茨城県大洗町の小・中学校で実践中の「おしごと年鑑」を活用したキャリア教育授業。大洗町立南中学校の生徒たちは2022年12月21日、「おしごと年鑑」掲載の企業3社のオンラインでの出張授業を受けました。「職場体験」がコロナ禍で見送らざるを得なくなり、その代わりに開かれたオンラインでの「働く人の話を聞く会」。生徒たちは3社のうち2つの授業を選んで受講します。そのうちの1つ、モスフードサービスの授業の様子をお伝えします。
- 実践校
- 茨城県大洗町立南中学校
- 学年
- 中学2年生(2022年度)1クラス計32人
- 授業
- 総合的な学習の時間(キャリア教育として)
- 時間
- 2コマ(2022年12月21日)
- 使った教材
- 『おしごと年鑑2022』
- ゲスト講師
- 株式会社モスフードサービス
フランチャイズの仕組みを知る
開会式の挨拶のあと、モスフードサービスのブースに集まった生徒は11人。オンラインでつないだモニターに講師を務めるモスフードサービス会長・社長室 社会共創(SDGs)グループの飯田知子さんが登場し、授業が始まった。最初に、飯田さんから「みなさん、モスバーガーに行ったことある人いますか?」と質問があると、勢いよく生徒全員が手を挙げた。
飯田さんはまず、会社について2022年が創立50周年であることや海外展開もしていることなど全体像を紹介。そのなかで「フランチャイズチェーンって聞いたことありますか?」と、飲食店やコンビニ、塾などでも展開される店舗の経営形態について触れた。本部が加盟店に対してマークの使用を許可し、店舗運営のノウハウを提供する代わりに、加盟店は本部に使用料を払うといった仕組みを説明していくと、生徒たちは手元のワークシートに全国の店舗数が1260店であることや、約400人のオーナーがいることなど、具体的な数字もメモしていた。
社名に込められた意味
話の中で、生徒たちが「へえ~」とうなずきながら聞いていたのが、「MOS(モス)」の名前の由来だ。「Mountain 山のように気高く堂々と Ocean海のように深く広い心で Sun 太陽のように燃え尽きることのない情熱をもって」という、創業者・櫻田 慧氏が人間・自然への限りない愛情と、このような理想の人間集団でありたいという願いを込めたものだと飯田さんが語ると、スライドの文字を追って書き写していた。
画面が切り替わり、モスの商品がパッと映ると、「おおー」「うまそ~」と教室につぶやきがもれる。今ではあちこちで見られるライスバーガーやテリヤキバーガーも、チェーン店で初めて開発したのはモスだという。そして、商品のポイントである、熱いモノを熱い状態で食べられるよう注文を受けてから商品を作る「アフターオーダー形式」に触れた後、飯田さんは、「これは創業以来のこだわりですが、作り置きをしないから、作りすぎて捨ててしまうような食品ロスが出ることも少ないんです」と、今の時代にあった方法でもあることを伝えた。
商品に日本の食文化や社会課題を取り入れる
生徒たちも味わったことがあるテリヤキバーガーやモスチキン。そのソースには味噌や醬油を使われていたり、サクサク食感の衣には米粉が使われていたりする。アメリカ生まれのハンバーガーに50年前から日本の食文化を取り入れて商品開発をしていたことにも生徒たちは驚いていた。
なかでも、社会的な学びになったのが、「モスバーガーのあゆみと社会の出来事はリンクしている」として説明された事例だった。モスライスバーガーの発売は1987年。ちょうど、日本では食の多様化で米余りが深刻化していた時期だ。この社会課題に何かできないかと開発されたこの商品は、農林水産大臣賞を受賞した。また、国産肉を100%使った「とびきりハンバーグ」シリーズが始まったのは2008年。日本の食料自給率が低迷し、先進国の中で最低となり問題化していた時期でもある。世の中に何かできないかということを、商品開発を通して実現していたのだ。
会社という組織について
会社の組織についての話もあった。飯田さんは「学校の生徒会や委員会と一緒かな。みなさんも学校の中をよくするため委員会活動などをしている。会社をよくするために各部署がそれぞれの役割を果たしているんです」として、生徒たちが興味ある「商品開発」の部署を取り上げた。商品を作るだけでなく、全国すべての店で同じ品質でお客様に提供できるよう、食材の調達の確認が必要だったり、作り方の手順書を確立したり、作りやすく提供しやすいように手順を改善していったりと、その範囲は多岐に渡ることを説明した。
お客さんとしてでなく、仕事場として見る
最後に、質疑応答の時間が設けられた。「朝モスがあると知ったけど、朝モスだからこそのポイントは?」「接客をする上で大切にしていることは?」「1つのバーガーを作るのに何人くらいの人が関わっている?」「1日にどのくらい売れる?」「海外の店のバーガーと日本のバーガーの違いは?」など、たくさんの質問が挙がった。
1つひとつに答えていくなかで、「モスバーガーで働いていてやりがいは?」の問いに飯田さんは、「やはり、お客様から『おいしかったよ、ありがとう』と言ってもらえるのは、嬉しいし、やりがいにつながりますね」と仕事の醍醐味を語り、授業を締めくくった。
授業後、生徒たちに感想を聞いた。「身近なお店だったけど、よく食べるバーガーができた背景とか商品開発の流れなどを聞いて知らないことがいっぱいありました。客としてでなく会社という目で見れて、面白かったです」「ソースが多い理由が、欧米人に比べて日本人は唾液の量が少ないから食べやすいようにと聞いて、びっくりしました。商品開発も、実際にはすごくたくさんの人が関わっていることがわかって、驚くことが多かったです!」などと答えてくれた。
「身近な店」とはいえ、大洗町にモスバーガーの店舗はなく、一番近いお店でも車で30分近くかかるという。「休日に家族で出かけた帰りに、寄ったりするんです。また次に行くのが楽しみになりました」
出張授業後の先生のコメント
海東美ゆき 教諭
オンラインで企業の方にお話を聞くのは、本校でも初めての試みでした。子どもたちがどう感じるか様子を見ていると、想像していた以上に手応えがあり、終わった直後は「すっごい楽しかった!」との声を聞きました。3社にご協力いただいたことで、普段は意識していなかったような職業に触れて興味を持ち、何より小さな町だからこそ、グローバルな世界に開くきっかけになったことが良かったです。
ゲスト講師から
飯田 知子さん
株式会社モスフードサービス
会長・社長室 社会共創(SDGs)グループ
モスバーガーの商品開発に興味を持っていただき、ありがとうございました。商品開発は魅力的なお仕事ですが、商品がお客さまのお手元に届くまでには「おいしい商品をお届けしたい」という思いを共有した、たくさんの働く人が関わっていることを知っていただけたのなら嬉しいです。今回のことが将来を考えるきっかけになることを期待しています。