クジラの年齢はどうやってわかるの?

おしごと年鑑 「知る」「学ぶ」「楽しむ」をかなえるお仕事 2023年度
日本鯨類研究所

海に生きるクジラの生態を知るために、年齢や栄養状態などどうやって調べるのか、日本鯨類研究所に教えてもらったよ。

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  • データサイエンティストの仕事

クジラの年齢は、クジラから採取したサンプルを分析することでわかります。

クジラの年齢は、クジラから採取したサンプルを分析することでわかります。

生きている動物の年齢は、見た目だけではなかなか判断できません。
海に生きるクジラは、人間のように誕生日を記録していませんし、聞いても答えてくれません。そこで、採取したクジラのサンプルから年齢を調べます。

ドングリーン

クジラの年齢はこうして調べるんじゃ!

クジラの年齢の調べ方 虫眼鏡

クジラの年齢は、ハクジラ類なら歯に刻まれた年輪を、ヒゲクジラ類なら耳あかにある成長層を調べます。また、目の水晶体でもわかるようになりました。

で調べる

歯で調べる

ハクジラ類の歯は、縦に切るとその断面に年輪が見えます。この年輪を数えれば年齢がわかります。

耳あかで調べる

耳あかで調べる

ヒゲクジラ類の耳の穴には、ヒトと同じように耳あかがたまっていて、縦に切った断面に年輪のような成長層が見えます。これを数えることで年齢を確認します。

目の水晶体で調べる 新技術だよ!

目の水晶体で調べる

捕獲したクジラの目玉から水晶体を取り出し、その中心部に含まれる成分を化学分析することで、クジラの年齢がわかります(下の方でくわしく解説しているよ)。

クジラの年齢が教えてくれること

クジラや魚などの生きものの年齢は、多くの情報を与えてくれます。例えば、子どもが少なく、高齢が多ければ、将来は減少することがわかります。また、1歳の生きものが何頭いるかがわかれば、それが大人になった頃どのくらい子どもが生まれ、今後どのようにその数が変化するかを予想できます。年齢調査は、クジラ資源を守る上でとても大切です。

クジラの年齢が教えてくれること

クジラの体からいろいろなことがわかる!

クジラの体から採取したサンプルを分析することで、たくさんのことがわかります。クジラを調べることで、食べ物としてのクジラを守るだけではなく、海の生態系の仕組みや環境変化を理解できます。

ドングリーン

わかることの一例を紹介するぞい!

皮脂の厚みや胴回りの長さから栄養状態がわかる!
皮脂を計測している様子(左)と皮脂部分の拡大写真(右)

皮脂を計測している様子(左)と皮脂部分の拡大写真(右)

血液から、どんな病気にかかったことがあるのかなど、
健康状態がわかる!
採血している様子

採血している様子

骨を調べることで、まだ成長するのか、
もう成長が止まったのか、クジラの成長段階がわかる!
グジラの骨
DNA(ディーエヌエー)から、クジラの種類やグループ、
生息地域などがわかる!
皮膚サンプル(左)とそこから取り出したDNAサンプル(右)

皮膚サンプル(左)とそこから取り出したDNAサンプル(右)

目の水晶体を使った、最先端の化学分析を行う仕事です

答えてくれた人

一般財団法人 日本鯨類研究所
資源生物部門環境化学チーム長 安永玄太さん

どうして目の水晶体を使うの?
どうして目の水晶体を使うの?

地球上の生物は、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸を持っています。アスパラギン酸には、L(エル)体とD(ディー)体という2つのタイプがあります。目の水晶体の中のD体は、加齢とともに増えることがわかっているので、D体の数を調べればクジラの年齢を導き出せます。この方法は正確に年齢を特定でき、最先端の化学分析法として注目されています。

どんな風に調べるの?
目の水晶体からサンプルを取り出す

1目の水晶体からサンプルを取り出す

クジラの目玉から水晶体を取り出し、それを凍らせてスパッと切り、中央にある“生まれた時に作られた部分”を取り出します。

必要な成分を取り出す

2必要な成分を取り出す

塩素を使っての素材を分解し、必要な成分を採取します。

L体とD体の比率を求める

3L体とD体の比率を求める

で採取したサンプルを、超高性能の分析計にかけて、L体とD体の比率を求めます。

情報をもとに計算する

4情報をもとに計算する

それぞれのクジラに合わせた計算式に、で求めた比率などの情報をあてはめて計算し、クジラの年齢を求めます。

種類、年齢、生息環境、さらに食べ物としてなど、クジラ研究のアプローチ方法は無限にあります。その中で私は化学的な方法で目の中の水晶体から正確な年齢を導き出す研究をしています。この分析方法は古くから研究されていましたが、大きな壁に阻まれていました。しかし、たくさんの先生方や仲間たちにアイデアとサポートをもらいながら、あきらめずに研究を続けることで問題解決への道が開けました。
私は幼い頃は、野山を駆け回ることが好きで、好奇心が旺盛でわからないことがあるとそのままにしておけないところがありました。大人になって、時に調査船に乗り、時に研究室にこもって実験する今の仕事は、私にぴったりの仕事でした。みなさんも大きくなったら、一緒にクジラの研究をしてみませんか。

あきらめずに研究を続ければ道は開けますよ!

答えてくれた人