産業ガスは、産業や医療などで使われるガスのことで、社会や生活のさまざまなところを支えています。産業ガスがどのように社会や産業の発展に役立ってきたのか、大陽日酸に聞いてみました。
- 暮らしに欠かせないガスを作る仕事
- 化学に関する仕事
- 環境にやさしい仕事
産業ガスは産業の発展には欠かせない存在で、見えないところで私たちの生活を支えているんだ。
産業ガスは目に見えない存在ですが、私たちの生活に関わるあらゆる産業の発展の過程で、製造現場を支えてきました。工場で鉄を切断したり溶接したりするのに酸素を使い始めたところから、製鉄や造船などの産業で酸素が多く使われるようになりました。石油化学コンビナートが増えると、化学品を安全に生産するために窒素がたくさん必要になりました。半導体の製造が始まると、窒素やアルゴンの消費が増え、半導体の材料となるガスも産業ガスの会社で供給するようになりました。こうして、産業ガスはあらゆる産業界の製造現場で不可欠な役割を果たしています。
酸素の発見から発展したガスの歴史
1774年に酸素が発見されました。その後、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニアなど産業ガスの基盤となる数々の気体が発見されています。
▲イギリスの化学者プリーストリー(左)とフランスの化学者ラヴォアジエ(右)は「産業ガスの父」といわれています
いろいろな産業で使われている産業ガス
製鉄
製鉄所の高炉では、炉内の燃焼温度を高めるために大量の酸素が使われています。
石油化学コンビナート
化学反応を起こしにくい窒素が、パイプやタンク内に爆発防止の保安用シールガスとして使われます。
造船
造船や自動車製造などの分野では、溶接や切断の加工用に酸素やアルゴンなどが使用されます。
スマホ・タブレット
スマホやタブレット、パソコンなどで使われている半導体製品の製造には半導体材料ガスが欠かせません。
ポテトチップス
ポテトチップスの袋の中には、酸化防止剤の代わりに窒素が入っていて、おいしさを保ちます。
病院
患者さんの呼吸に必要な酸素や、腹腔鏡手術でおなかをふくらませるのに二酸化炭素が使われます。
ロケット
ロケットの推進は燃料としての液体水素と液体酸素(酸化剤)の反応をエネルギーとしています。
飛行船
観光遊覧や広告などに使われる飛行船は、空気より軽いヘリウムを使って空中に浮揚し、飛行します。
酸素や窒素などは空気から取り出して作るんだ!
空気には酸素や窒素、アルゴンなどが含まれています。この空気から空気分離装置と呼ばれるプラントで、ガスを製造します。取り込んだ空気を圧縮し、冷却・液化し蒸留します。液体が気体になるときの温度を「沸点」といいますが、ガスによって異なる沸点を利用して、酸素や窒素、アルゴンを取り出すことができます。
その他の産業ガス
炭酸ガス CO2
水素 H2
ヘリウム He
LPガス
電子材料ガス
アセチレン C2H2
産業ガスは環境の負荷を減らすことにも役立っているよ
産業ガスは地球温暖化ガスの排出を減らすなど環境負荷の低減にも活躍します。燃料電池自動車は、水素と酸素の化学反応で発生した電気で走り、二酸化炭素を排出しません。また、資源保護として注目される魚の養殖などには酸素の供給が必要です。包装内の食品が長持ちするガスの組み合わせを開発して、食品ロスの低減にも貢献します。
▲燃料電池自動車に水素を充填するための水素ステーション
▲魚の養殖は、海洋資源の保護と輸送による環境負荷を軽減できます
酸素を使った酸素富化燃焼で燃料を削減!
右のイラストでもわかるように、酸素は燃焼を助ける働きがあります。製鉄所など燃焼が必要な場所では酸素を使うことによって燃料を削減できて、二酸化炭素の排出も減らせます。
酸素は燃焼を助ける働きがあるのね。
ガスを通して暮らしや未来を支えています
大陽日酸株式会社 技術開発ユニット 山梨ソリューションセンター
ガス利用技術部 バイオ技術課 大川真由子さん
大陽日酸は産業ガスを製造し供給するだけでなく、ガスのさまざまな特性を利用した装置や技術も開発しています。
例えば医療現場や新薬研究では、超低温状態で細胞を保管し、搬送する技術が必要不可欠です。私たちは、窒素を液化すると-196℃の超低温になることを利用した、細胞を凍結するフリーザーや保存容器を開発しています。
気体を液体に変えて、その冷たさを利用するというのは面白いと思いませんか? ガスを利用することで、それまで実現できなかったことが実現できるようになることに、やりがいを感じています。このように私たちは、ガスを通してみなさんの暮らしや未来を支えています。
ガスは目に見えないけど、私たちの生活に欠かせないものです。