オジャマ虫扱いされている害虫。でも虫が作り出すロウによって、実は人の生活に役立つ益虫にすることができます。天然のロウでさまざまな製品を作っているセラリカNODA(のだ)に、虫とロウについて聞いてみました。
- 天然ロウづくりの仕事
- 新しい素材を開発する仕事
- 環境にやさしい仕事
ホント。人間の暮らしに役立つものを生み出す昆虫がいるよ。
たとえば「ロウ」は身近な製品にたくさん使われているんだよ!
自分のからだを守るために生み出されるロウ
人の役に立っている昆虫はたくさんいます。カイコは絹を生み出します。ミツバチは花から花へ飛び回り蜜を集めながら花粉を運び受粉を手伝うので、イチゴのような農作物の実りに欠かせません。
昆虫が作り出すロウも大切な物質で、昆虫自身は、自らの体表を覆ったり、巣の材料にしたりします。乾燥などから身を守り、子どもを育てるためにもロウを生み出します。そのロウは昔はミイラの保存などに利用され、現代でも身近な製品にたくさん役立てられています。
ロウによるコミュニケーション
アリやハチは触角で体表のロウを触り合い、仲間とよそ者を判別します。
人もロウを生み出し
目を守っているんだ!
昆虫だけでなく、人間の目もロウが守っています。目は何故ウルウルしているのでしょうか?
それは、まぶたから分泌されるロウの膜が、目を乾燥しないよう保護しているからです。
天然のロウは、
いろいろなものに使われているよ
工業製品
天然循環素材である昆虫や植物のロウを利用した製品が、ハイテク分野や自動車分野の製品にも広がって利用されています。
化粧品
リップスティック、クリーム、ジェルなど多様な化粧品に使われます。ロウの溶けやすく固まりやすい性質を利用し、肌に馴染みやすくします。
食品・医薬品
天然ロウは口に入れても問題のない安全な保護材料です。表面の光沢化や、鮮度を保持するコーティング剤としてお菓子や薬に使われます。
ミツバチの巣は美しくて機能的
六角形が並んだ「ハニカム構造」
ミツバチの巣は円形から六角形に変形されます。
ミツバチの巣の六角形が並んだ模様は、英語でミツバチの巣を表す「ハニカム構造」と呼ばれます。ミツバチは、溶けて固まるロウの性質を上手に利用して、初めに丸く作った巣を溶かしながらハニカム構造に作り変えます。
ハニカム構造の巣は壁が薄くても頑丈なので、栄養豊富なハチミツや花粉等をたっぷりと蓄える天然食品倉庫になります。ハニカム構造は軽くて壊れにくいので、現代の先端技術であるロケットや、いつも使っているサッカーのゴールネットにも応用されています。
ロケットの壁素材もサッカーのゴールもハニカム構造なんだケモ!
虫との共存で環境を守り、貧困の改善にもつなげる
下の写真で雪のように見えるのはカイガラムシが分泌したロウ(雪ロウ)です。カイガラムシは害虫として駆除されてきましたが、セラリカNODAは「生かす発想」で、この虫を育ててロウを採ることを考えました。中国の山岳地区でカイガラムシを育てるために植林して緑を増やし、そこに暮らす農民が昆虫のロウを採集する仕事を通じて豊かになります。このSDGs(エスディージーズ)の先駆けとなるような研究に、中国政府と国際協力して取り組んできました。
石油系のロウソクは黒いすすを出しながら燃えますが、国際特許を取った世界初の雪ロウキャンドルはすすが少なく、健康にも良いので、アロマキャンドルとして使うことができます。
雪ロウって本当に雪みたいに真っ白だね!
21世紀は石油から天然物の時代へ
株式会社セラリカNODA
社長 野田泰三さん
ロウといえば、バースデーケーキの上のロウソクを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。そのロウソクは石油から作られています。また、石油から作られたプラスチックが海に流れ込み、摩耗(まもう)により細かい粒子となり、これを魚やウミガメが食べて死んだり、その魚を食べる人間の体にも入る危険性があります。石油でできたものが豊かな海の環境を大きく汚染することが世界的な問題になっています。
生命は約38億年間、地球上で進化を続け、生き抜いてきました。生命が自らを生かすために作り出した天然のロウは、独自の高い機能を発揮し、最後は分解して自然に還ります。皆さんの身近なものでも、いつものプラスチックストローがミツロウを使った紙ストローへと変わってきているように、あらゆるものが天然物で作られる時代がいよいよ始まります。
天然のロウの研究は、世界中の「環境の向上」と「貧困からの脱却」に役立つよ!