動植物が作り出すロウを天然ロウといいます。その一種である木ロウ(もくろう)はハゼの実から作られます。192年間、木ロウやさまざまな天然ロウを作り続けているセラリカNODAにいろいろな話を聞きました。
- 天然ロウ作りの仕事
- 新しい素材を開発する仕事
- 環境にやさしい仕事
本当。和ロウソクになる木ロウをはじめ、ハゼの木は日本の伝統文化に重要な素材を生み出すんだよ!
天然ロウの原料ハゼの木はあますところなく使われる
木ロウは江戸時代から日本で改良されながら、伝統文化を支えてきました。
木ロウを生み出すハゼの木は、ロウが採れる実以外の部位も有効活用されています。この原料をあますところなく使うことが、持続可能な社会の実現に向けて大きな力となっています。
実
整髪料などの化粧品
大相撲力士の頭のまげに木ロウのびん付け油が使われ、歌舞伎の白塗りの化粧にも肌に優しい木ロウが使われています。
枝
草木染の染料
天皇陛下がお召しになる由緒ある「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」の染料になります。
幹
和弓の芯材
木材としてのしなやかさと軽さは、弓にぴったりの性質です。
天然のロウはこんなにいろいろなものに使われている
工業製品
天然循環素材である昆虫や植物のロウを利用した原料が、情報分野や自動車分野の環境製品にも広がり利用されています。
化粧品
リップスティックやクリーム、ジェルなど多様な化粧品に使われます。温まると軟らかく伸びるロウの性質を利用し、肌になじみやすくします。
食品・医薬品
天然ロウは口に入れても問題のない安全な保護材料です。表面の光沢化や、鮮度を保持するコーティング剤としてお菓子や薬に使われています。
世界No.1観光地となった大洲市での木ロウ作り
2023年、愛媛県大洲市は国際認証機関が選ぶ「世界の持続可能な観光地」(「文化・伝統保全」の部)で世界1位になりました。古民家を活用したホテルなど、古いものを現代的なセンスで活かした活動が高く評価されました。この地で日本最古のボイラーを使って木ロウ作りを行う「セラリカNODA つるかめ喜多工場」は、世界的に有名な「しまなみ海道」につながるサイクリングコースの新スポットとして登録され、訪れた観光客は工場見学や和ロウソク作りの体験などもできます。
木ロウ作り等の古民家が並ぶ
木ロウ作りで栄えた江戸時代の城下町の魅力が世界で注目されています
日本最古のボイラーで木ロウ作り
日本最古の現役のボイラーを大切にメンテナンスしながら使っています。地域名産の大洲和紙の技法で装飾した和ロウソクを開発しました
古いものを受け継ぎ、次世代につなげていく
植林でハゼの木を増やすとともに、「はぜの実スクール」を開いて若者たちに実の収穫技術を教えています。福岡県久留米市では、県指定天然記念物の「柳坂曽根の櫨並木」の保全活動にも取り組み、毎年紅葉シーズンに開かれる柳坂ハゼ祭りでは、ここで収穫した実から搾った木ロウを使ったオリジナル商品を販売し、盛り上がりに一役買っています。
上手な収穫のコツを教えてもらえ、未経験の人や学生でもすぐに始められます。紅葉が終わり、葉が落ちた頃に収穫シーズンが始まります
森林の魅力と若者の力で地域を盛り上げるのじゃ。
森の豊かさを上手に活かす地域社会作りをめざしています
株式会社セラリカNODA社長 野田泰三さん
人間は石炭や石油を使った技術や使い捨ての商品で生活を便利にしましたが、それと引き換えに自然を壊し、温暖化などの大問題が起きています。
木ロウ作りには江戸時代の「物を大事にして使い切る」というエコな智恵が息づいています。昔の人々の工夫を上手に取り入れながら、技術を改良していくことこそが持続可能な社会の土台となります。
私たちはハゼの木を育てる林業、ものづくり、観光を組み合わせ、都会とは異なる豊かさを持つ地域社会作りを目指しています。その経験を土台にして発展途上国など世界各地で、さまざまな天然ロウの仕事を通じて貧しい人々の暮らしを助け、生命あふれる森や自然環境を広げていきます。
私たちの身近な生命の宝庫である森を活かし持続させる林業こそが、豊かな地域社会作りのカギになります。