元気のない木に寄り添うあのひと、何してる?

2019.08.28 あのひと何してる?

樹木医

人の病気を診る医師がいるように、樹木にもお医者さんがいることを知っているかな? 東日本大震災では、海水による塩害によって枯れたり倒れそうだったりした樹木を治療・再生させる姿が注目されたんだ。写真は、岐阜県恵那市のさざなみ公園の管理者に、桜の生育状況と管理方法について説明をしている1枚だ。(写真提供/公益財団法人 日本花の会)

樹木の病気を治療し、健康診断や土壌調査も


樹木医は、樹木が健康に育っているか診断し、異常があれば治療をします。山林、雑木林、公園の樹木や街路樹、天然記念物に指定された樹木、神社のご神木、学校や個人宅の樹木など、さまざまな樹木が対象です。

樹木が弱っていく原因は、環境の変化や病害虫、枝の切り過ぎや根を切るといった管理の不手際など、ひとつではありません。そのため、樹木そのものに対する知識の他に、樹木につく微生物や昆虫、鳥類に関する生物・生態学、気象学、土壌学、肥料学、農薬化学などについての知識が不可欠です。原因を見つけ出すために地道な調査を進め、治療して元気になるまで数年かかることもあります。

診察では、枝先の伸び具合、葉の大きさや色、幹の太さ、根元の張りなどを観察。幹の中が腐って穴が空いていないか、レントゲンのような機械でチェックすることもあります。治療が必要であれば、剪定した枝の切り口を消毒したり、薬を塗ったりするほか、腐った幹は、腐った部分を丁寧に取り除いて土を詰めるなどして、新しい根を出させたり、土を入れ替えて栄養を与えたりといった方法をとることもあります。

治療だけではありません。樹木の健康診断、剪定時期の決定、土壌の栄養状態などを確認する環境調査、倒れそうな危険な樹木の伐採など、保護育成や管理も重要な仕事です。

樹齢2000年の国指定天然記念物である山高神代ザクラの場合、枝葉が枯れて幹はかなりの部分が腐り瀕死の重症でした。4年間かけて、根元の土を、微生物と養分をたくさん含んだ230トンもの土に入れ替えると、10年以上たってからようやく安定し、今では枝が力強く伸びて満開の花を咲かせているそうです。

どうしたら樹木医になれるの?


樹木の調査、診断、治療、保護などの実務経験が7年以上必要。その後、研修を受けて認定試験に合格すると樹木医になれます。または、大学などの樹木医補資格養成機関を卒業し、「樹木医補」の資格を取得して1年間実務を経験することが必要。

協力/公益財団法人 日本花の会
取材・文/内藤綾子