実践! 「おしごと年鑑」授業リポート 第8回

【大洗町×おしごと年鑑②】食品ロスをなくそう 大洗町立第一中2年生の大作戦

茨城県大洗町立第一中学校
  • 社会
  • キャリア教育
  • 出張授業
2023.02.03 授業リポート

茨城県大洗町の小・中学校で実践中の「おしごと年鑑」を活用したキャリア授業。大洗町立第一中学校で2022年12月、まだ食べられるのに食べ物を捨てる「食品ロス」問題の授業がありました。ゲスト講師として、食品ロス対策を「おしごと年鑑」で紹介しているセブン-イレブン・ジャパンの社員がリモートで登場。生徒たちは、企業の取り組みを知り、自分たちが何をできるか、考えを深めました。

画面越しに生徒たちに話すセブン-イレブン・ジャパンの大湯真二郎さんの画像
画面越しに生徒たちに話すセブン-イレブン・ジャパンの大湯真二郎さん(左)
実践校
茨城県大洗町立第一中学校
学年
中学2年生(2022年度)全2クラス計80人
授業
社会科
時間
1コマ(2022年12月9日)
使った教材
食品ロスについてのワークシート(事前学習)、ふせんと模造紙(KJ法)
ゲスト講師
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
はじめに

KJ法で食品ロス対策を分類・整理

授業は校内の「丘のホール」(多目的ホール)で1クラスずつ行われた。ゲスト講師の登場前に、「KJ法」という、書き出したアイデアを分類・整理して問題解決を探る方法を通して、食品ロスを減らすための解決策を考えた。

班ごとに机の上に模造紙が広げられた。縦軸の両端に「自分・家庭」「学級」、横軸の両端に「コンビニ・飲食店・スーパー」「発展途上国・先進国」という4つの視点が記されている。生徒たちは事前学習のワークシートで、食品ロスの原因や何ができるかなどの考えを深めており、この日は対策を書き込んだふせんを持ってきて、各視点のそばに貼っていった。「コンビニ・飲食店・スーパー」のそばには、「賞味期限が近い商品を手のとりやすい手前側に並べる」「在庫を正しく管理する」、「自分・家庭」のそばには「ニンジンの上の部分などを捨てずに使う」などと書かれたふせんが並んだ。

相談しながらふせんを貼っていく生徒たちの画像
相談しながらふせんを貼っていく生徒たち
國谷真弓教諭が、事前学習用に作ったオリジナルのワークシートの画像
國谷真弓教諭が、事前学習用に作ったオリジナルのワークシート
展開1

SDGsを「自分事」に

セブン-イレブン・ジャパン サステナビリティ推進室の大湯真二郎さんがリモートで登場。画面でスライド資料を共有しながら、セブン-イレブンにまつわるクイズで生徒たちと盛り上がった後、食品ロスの話へ。大湯さんはまず、「2030年までに世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減させることをめざす」SDGs(国連が提唱する持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」について説明した。その上で、セブン-イレブン・ジャパンが所属するセブン&アイグループ全体における環境への取り組みも紹介。

国内の食品ロスの総量は年間522万トンで、内訳は「お店が54%、おうちが46%」(2019年度、総務省食料需給表)。「ほぼ半分は家庭から出ていることは覚えておいてほしい」と大湯さん。一人あたりに換算した食品ロスは1年で約41キロ、1日に換算するとご飯1杯分を廃棄していることになる、と生徒たちが自分事としてとらえられるように伝えた。

大湯さんが示したスライド資料の画像
大湯さんが示したスライド資料では、食品ロスの環境への影響についても紹介した(右)
展開2

「シャキシャキレタス」も食品ロス対策

セブン-イレブンの食品ロスを減らすための取り組みの紹介が始まった。生徒たちにもなじみのある商品「シャキシャキレタスサンド」の画像が画面に映し出された。大湯さんは、加工から販売までの流れを説明した上で、「シャキシャキの秘密は、温度管理です」と話し、「原材料を新鮮なまま輸送・加工することを『コールドチェーン』と呼びます。おいしさをそのまま届けられると同時に、長い間商品を売れるということで、食品ロス削減にもつながっています」と説明した。

このほか、消費期限の近い商品に5%分のnanacoポイントを付与する「エシカルプロジェクト」を全国で実施▽サラダなどの容器のふたをシール状に改良するなど、食品の保存に適した環境を作り出す技術により、新鮮さが長持ちするように工夫▽すぐに食べる予定で食品を購入する客に手前にある商品から選んで購入してもらう「てまえどり」を促進――などの取り組みも紹介。そして、大湯さんはこう語りかけた。「おうちでは残さず食べましょう。お店ではぜひ、てまえどりにご協力ください」

「シャキシャキレタスサンド」を例にしたコールドチェーンによる食品ロス対策についてのスライドと質疑応答で画面越しに大湯さんに質問する生徒の画像
「シャキシャキレタスサンド」を例にしたコールドチェーンによる食品ロス対策についてのスライド(左)、質疑応答で画面越しに大湯さんに質問する生徒。「売れ残った商品はどうするんですか?」などの質問があった
展開3

自分でできることから始めよう

授業後、生徒たちは授業を振り返り、感想を書いた。一部を紹介する。

・SDGsが身近に感じられた。僕たちの知らないところで貢献しているセブン-イレブンは「すごい」と思った。これからは僕もSDGsの目標達成に向けて自分ができることから始めてみようと思う。

・SDGsや食品ロスへの関心が高まった。セブン-イレブンへ足を運び、「てまえどり」の表示やサラダのシート、紙のトレイなどを確かめにいきたい。

・「食品ロス」という言葉は知っていたが、関心はあまりなかった。しかし、今日の講話を聞いて、自分にできることがたくさんあったので、一つひとつ心がけていきたいと思った。人間が食べる食品だけでなく、ペットフードの量なども考えていきたい。

出張授業後の先生のコメント


國谷真弓教諭
國谷真弓 教諭

今回の授業のねらいは、「食品ロスの現状を知り、未来の地球存続のために自分ができることがあることに気づき、実践していく態度を育てる」でした。今回、生徒の生活に身近なセブン-イレブン・ジャパン様の多様な取り組みを知ることで、食品ロス削減への関心が高まり、実践していこうという思いが強くなったように感じました。実際に、学年での給食での食べ残しも減っています。企業の取り組みを実際に知ったことが、食品ロス削減への実践力向上の原動力になったと感じています。(大洗港を臨む校舎から)

ゲスト講師から

大湯真二郎さん
大湯真二郎さん

株式会社セブン-イレブン・ジャパン

サステナビリティ推進室

セブン‐イレブンの食品ロス削減の取り組みについてお話させていただきました。オンラインでの出張授業となりましたが、生徒の皆さまの真剣な様子が画面越しに見て取ることができ、また、積極的にご質問をいただくなど、食品ロスに対する生徒の皆さまの関心の高さが伝わってきました。これからもお客様にご協力いただきながら、さらなる食品ロス削減に向けて取り組みを進めていきたいと考えております。

「おしごと年鑑」を使った
授業をしてみませんか?

おしごと年鑑編集部では、授業でより使いやすい教材とウェブサイトをめざし、先生方の声を募集しています。「おしごと年鑑」やウェブ版「おしごと年鑑」を使った授業リポート、使ってみたご感想、ご意見をお寄せください。許諾をいただいた上で、ウェブサイトなどでご紹介することもあります。