実践! 「おしごと年鑑」授業リポート 第2回

【古河林業の出張授業】「山の木から育てる家造り」の仕事を知る!

東京都武蔵野市立関前南小学校5年生
  • 総合学習(探究)
  • キャリア教育
  • 出張授業
2022.09.13 授業リポート

「おしごと年鑑」に紹介されている古河林業が、東京都にある武蔵野市立関前南小学校で、出張授業を行いました。体育館に集まった2クラスの児童たちに、林業・住宅業の仕事を通じて古河林業が社会でどんな役割を果たしているのかを語り、児童たちからは仕事現場の話や働きがいについてなど、熱心な質問が飛び交いました。

ゲスト講師の藤井璃乃さん(左)と体育館で行われた出張授業の様子
ゲスト講師の藤井璃乃さん(左)と体育館で行われた出張授業の様子
実践校
東京都武蔵野市立関前南小学校
学年
小学5年生(2022年度)全2クラス計68人
授業
総合的な学習の時間(キャリア教育として)
時間
1コマ(2022年7月11日)
使った教材
「おしごと年鑑2021」「おしごと年鑑2022」(事前学習)
ゲスト講師
古河林業株式会社
はじめに

会社をわかりやすく紹介

「みなさーん、林業というお仕事、聞いたことがある人いますか?」  武蔵野市関前南小学校の体育館に集まった5年1、2組の児童68人を前に、古河林業のゲスト講師・藤井璃乃さんが冒頭に問いかけると、一斉に手が上がった。

この日は、総合的な学習としてのキャリア教育で、学校近くの住宅展示場にモデルハウスを持つ古河林業が出張授業に訪れた。「林業は山に木を植えて育てて伐採し、木材を生産する仕事です。古河林業は林業と、その木材で家を建てる住宅業の2つの仕事をしています」と、藤井さんは自社の紹介をした。

展開1

日本に昔からある林業という仕事

授業は間にクイズをはさみながら、テンポよく進む。「日本の国土のうち、森林面積はどのくらいでしょうか?」との問いには「4分の3」「3分の2」など、次々と答えが挙がった。実際には国土の約70%を占め、日本の森林面積率は世界2位であること、また秋田の杉、伊勢のヒノキ、青森のヒバ、北海道のカラマツなど建築材の産地や樹種を挙げ、「森林に恵まれた日本では、林業は昔からあるお仕事です」と説明した。

林業の現場がわかる「大黒柱ツアー」の様子を動画で見た。家を建てる家族が山を訪れ、大黒柱となる木を選んで伐採するという、自社林を持つ同社ならではのイベントだ。実際に高い木がゆっくりと倒れていく様子には、「おお~」とどよめきが上がった。

続いて、チェーンソーを使って木を彫る「チェーンソーアート」の動画を見た。チェーンソーは林業に欠かせない道具で、この動画をYouTubeにアップしているのも古河林業の社員だという。ダイナミックな機械を使って丸太から作品が生まれる過程を見たあと、藤井さんが「今日はこのクマを持ってきました!」と隠していた覆いを取って木彫りのクマが現れると、「うわ!」「でっかい!」と歓声が上がった。


大黒柱ツアーの様子(左)とチェーンソーアート作品のクマ
大黒柱ツアーの様子(左)とチェーンソーアート作品のクマ
展開2

林業がもたらす「森林再生サイクル」とは

授業の中盤、林業の大切さが語られた。木を切ることは一見、環境破壊にも思える。しかし実際は、樹齢60年を超えた木は二酸化炭素を吸収しなくなるため、切って木材として活用し、新たに植林したほうが地球環境のためになるのだ。事前に『おしごと年鑑2021』の記事でこの「森林再生サイクル」を学んでいた児童たちに、藤井さんが突っ込んだ質問をした。「では、山の手入れをしないと、どうなるでしょう?」

木の枝打ちや間伐をしないと、森の日当たりは悪くなり、植物が生えない。すると土壌に栄養分が蓄えられず、虫や動物も生息できなくなり、生物の多様性は失われる。木の根は細く絡まり、十分に張り巡らせることができず、大雨の時には土砂災害や洪水の原因にもなってしまうのだ。藤井さんの言葉にも熱が入る。「外国からの輸入木材を使う住宅メーカーも多いですが、古河林業は100%国産材です。きちんと手入れをした山で育てた木を使うことは、地球環境のためにも役立つのです」


