所なので、静かで落ち着いた雰囲気を損なわないことが重要なんだ。2人ひと組で、約1時間直立不動。あまりに完璧に動かないので、「人形だ!」と勘違いされることもあるんだって。(写真提供/皇宮警察本部)
天皇陛下や皇族を一番近くでお守りする
皇宮警察本部は、天皇陛下をはじめ、皇族の護衛および皇居、御所などの警備を専門に行う警察庁の付属機関です。ここで働いている人は、街で見かける「警察官」ではなく、「皇宮護衛官」といいます。
皇宮護衛官は865名(2017年10月取材当時)いて、仕事内容は大きく3つに分かれます。
護衛部……天皇陛下や皇族の身辺の安全確保をするため、御所に滞在時ほか、お出かけの際は直近で護衛にあたります。皇居参内時の各国の元首や大使には、側車(サイドカー)で護衛にあたることも。
警備部……皇居、赤坂御用地、京都御所などの警備を担当。皇宮警察本部は、全国の警察で唯一消防機能を備えています。皇居などの重要建築物に、万が一火災が発生したときの消火活動に加え、火災の予防活動も行っています。
警務部門……採用、人事管理、福利厚生、予算など、組織の活動をサポート。音楽隊があり、園遊会を始めとする皇室行事で演奏するなど、皇宮警察の広報的な役割も担っています。
皇宮護衛官の特徴として、儀式の際には、厳粛な雰囲気の中で特別な制服を着用したり、馬に乗ることもあります。
1989年、新宿御苑で営まれた昭和天皇の「大喪の礼」では、古装束の皇宮護衛官51名が、棺を納めた葱華輦(そうかれん)を担いで参道を厳かに進みました。
信任状捧呈式の際は、騎馬隊を編成し大使の護衛にあたることもあります。皇宮警察本部には、14頭の馬がいるそうです。
皇宮護衛官は、どうやって採用されるの? 採用されたら何をする?
「大卒程度」「高卒程度」「武道有段者」といった3種の皇宮護衛官採用試験があり、それぞれ年1回実施。採用後、皇宮警察学校に入校して教養や職場実習研修を行います。
教養では、柔剣道、逮捕術など仕事に必要な実技のほか、和歌や茶道、華道も習います。強さだけでなく、日本文化や皇室の歴史など幅広い知識を通じて、豊かな感性を育むことも必要です。