南極観測隊の野外観測支援担当隊員
南極は、地球上で人の手が加わっていない唯一の大陸だ。日本やイギリスなど30カ国以上の観測基地があり、日本も「昭和基地」を中心に活動を行っている。派遣される南極観測隊は、さまざまな分野のエキスパートが集められている。写真は、その中の野外観測支援担当隊員が、他の隊員に海氷行動の注意・安全について講習をしている1枚だ。(写真提供/国立極地研究所)
氷の下は冷たく深い海。野外活動の安全をサポート
南極観測隊は、オーロラの観測、ペンギンやアザラシなどの生態調査のほか、気象、大気、雪や氷、地震、地磁気、岩石、海洋など、多くの観測や研究を行っています。
現在(2018年)、第59次南極地域観測隊(越冬隊)32名(うち女性1名)は、以下のような人で構成されています。
・隊長
・観測系隊員:気象庁職員、研究者、技術者
・設営系隊員:機械・設備、通信、調理、医療、環境保全、衛星受信、LAN・インテルサット、建築・土木、野外観測支援担当、庶務
足元は一面氷に覆われており、昭和基地のある東オングル島と南極大陸の間は水深600mの凍った海。氷が割れて海に落ちれば助かりません。そこで、専用器具で氷の厚さやクラックの有無を調べ、GPSやコンパスで場所を記録し、測定地点に旗ざおを立て、「ルートマップ」を作成します。観測隊員が野外に出かける際は、みんなの先頭に立ってルートをたどって移動します。
南極には、ブリザード(雪嵐)、極低温、海氷の割れ目(クラック)、氷河の割れ目(クレバス)など、たくさんの危険が潜んでいます。野外観測支援担当隊員は、野外での観測や設営の作業をする際に、隊員の安全を守りつつ目的の作業を達成するためのサポートをすることが仕事です。
他の隊員に対して、野外でのリスクを避けるために知識や技術の講習・訓練を行い、事故に備えて救助技術を伝えるなど、安全教育をすることも大切な仕事です。
南極には、長くて14カ月滞在します。外の世界と隔絶した環境で、限られた人たちと過ごしているとストレスがかかることも。ひとりの時間を持ったり、バーでお酒を飲みながら隊員と語り合ったりして、リラックスすることを心がけているそうです。
どうしたら野外観測支援担当隊員になれるの?
募集は毎年行われています。本格的な登山経験(国内の厳冬期、海外の高峰など)並びに救助、登山装備の知識が十分にあり、現在も登山ガイドの業務に従事するなど、野外での行動に精通していること、安全教育・講習ができることなどが条件です。