スクリーンに「森林管理の大切さ(森林再生サイクル)」の図解を示す
スクリーンに「森林管理の大切さ(森林再生サイクル)」の図解を示す
展開3

木造住宅が主な日本の住宅業

後半は住宅業の話に移った。同社の建築物で使うのは、一般的な3.5寸よりも一回り大きな4寸サイズの柱だ。体育館に持ち込んだスギやヒノキなどの柱のサンプルや、建築現場や施工例の写真を見せながら、約30坪の家には100本以上の木が使われていること、骨組みの構造は1日で組みあがることなどを説明すると、子どもたちは熱心に手元のワークシートにメモを書き込んでいた。

家を造るには、山で木材を生産する人、製材所で木材を加工する人、住宅展示場でお客さんに営業をする人、設計士、建築現場で組み立てる大工さんや現場監督など、多くの人がかかわっている。同じ会社内でも職種の異なるスペシャリストがそれぞれやりがいを持って働いていることを語り、「古河林業のお仕事」についての話は終わった。


それぞれメモを取り、書き込むシートがいっぱいになる子も
それぞれメモを取り、書き込むシートがいっぱいになる子も
展開4

児童からの質問と木材に触れる体験

質疑応答の時間には、多くの児童から手が上がった。「仕事では何県に行くことが多いですか?」「家を建てるのにいくらかかりますか?」といった質問のほかに、働くことの意味について問うものも多かった。

Q「この会社に入った理由は?」

A「山が好きで、国産材を元気に盛り上げていきたいから」

Q「やりがいを感じることは?」

A「お客様に『ありがとう』と言ってもらえること」

Q「これまでで一番大変だったことは?」

A「なかなか(家の販売)契約が取れなかったことですね(笑)」

率直なやりとりのなか、仕事で誇れることについて問われると、藤井さんは「仕事を通して地球環境を改善できること」と即答し、会社のモットーについては「森林再生サイクルです」と締めくくった。

授業後、休み時間に児童たちはスギやヒノキなどの柱のサンプルを持ち上げたり、ヒバの木材チップの香りを嗅いだりして木に親しんだ。鉋でヒノキ材を削る体験は人気で、行列もできた。両手でしっかりと鉋を持ち、腰を落として引く難しい作業だが、薄い「鉋くず」ができると、うれしそうに手に取って友達と見せ合った。木に親しみ、林業や家造りへの理解を深めた体験となった。


柱の重さを確かめたり、鉋で柱を削って木の香りを嗅いだりして木材に親しんだ
柱の重さを確かめたり、鉋で柱を削って木の香りを嗅いだりして木材に親しんだ

出張授業後の
先生からのコメント

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    出張授業前に『おしごと年鑑2021』や企業ホームページを見て学習しましたが、実際に講師の方にお話を聞き、木に触れる体験を通して、文字だけのイメージだった「林業と建築業」が頭の中で具体的につながったようです。授業後は振り返りとして、自分の将来に生かせそうな気づきや学びを新聞風にまとめ、教室に掲示しました。「仕事をしていく上では、モットーや大切にしたいことを見つけないといけない」といったコメントが複数あり、仕事の内容だけでなく、働くことへの理解が深まった様子がうかがえました。(5年2組担任:渡邊佳祐先生)

ゲスト講師から


古河林業の藤井璃乃さん
藤井璃乃さん

古河林業株式会社 住宅事業本部 営業 係長

大学で環境学を学び、国産材をキーワードに社会貢献したいと就職。登山が趣味。森林浴を広め、山林所有者や地域住民にも有益となる活動を導く森林浴ファシリテーターの資格も持つ。今回の授業を終え、「子どもたちがすごく真剣に聞いていて、質問が多くて驚きました。『木が60年くらいで二酸化炭素を吸収しなくなるのはなぜ?』といった理解を深める質問もあり、印象深かったです。将来の職業選択というだけでなく、国産材の消費を考えるとか、環境に良い商品を選択するなどの未来につながってくれれば。子どもたちに山を好きになってもらい、もっと自然やその環境を学ぶ機会を持ってくれればうれしいです」と話す。

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