クジラの仲間は89種類います。水中で生活しているクジラの様子を音から調べる方法について、日本鯨類研究所に教えてもらったよ。
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クジラの出すさまざまな音から、種類や行動がわかるよ!
海の中では、音は光よりも速く、遠くまで届きます。深くなるほど視界が悪くなる海中では、音は情報を得たり伝えたりするための重要な手段になります。
海の中で暮らすクジラも、いろいろな音を出しています。その音を調べることで、クジラについていろいろなことがわかってきます。
ヒゲクジラの出す音からわかることの例
昼間、複数でエサを食べる時に出す音
夜間にエサを食べる時に出す音
エサを食べてない、一人ぽっちの時に出す音。仲間を呼んでいるのかな?
クジラはいろいろな音を出しているんだよ!
イルカの出す音からわかること
ハクジラの仲間のイルカは、さまざまな音を使い分けて、仲間とコミュニケーションをとったり、方向や物の位置などの情報を得たりしています。
ホイッスル
口笛のような音で、仲間とコミュニケーションをとる時に使う。
バーストパルス
濁(にご)った音で、相手をおどしたりする時に使う。
クリック
断続的に続くきしむような音で、エサや物の位置などを確認する時に使う。
クジラの音はこんなことにも使われている
クジラは、種類によって出す音が違います。また、音の種類によって、その役割も違うようです。
音でエサや方向を知る ハクジラの「エコーロケーション」
▲イルカやマッコウクジラなどが出したクリックが、エサなどの対象物にあたると、はね返ってきた音(振動)がクジラの下あごを通って脳へ伝わる。
ハクジラの仲間は、鼻の奥からクリックという超音波を出します。そして、はね返ってくる音を聞き、岩などの障害物、魚やイカといったエサの位置や形を知ります。クリックは、ハクジラの仲間だけが使います。ほかのクジラと違い、魚を1匹ずつ捕まえて食べるので、ピンポイントでエサの魚を探す力が備わったようです。
大きな声で求愛する ザトウクジラのラブソング
▲海の中で、大きな声を出して鳴くザトウクジラ。
ザトウクジラのオスは、繁殖(はんしょく)期になるとメスをひきつけるため、大きな声で同じ音を繰り返す独特のフレーズで鳴きます。まるで歌を奏でるようなこの鳴き声は「ソング」と呼ばれています。このラブソングには流行があって、年々少しずつ変化。日本近くの太平洋では、流行は東の海のクジラから西の海のクジラへと伝わっているそうです。
クジラの音で海の生態系を守る
調査船から、鳴音録音ブイなどを使って海中から聞こえるクジラの鳴き声を調べると、その頻度(ひんど)からクジラのおおよその生息密度がわかります。また、鳴き声が聞こえた場所から、クジラのすんでいる場所などもわかります。これらのことを知ることは、クジラを含めた海の生態系を守ることにつながります。
▲クジラの群れを発見!
▲鳴き声を調べるための鳴音録音ブイ
▲クジラの調査船
クジラの音から、クジラの生態を調べる仕事です
一般財団法人 日本鯨類研究所 調査研究部門 資源量推定研究室
研究員 勝俣太貴さん
私たちは、ハイドロフォン(海の中で音を伝える特別なマイク)を使って、海中のクジラの鳴き声を録音して解析することで、どんな種類のクジラが、何頭いるのかを調べています。でも、すべての種類の鳴き声がわかっているわけではなく、解決すべき課題もたくさんあります。それらを一つひとつ解決していくことに研究のやりがいを感じています。
私たちが見られるクジラの行動は、彼らの生活のほんの一部でしかありません。一生を海の中で過ごすクジラは、私たちが知らない海の中で、エサを探したり、お互いにコミュニケーションを取ったりしています。鳴き声を調べることで、目に見えないそんな生態についてもっと知ることができます。みなさんも大きくなったら、一緒にクジラの鳴き声を研究してみませんか?
クジラの音からいろいろなことがわかり始めているよ。