宇宙で生活できる施設ってどんなもの?

おしごと年鑑 未来を生み出す科学技術のお仕事 2024年度
鹿島建設株式会社

人類は宇宙で生活する未来に向けて動いています。国内外でビルや橋などのさまざまな建造物をつくってきた鹿島建設は、宇宙での建築について取り組み始めています。宇宙で暮らす施設について聞いてみました。

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長期滞在には、地球と同じ重力をもつ施設が必要です。

これが月の居住施設・ルナグラスだ!

鹿島建設と京都大学の共同研究による月の居住施設の構想です。最大直径約200m、高さ約400m。花瓶のような形のルナグラスは1周約20秒で回転する施設です。壁の内側が地面で、地球の重力(1G)に近い環境になります。内部には空気や水はもちろん、地球と似た生態系がつくられ、1000〜1万人が暮らせます。

月の居住施設・ルナグラス

これはSFアニメや映画の世界の話ではないのです。

鹿島建設 大野琢也さん

鹿島建設 大野琢也さん

宇宙に人が暮らす時代はすぐそこに

人類は宇宙で生活する未来に向かって動いています。現在は国際宇宙ステーションに数カ月間滞在して活動をしていますが、数十年後には月や火星に人が暮らしていることを目指し、世界各国で研究が進められています。

宇宙
  • 01=宇宙空間
  • 02=月
  • 03=火星へと、将来、宇宙で生活できる日が来るかも
  • 04=火星都市(検討中)

宇宙生活の問題点は重力

宇宙で生活する際、大きな問題となるのが重力です。宇宙空間は無重力、月や火星は低重力の世界です。人間はこうした環境に長期間滞在すると筋肉が弱くなったり、骨がもろくなったりするなど体に悪影響があります。宇宙に長期間暮らすためには地球と同じ重力の環境=人工重力施設をつくり出す必要があるのです。

遠心力で人工的に重力を作れる!

しかし月面の重力をどう増やせばいいのか? この大問題に鹿島建設の大野琢也さんは「遠心力」を利用した人工重力施設を天体上で実現する方法を考え出しました。鹿島建設では実際に宇宙に建設する「人工重力施設」を研究開発しています。

遠心力の再現

水の入ったバケツを持って回転させても遠心力が働いて水はこぼれない! この仕組みを利用して重力を再現するんだ

人工重力施設は建設環境の重力の違いで形が変化

地球の6分の1の重力しかない月では人工重力施設は花瓶のような形になります。一方、地球の重力の3分の1で月よりは重力が大きい火星の施設はワイングラスのような形に。そして無重力の宇宙空間では円筒形になります。

人工重力施設

宇宙は無重力だポン!

ガラポン

将来、君も宇宙に住むかもしれない!

宇宙の暮らしはどんなだろう?

地球を眺めながらエンタメ体験?

この人工重力施設は両端を窓にした円筒形。宇宙空間でしか実現できない建築物です。円筒の内側すべてに人が直立でき、壁や天井の概念のない「宇宙劇場」で地球を眺めながらコンサートを楽しむといった体験もできるでしょう。

宇宙劇場

月や火星でも地球と同じ暮らしが!

月や火星の人工重力施設の内部には森林や海洋などをつくり、地球の生態系をできるだけ再現します。森林の中をハイキングしたり、海でボート遊びをしたりといったこともできるでしょう。将来、月や火星には一般の人が普通に住み、月や火星で生まれ育つ人たちも登場するでしょう。

月や火星の人工重力施設の内部で地球の生態系をできるだけ再現

回転する施設間の移動は?

地球外に住む人が増えれば、いくつも人工重力施設が建てられます。回転する施設間の行き来には、施設の外側にめぐらされた軌道を乗り物で移動するアイデアが検討されています。そもそも施設は常に回転しているので、乗り降りには交通機関が必要です。

人工重力施設間の移動

未来は、多くの人が宇宙で生活しているかも?

答えてくれた人

鹿島建設株式会社 イノベーション推進室
宇宙担当 大野琢也さん

宇宙で人が暮らすことを真剣に考える時代が来ています。低重力の環境では、人間を含む哺乳類は誕生や成長がうまくいかない可能性が高いです。そこで、人工重力施設が宇宙での生活環境となるでしょう。建設業は道路、橋、トンネル、建物などをつくる仕事ですが、将来、月や火星にも活躍の場があると思っています。人類が宇宙に進出し、さらにその先、地球の外に住む人たちが増えても人類がバラバラにならないようにしたいです。

こうした施設があれば、人類は宇宙でも世代交代できます。

答えてくれた人

大野さんの宇宙への思いが聞けるCM「少年の夢」