「おしごと年鑑」にも掲載している、リユース事業を展開するエコリングが、東京都にある武蔵野市立関前南小学校で出張授業を行いました。体育館に集まった2クラスの児童たちに、モノをリユースすることが社会にどんな効果をもたらすのかを伝えるとともに、鑑定士という仕事の面白さにも迫る内容に、子どもたちは大いに盛り上がりました。
- 実践校
- 東京都武蔵野市立関前南小学校
- 学年
- 小学5年生(2022年度)全2クラス計66人
- 授業
- 総合的な学習の時間(キャリア教育として)
- 時間
- 1コマ(2023年2月9日)
- 使った教材
- 『おしごと年鑑2022』
- ゲスト講師
- 株式会社エコリング
3つのRの意味と違い
冒頭、講師を務めるエコリング鑑定士の月村竜也さんは自己紹介の後、「リユース」の言葉の意味を問うクイズを出した。中央のスクリーンには、A. ゴミ自体の発生を減らすこと(ゴミ減量)、B. くりかえし使うこと(再使用)、C. 資源としてよみがえらせること(再生利用)の3択が並んだ。学校で「3R」について学んでいた児童たちだが、正解のBに挙手したのは半数あまり。改めて、混同しがちな言葉の意味を確認した。
誰かに使ってもらうために売る
一般的にリユースには、「壊れたものを修理して使う」「サイズが小さくなった服をゆずる」などがあるが、「それ以外に、誰かに使ってもらうために売るという方法があるんです」と月村さん。不用になったモノを買い取り、必要とする人に届けるエコリングについて、「リユースのかけ橋」を行っているのだとわかりやすく説明した。
2問目のクイズでは、スクリーンに「おもちゃ」と「ポケモンカード」の写真が映された。「どっちが高いと思う?」の質問に、ほとんどの児童がポケモンカードに挙手。理由について、当てられた男子が現在のポケモンカードの人気ぶりと写真のカードの希少性を指摘すると、月村さんも「補足説明がいらないくらい、詳しいですね!」と拍手。それぞれの買い取り額を示し、「モノの相場は時期によっても変わる」と、価格には需要と供給のバランスが関係しているという話にも触れた。
買い取られたモノは遠く海外まで
高価な宝飾品やブランド物などがリユースの中心と思われがちだが、エコリングでは子どもに身近なおもちゃ・ぬいぐるみ・文房具・洋服・靴など、幅広い種類で買い取りを行っている。月村さんは「捨ててしまう前に『これってリユースできないかな?』と考えることが大事」と念押しし、気になる買い取られたモノの行方についても教えてくれた。
エコリングが買い取ったモノは国内で再び売られるほか、「世界で次に必要としている人にもお届けしているんです」と画面に写真が映された。「タイの山岳地域での活動ですが、ここには鉛筆を持っていない子もたくさんいます。こういうところで寄付もさせていただいています」と伝えると、児童らは熱心にメモに書き込んだ。
リユースを広げると、どんないいことがあるか。製品の使用年数が延びることで、ごみを減らせる。加えて、製品の廃棄や新品製造にかかる CO2 の削減にもなる。「つまり、リユースは環境問題の解決につながっているんです」と月村さん。SDGsアイコン12番の「つくる責任 つかう責任」に深く関係していると話し、リユース活動が国連の持続可能な開発目標の達成にもつながっていることを説いた。
鑑定士に求められる能力は?
リユースの話のあとは、鑑定士という仕事についてだ。定価がない不用品の買い取りには、査定で幅広い品目の知識と観察眼が必要になる。「そこで登場するのが、僕のような鑑定士です」と月村さん。ここでAとBの2つのダイヤモンドについて、どちらが高価か問うクイズが出されたが、児童らは答えの金額の差に驚いた。Aは9000円、Bは423万円だったのだ。
月村さんは鑑定士必携の道具であるルーペを取り出すと、使い方を解説。「本物のダイヤを見たいと思う人!」と声をかけると、「ハイッ!」とあちこちから勢いよく手があがった。児童全員にルーペが配られると、長机に設けられた、ネックレスや指輪などさまざまなジュエリーが置かれた鑑定コーナーに児童らが群がった。
鑑定コーナーにはエコリングの鑑定士さんたちが立ち、「利き手で人さし指と親指でルーペを持って、ほっぺに固定して」「宝石のほうをもっと近くに」などアドバイス。指輪の石に焦点が合った子が「見えた! ヤバい!」と歓声を上げると、「これ、実はニセモノです。こっちが本物!」と、違いを解説。「なんか、裏に英語の字が見える」とつぶやけば、「それはシルバーって意味なんだよ」など、にぎやかな掛け合いが繰り広げられた。
みんながプラスになるために
質疑応答では、「全国にエコリングは何店舗あるか」(約200店舗)、「鑑定士は資格が必要か」(エコリング鑑定士は国家資格ではなく、入社してから勉強する)、「オンラインやネットでの活動は?」(専用の箱に詰めて送る宅配買い取りやオンライン査定もある)など、さまざまな質問が出た。買い取り価格についての質問に「最近、買い取りしたなかで高かったダイヤは1200万円くらいです」と月村さんが答えると、どよめきが広がった。
授業の終わりに、月村さんが仕事の楽しさを語ってくれた。
「不動産や美術品の鑑定士と違って、エコリング鑑定士はみんなの生活に一番身近な鑑定士。買い取りを通していろんな人と出会えるのが魅力です。そして、誰かが不用になったモノに値段をつけることで、売る人にもお金が入り、買う人も安く買うことができ、リユースを通して地球にもいいことができる。みんながウィン、ウィン、ウィンでプラスになる。とても、やりがいが実感できる仕事です」
そして、最後にこう締めくくった。「お家の人にも何かを捨てる前に『これってリユースできないかな?』と聞いてみてください。こうした声かけや心がまえでみんなができることを続けていくことが、地球のためになるんです」
出張授業後の
先生からのコメント
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実際にルーペで鑑定士さんのお仕事が体験でき、子どもたちも興奮していました。家に帰ってもいただいたルーペでいろいろなものを見てもらいたいです。リユースについてはこれまでも学んできましたが、自分たちの行動がSDGsにつながっているということを企業の活動を通して知ることができ、より実感できたようです。これからの行動変容にまでつながってくれればと思います。(5年2組担任:渡邊佳祐先生)
ゲスト講師から
月村竜也さん
株式会社エコリング エキスパートバイヤー
やりとりの中で子どもたちが純粋な気持ちで聞いてくれているのが伝わりました。リユースは身近な生活の中にあるので、その具体的な方法を知ることで、自分ごととして実践してほしいと願っています。SDGsについて質問しても、きちんと答えられる今の子どもたちはすごいですね。将来が楽しみです。リユース活動だけでなく、鑑定という仕事を身近に感じ、将来リユースに関わる仕事に興味をもってもらえたら、なおうれしいですね。